表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/96

-64-

「……はい。ウチ、立候補する」


「木乃香?!」


 司令の言葉に真っ先に反応したのは、木乃香だった。優人の横の座席から立ち上がり、入学式で見せた凛々しい表情でスッと手を挙げている。


「君は……白衛(しろえ)家の娘さんだったね。自分の言っている意味を理解しているのか?」


「もちろんです……そのための、護国御三家ですから」


 木乃香が、今まで見た事ないような厳しい表情で司令に答える。護国御三家、その名の通り国を守る為にその全てを捧げている三家だ。国を護るためには、その身を投げ出すのも厭わないとも噂されていたが、木乃香の言葉と表情を見るにそれは真実だったようだ。


「待ってくれ!」


 そんな木乃香の言葉に待ったを掛けたのは、同じ御三家の一員である鎬飛鳥(しのぎ あすか)だった。前に座っていた鎬は、立ち上がりながら振り返ると木乃香へ視線を向ける。


「鎬さん……まさか、反対するんですか?」


「いいや、白衛の言う事に否を唱えるつもりはない。むしろ、それでこそ御三家に連なる者、と称賛したいぐらいだ」


 木乃香と鎬の会話に、室内の装者達が圧倒される。装者として、アビスと戦う覚悟はしていたが、戦って死ぬ覚悟までしていたのは、この場には鎬と木乃香の二人だけだった。


「それでは、どうしたというのですか?」


「白衛の実力にケチをつけるつもりはないが、CADの扱いは3年である私の方が経験豊富だ」


「鎬さんの方が適任だと?」


「そうだ」


「それなら猶更、鎬さんは護国の為に生き残ってもらった方が良いかと思いますが」


「そもそも、絶対に死ぬと決まっている訳ではないだろう?」


 向かい合う二人の強い視線が交錯する。どちらも国を護る事を第一として教育されてきた身だ。こうなることは必然だった。


「二人とも、落ち着いてくれ」


 どちらも譲らない二人の間に入ったのは、壇上にいた司令だった。2人の視線を遮るように、左手が広げられている。


「こんな状況で戦意を失わない二人の存在は有難いが、少々熱くなり過ぎだ」


「……すみません」


「申し訳ありません……」


 人を統率する者特有の言葉の重さに、二人も冷静さを取り戻す。


「まず、厳しい役に立候補してくれたことに感謝する。だが、鎬のCADは辛うじて飛べる程度だと聞いている」


「そ、それは……」


「もちろん、先の出撃で奮闘してくれたからこそだという事は理解している」


「はい……」


 司令の指摘に、鎬は素直に頷く。


「でしたら!私のCADはまだ動けます」


「白衛……君の立候補を有難く思うが、自分の立場を考えてみて欲しい」


「立場、ですか?」


 勢いづいた木乃香が、司令の言葉に首を傾げる。


「そうだ。鎬にも言えることだが、君は御三家の一員であると同時に学生であるのだ。つまり、正規の装者で未だないということだ」


「……それは、つまり」


「君たちの今の状況はとても特殊であり、共に戦う戦友であると共に、本来は守るべき存在でもあるということだ。だから、君たちを選出することは認められない」


「ッ!だったら!なぜ私達にも天逆鉾(あまのさかほこ)について知らせたのですか?!」


 木乃香の言葉に、鎬も頷く。確かに、特攻役を選出しないのであれば、学生部隊をこの場に呼ぶ必要は無かったはずだ。そんな思いは他の学生もあるのか、頷く姿が多くみられる。


「……そうだな。確かに白衛の言う事は最もだ……だが、全てを説明しなかった場合、使命感に駆られた一部が暴走しない保証は?情報が与えられないことによる不信感は出ないか?こんな状況だ、情報は漏れ聞こえるものだ。正しい情報を伝えなければ、正しい行動も作戦も立てられない。そんな考えがあったから、学生諸君もこの場に集めさせてもらった」


 厳しい表情ではあるが、諭すような口調に学生達は納得の色を見せていく。司令の言うことに、思い当たることがある学生が多かったからだ。


「納得してくれたようで良かった。情報共有は以上だ。正規装者からの立候補を待っているが、あまり時間は無い。30分しても立候補がない場合は、私が指名させてもらう」


 そう言って、司令は部屋を後にした。それに続くように正規装者や学生達も部屋を出ていく。そんな中で、瞳の中の決意を変えていない人物に気付く者はいなかった。


感想、ご意見、ポイント評価頂けると嬉しいです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ