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「二三四博士!?」


 居るとは思わなかった人物の登場に、優人たちは驚きの声を上げる。そんな優人たちの姿を愉快そうに見た博士は、以前会った時よりも目の隈が濃くなり、心なしか白衣や髪の乱れが激しくなっているように感じられた。


「やあ、優人くん。麻衣くんも、そっちは朱夏くんだね」


「え、私のこと……」


「君のお父さんとはちょっとした知り合いでね。まあ、今なそんなことは置いておこう」


 そう言うと、博士はフラフラと頼りない足取りで優人の前に立つ。


「博士……?」


「優人くん、さっき君が言った事は本気かい?」


 明らかに満身創痍と言った状態なのに、優人を見つめる目の光は強いままで、むしろ偽りは許さないとギラついてさえいる。


「……はい。本気です。どうにかしてCADを調達して、木乃香を追います。それで、俺がヤツを倒します。誰かが居なくなるのは、もう沢山です」


 向けられた視線から逃げるような事をせず、真っすぐに博士の目を見ながら優人はそう返した。その言葉を咀嚼するかのように、無言の時間が流れる。只ならぬ雰囲気に、麻衣も朱夏も言葉を発せずにいた。


「……そうか、私もだよ」


 そして、博士は満足したように頷きそう言うと、手にしていた黒い物体を差し出した。


「ッ!それって……」


「ついさっき、完成したんだ。本当は他のも完成させるつもりだったんだが、存外に時間がかかってしまった。お陰でこの様だよ」


 自分の疲労ぶりを自嘲するように笑うと、博士は改めて表情を引き締める。


「前回は止める側だったが、今回はその背を押そう。親友を殺されて、黙っていられるほど私は薄情じゃないんだ。ただ、私は科学者だ……防人じゃない。今日ばかりは、そんな自分を呪ったよ」


 博士の想いを、一言も零さないように優人は耳を傾ける。


「だから、これを君に託そう。私の代わりに……いや、私の想いも一緒にヤツへぶつけてきてくれ」


 黒い物体━━新たなCADが、優人の手に渡る。


「それは、君らが使っている第二世代型CAD“吹雪”を発展させたものだ。その名を、第三世代型試作全状況対応型CAD“大和”だ」


「大和……」


「そいつには、君のデータを出来るだけ反映して調整をしている。恐らく、今までと変わりなく使うことが出来るはずだ。着けてみろ」


 博士に言われるまま、“吹雪”を外して“大和”を左手に着ける。真新しいはずのソレは、不思議と身体に馴染んだ。


「既に出撃エリアまでの監視カメラなどにはダミーを流してある。そんなに長くは保たないが、目くらましには十分だろう」


「博士……」


 悪ガキのように笑みを浮かべる博士に、苦笑で返す優人。そんな二人を、麻衣と朱夏は仕様がないものを見るような表情で見ていた。


「兄さん……ちゃんと帰ってきて下さいね」


「木乃香も一緒にね!」


「もちろん!」


 不安もあるだろうに、あくまでも明るく見送ろうとしてくれる麻衣たちに、優人は力強く頷いた。


 それからの行動は早かった。フラフラだった博士を、部屋に備え付けられたベッドに押し込むと、優人は部屋から飛び出した。木乃香の件があったため、隊員が巡回していたが博士に渡された地図通りにそれをやり過ごし、外へと出る。


「よし……いくぞ、“大和”ッ!!」


 気合を入れ、晶力をCADに流し込む。吹雪の時よりも圧倒的な翡翠の光が溢れ、全身に纏わりついていく。装甲は“吹雪”と同じく四肢のみだが、背中には八枚の翼が広がり、大型のライフル2丁が懸架されていた。腰の部分には小型化された突撃銃が2丁下げられ、横には晶力ブレードが2本吊り下げられていた。


「これは……」


 音を立てて目の前に展開されたホログラムゴーグルに、“大和”の文字が躍ったかと思うと見慣れた光景が広がる。表示される情報を見ると、優人が使っていたシステムをそのまま搭載している様だった。


「待ってろよ、木乃香。お前は俺が……絶対に連れ帰る!」


 翼がはためき、勢いよく優人を空へと運ぶ。


「こりゃ凄い!これなら、すぐにでも追いつけるぞ!」


 今までとは全然違う出力に、驚きよりも喜びが勝った。力を溜めるように滞空した優人は、勢いよく翼をはためかせると木乃香に向かって、飛び立った。


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