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  富士ピラー最深部。

 黒水晶に覆われた、薄暗い空間。

 中空に浮かぶ紅い巨大なコアが辺りを照らすその場所に、一つの人型があった。

 新型アビスを作り出し、優人たちの日常を脅かしている存在、ダアトだ。


「さすがにこの前みたいに上手くはいかないか━━」


 考えの読めない微笑を浮かべながら、その脳裏では原石である優人を、自身の目的に沿わせるための思案に耽っていた。独り言に答える者の居ない空間で、紅い光の明滅が唯一の変化だった。その光も明るく輝き続けているが、ダアトによって要塞型を作り出した以前よりも、その輝きを鈍らせている。10年もの間、力を蓄え続けていたとはいえ立て続けの侵攻と新型創造に、疲弊しているのが見て取れた。


「そうだな……また新型を作って侵攻させるのも良いけど……」


 人類側の誰かが聞いたら卒倒しそうなことを事も無げに呟きながら、コアを見上げる。


「ただなぁ、コレも随分使ってきたから新型を作ると、それ以外の戦力が落ちるか……」


 ダアトの独り言は続く。頭の中では纏まってきているのか、漏れ出る言葉は淀みない。


「いっそのこと、総力戦…………いや(・・)


 自身が呟いた言葉を否定すると、口角が上がっていく。


「イイ感じにコレも疲弊しているし、そろそろ向こうも攻め入りたい頃だろう」


 そう言ってコアに手をかざす。それに合わせて、コアは明滅を始める。要塞型を創造した時と同じような光景だが、違いはダアトがただ手をかざしているだけだという事だ。しばらくすると、巨大なコアから小さな無数のコアが分裂を始め、それと同時に周囲の黒水晶が今まで創造された様々なアビスの形を作り始めた。


「お客様をお迎えするんだ。出迎えは盛大にしないとな」


 出来上がった黒水晶の身体にコアが落とされ、次々にアビスが産まれていく。


「原石の準備は出来てるんだ。あとは、徹底的に負荷をかけてやれば、その頂へ辿り着けるはず」


 普段は落ち着いたダアトの声に、熱が籠っていく。自身の存在意義である人類の進化が、あともう少しといったところまで来ているのだ。盛り上がらないわけがない。


「ああ、いけない。10年前もそうやって失敗したんだった。最後まで落ち着いて、油断なく事を進めないと」


 沸き立つ心を落ち着け、アビスの想像を続けていく。その数は既に100を越え、なお増え続けている。ピラー本体である巨大コアの残りの力を使い創造されたアビスたちは、新たなアビスを創造し続けるダアトの周囲で、その敵意を向ける相手の登場をただ静かに待っていた。


これにて3章終了となります!

次回、最終章となります。

最後まで頑張っていきますので、お付き合いよろしくお願いします!

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