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「さて、色々と予定外のことはあったが、めでたく要塞型の撃破となったが、一度現状を整理しようか」
司令の言葉に、報告担当の者が立ち上がる。部屋に集められた面々の表情は、要塞型が撃破されたからか以前と比べてとても明るいものになっている。
「まず、侵攻していた要塞型に関しては天逆鉾により完全消滅しました。内包していた及び、周囲にいたアビスは爆発の余波で消失しているのを確認しています。端的に言えば、我々の勝利です」
その言葉に、安堵と喜びの声が部屋中から漏れ聞こえる。司令も表情を和らげたが、続く報告にそれを引き締めることになる。
「続いて、我々の現状ですが、“タケミカヅチ”は整備が進まないため依然使用できない状態です。天岩戸は展開可能ですが、迎撃システムの殆どを今回の戦闘で使用しているので、防御は出来ても反撃は出来ない状況です」
淡々と続けられた報告に、喜びに沸いていた室内の熱が冷やされ落ち着きを取り戻していく。今回は勝利をもぎ取れたが、完全勝利などとは程遠い辛勝というのが実態だ。
「装者に関しては、より状況は深刻です。学生部隊の投入によって多少は回復しましたが、正規装者の半数以上に出撃制限が掛かっている状態です。幸いなのは、学生部隊を含めて殉職者が出ていないため時間を掛ければ戦力の回復が可能であるという点です」
厳しい現状に顔をしかめる人が出てくるが、それを横目に司令が立ち上がる。
「報告ご苦労。聞いての通り、現状はとても厳しい状況にあるのは分かってもらえたと思う。しかし、これは逆に考えれば我々にとってのチャンスでもある」
その言葉に、殆どの人が怪訝そうな視線を向ける。今さっき報告されたのは、人類側の戦力が殆ど壊滅状態で生存圏を防衛するのが精一杯ということだったからだ。
「諸君が疑問に思うのは最もだが、このデータを見て欲しい」
司令が表示したのは、一つのグラフだった。時間の経過で纏められているのか、横のスケールには日付が書かれていたが、重要なのはそこではなかった。
「このグラフは富士ピラーのエネルギー量を計測したものになる。関東決戦以降高い数値を維持していたが、4月頭の侵攻を起点として徐々に数値が減少してきている」
確かに、示された時点から数値は右肩下がりに減ってきていた。
「そして、先ほど最新のエネルギー量の観測結果が出た」
新たに表示された数値は、初期の数値の半分の値を示していた。それが意味することはつまり━━
「我々が苦しい状況であるのと同時に、アビス側も苦しい状況にあると考えられる。そこで、私はここに、反抗作戦を実施することを提案する」
力強い司令の声が、唖然とする人々の間に響いた。
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