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「ルールは簡単だ。晶力シールドで囲われたエリアで、バディ毎に模擬戦を行う。自分の晶力シールドが破壊されたら撃墜判定だ」
簡単だろう?と言わんばかりの表情だが、要は優人たちが入学してすぐにやったVR模擬戦のリアル版という事だ。教官が手元の端末を操作すると、四方から晶力シールドが展開され、箱のようにグラウンドを包んだ。実際に戦闘を行うため、周囲に被害が出ないようにする為の装置だ。
「まず初めは、そうだな……折角だ、白衛・上坂ペアと鎬・薙原ペアにしようか。呼ばれた者は前へ!」
教官の声に進み出たのは、二人の少女だった。一人は凛とした抜き身の刀のような、もう一人は理知的で落ち着いた印象を抱かせた。
「ねえ、鎬って……」
「はい。朱夏が考えている通り刀術の大家、鎬家でしょうね」
鎬と白衛というビックネームに、周囲からざわめき声が聞こえる。ここに槍術の大家である本多家の者がいれば護国御三家が揃うのだが、生憎とそう上手い話はない。
「1年生から選抜された君たちは初めましてだね。3年の鎬飛鳥だ。よろしく」
「同じく、3年の薙原佳奈です。よろしくね」
飛鳥が凛とした雰囲気そのままに手を差し出し、優人たちと握手をする。続けて、佳奈と握手をする。
「時間も限られている。挨拶はそこまでにしてCADを展開しろ」
「はい!」
教官の言葉に、再度CADを展開する。佳奈は優人と同じ2丁の銃を展開しているが、優人の物と比べて銃身が長い造りになっていた。飛鳥はCADでは不要の筈である鞘に入った刀を展開し、抜刀せずに左手で持っている。
「優人くん、あの鎬って先輩はうちが相手するさかい。多分、援護することはややこしいと思う」
「そんなになのか!……分かった。俺だって毎日訓練をしてるからな、逆に援護するよ」
「ふふ、頼りがいのあるバディやな」
優人たちは手短に相談を済ませると、飛鳥達に向き直る。
「どちらも準備はいいな?では…………戦闘開始!」
ガキンッ!
「え……?」
教官の合図が出た瞬間、優人の隣にいた木乃香と飛鳥の姿が一瞬、消えたかと思うと火花を散らしてお互いの得物を打ち合わせていた。木乃香は先手必勝と飛び出したのだが、踏み込んで居合を放った飛鳥に迎撃された形だ。
「やっぱし、一筋縄ではいかんね!さすがの鎬や!」
「それはこっちのセリフだよ。私の居合を止められるのは3年でも片手で数えるほどなんだけどね。さすが白衛だ」
お互いに称賛の声を掛け合いながら、何合も得物を打ち合わせていく。
「上坂くん、呆けてないで私にも集中して欲しいな」
今まで相手を圧倒している姿しか見たことなかった木乃香の苦戦する姿に、優人が驚いていると声を掛けられると同時に銃撃された。
「うわッ!」
反射的に回避したが、正確な射撃を完全に躱しきれずシールドを削られる。
「貴方の相手は私だよ。ちゃんと集中してくれなきゃ、すぐに墜としますよ?」
「そ、そうでしたね。すみません」
ニッコリと笑いながら構えられた銃口に、優人はうるさく主張する鼓動を抑えながら答える。気を入れ直し両手の突撃銃を構える姿に、佳奈は満足そうな顔だ。表情は優し気だが、放たれる銃撃の狙いは容赦がなく、的確に優人の身体を捉えようとしてくる。
佳奈の持つ銃、支援突撃銃は優人の突撃銃よりも銃身が長いことで命中精度と射程が向上しているのが特徴だ。その分、連射性に劣るのが一長一短だがその特性を十全に生かせると、中距離から一方的な攻撃をすることが可能になる。丁度、今の優人のように。
「クソッ!全然反撃出来ないどころか、近づけやしない!」
「逃げてるだけだと、シールドを削り切っちゃいますよ?」
「そりゃそうだ!」
そう言うと、優人はそれまでの無茶苦茶な機動による回避から、一直線に佳奈へ突っ込む。意外そうな表情を浮かべたのは一瞬、面白いものを見るような目で佳奈は射撃を真っすぐに向かってくる優人へ集中させる。掠るのではなく、直撃するようになった事で優人のシールドは半分以上削られたが、それと引き換えに距離は稼げた。
「今度は、コッチの番ですよッ!」
突撃銃の乱射から、流れるように右手を刀に持ち替え斬りかかる。万遍なく適性を持つからこそ可能な戦法に、大抵の学生であれば驚きに初動が遅れるだろうが、それは鈍い音と共に裏切られた。
「なんだって?!」
「射撃適性でもね、近接が全く出来ない訳じゃないし、出来なくていい訳じゃないでしょ?」
振り下ろされた刀を、佳奈は交差させた長く太い銃身で受け止めていた。
「狙いは悪くなかったよ。でも、まだまだだね」
刀を弾かれ、がら空きになった身体に至近距離で放たれた銃弾は、余すことなく優人のシールドを食らいつくした。
「上坂優人、シールドロスト。撃墜判定!」
それからの展開は早かった。苦戦しながらも持ちこたえていた木乃香だったが、流石に実力者の2対1には一溜まりもなく、優人とそれ程間を開けずにしてシールドを破られた。
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