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防衛基地の一室、そこには司令を含めた基地内の隊員が集まっていた。多くの人がいるものの、口を開く者は居らず重い空気が室内に漂っていた。
「…………被害状況を報告してくれ」
そんな中で、重い口を開いたのは司令だった。その言葉に反応して、席についている一人が端末を立ち上げる。
「まず、アビスの現状ですが侵攻を停止しており、戦力や被害の回復をしていると考えられます。また、新型の大型アビスに関しては、今後“要塞型”と呼称することが決まりました」
淡々と端末に表示された情報を読む声が、室内に響く。
「次に、装者の被害に関してですが……」
言い辛そうに言葉が止まる。この部屋にいる全員が信じたくないことではあるが、これから言われる情報は認めなければならない現実だった。
「殉職1名、怪我人多数であり、出撃制限となった装者が半数を超えました。学生部隊内で先行した1名が意識不明ですが命に別状はないのが、不幸中の幸いと言えるかと……」
「何が不幸中の幸いだッ!殉職1名がそれ以上の問題じゃないか!!」
我慢ならないといった様子で、一人の女性が机を叩きながら声を荒げる。それに同調するように頷く者もいて、紅嶺崎の殉職が与えた影響が大きいものを司令は再認識した。
「……一先ず、落ち着いてくれないか?まだ報告の途中だ」
「………………申し訳ありませんでした」
激したとはいえ、対アビス防衛部隊に所属する隊員の一人である女性は、激情を飲み込むように数回深呼吸をすると、落ち着きを取り戻した声で司令に一礼すると席に座った。
「報告を続けます。先ほど仰られた通り、殉職者は紅嶺崎刀子で間違いないとの裏付けが取れました。また、“タケミカヅチ”ですが短期間で連続して使用したため、各部にメンテナンスが必要な状態であり現在使用不能となっています。天岩戸に関しても、連続運用は消耗が激しいため一時的に解除していますが、すぐに再起動可能です」
悲惨ともいえる報告に殆どの人の視線が下がるが、その中で報告をしている女性と一人の青年のみが、その瞳に希望を宿していた。
「最後になりますが、こちらは武装開発・整備部門からの報告になります。詳細は担当に説明して頂きましょうか」
その言葉に立ち上がる青年。それは、朱夏の父親の部下である副主任の青年だった。
「簡潔に述べますと、要塞型を破壊出来るかもしれない武装の開発が出来ました」
突然の青年の言葉に、視線を下げていた全員の顔が上がる。中には信じられないと、疑わしそうな表情を浮かべる者もいたが、その視線を物ともしない自信と共に、青年は端末に開発した武装の情報を表示した。
「“タケミカヅチ”の原理を参考に私達が開発した、晶気収束爆弾天逆鉾です」
表示されたそれは、対象に突き刺さる部分と晶気を収束する部分、爆弾に当たる部分の形が、遥か昔に高千穂峰山頂に突き刺さっていたと言われるものに似ていた。
「対象に直接打ち付けなければならないのが唯一の難点ですが、最低でも“タケミカヅチ”一射分のエネルギーを一瞬に凝縮して放出することが可能となっています」
そんな青年の自信に満ちた姿に、司令たちの中には頼りない微かさではあるが、希望の光が灯るのだった。
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