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優人たちが3年生に模擬戦で負けてから数日、個別の適性教導だけでなく模擬戦で関わり合うことが増えた学生部隊員は、その交流を深めていた。模擬戦が終わると、決まって教官を含めたフィードバックを対戦相手同士で行うため、3年生は勿論、優人たちも急激に実力をつけていた。そんなある日だった。
『訓練終了……優人様、嬉しいお知らせがあります』
「え、なに?」
学生部隊の教導が始まったことで出来る時間が少なくなったものの、続けていたエピメテウスとの訓練メニューを終えると、珍しく喜色を覗かせる声色でエピメテウスが話しかけてきた。
『本日の訓練で優人様の適性が上がりました!』
「ほんと!?」
待ちに待っていた報告に、優人は疲れを忘れて飛び上がる。そんな様子を、エピメテウスは我が子を見るような温かい気持ちで眺めていた。
「それで!なにが上がったの?」
『驚かないで下さいね?なんと…………近接と射撃が適性Cに上がりました!』
「……ッ!!」
声にならない声を上げながら、全身で喜びを爆発させる優人。すべてに適性が有ると言えば聞こえはいいが、所詮は適性Dと器用貧乏にすら届かない状態が今までだったのだ。だから、射撃と近接の二つの適性が上がったことは、優人にとって本当にうれしいものだった。
「エピメテウスのお陰だよ!本当にありがとうッ!」
『いいえ、優人様が努力をしたからです。私はそれを手助けしたにすぎません』
「そうだとしても!俺一人だったら絶対に何も出来ずに潰れてた。だから、ありがとう!」
『そう言う事でしたら、どう致しまして』
それから、VR空間でひとしきり喜びを爆発させた優人は、0時を過ぎていることをエピメテウスに指摘され、現実に戻っていくのだった。
優人が現実に戻るのを見届け一息、感じた気配に暖かかった気持ちが冷えていくのをエピメテウスは感じていた。感じた気配の通り、目の前が滲みダアトが出現する。
『……次の侵攻についてですか』
「君も察しが良くなったじゃないか。その通りだよ」
冷えた気持ちに同期するように、発せられる声も険のあるものになるが、そんなことは気にしないとばかりに微笑を崩さないままダアトは口を開く。その姿を改めて見た時、エピメテウスは違和感を覚えた。崩れることのない微笑でその胸の内を隠すいつものダアトのように見えたが、何時もよりどこか本気さを感じさせられる。
「さすがに気づくよね。そうだよ、今度は今までと違うよ」
エピメテウスの心を読んだかのようなタイミングで、ダアトが話はじめる。
「回復してきているとはいえ、今の人類の戦力は大幅に削った。都市を護る防壁も砕ける手段は出来ているし、目や耳を塞ぐ術もある。あとは原石の成長を待つだけだったんだけど、したよね?」
断定する口調に、エピメテウスは優人の適性が上昇している事を既に知られている事に戦慄した。それだけじゃない。もしかしたら、優人には伝えていないあの事も━━。
「あ、気付かれてないと思ってるかもしれないけど、あの原石がティファレントに至っているのは把握しているからね?」
その言葉に、エピメテウスは全てが知られている事に気付いた。そんな胸中を知ってか知らずか、恐らく確実に知っていながらもダアトは話を続ける。
「いやー、待った甲斐があったよ。能力が適応と地味だから気付くのが遅れたけど、僕の目指すものにとっては最高の能力さ」
SDA:適応、それはその名の通り発動者の適応力を上昇させるだけしか出来ない能力だが、紅嶺崎の加速とは一線を画す能力だ。その理由は、この能力が常時発動型であること。そして、常時発動しているということは、優人が大量に晶気を吸収したとしても他の装者のように結晶化することなく、すぐさま自身の晶力として身体に馴染ませることが出来るのだ。この能力は、ダアトが望みながらも過去に発現した者がいなかったものだった。
『あなたが目指すもの…………』
「ああ、君には言ってなかったよね。まあ、誰にも言ってなかったんだけど、この際だから共有しておこうか。僕が目指すのはね、人類をセフィロトの頂へ導き進化させることだよ」
『なッ!しかし、あなたがやっていることは!』
ダアトの言葉にエピメテウスが声を荒げる。当たり前のことだ。ダアトは口では人類を進化させると言っているが、やっているのは人類を滅ぼすようなことばかりだったからだ。
「そりゃそうだよ。障害なくして進化は有り得ない。セフィロトを昇るのは生物としての進化ではなく、存在としての進化をするということ。それはもはや、生きるか死ぬかの二択になるのは自明の理というやつだよ」
『あなたは、そこまでしてどうして?!』
「…………。とりあえず、本来の目的を済ませるよ。次の侵攻は3日後。今までのような小手調べじゃない、本気の侵攻だよ」
エピメテウスの言葉に、いつもの微笑で胸中を再び覆い隠したダアトは、一方的に言葉を伝えるとその姿を消した。
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