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「よし、今日の授業はこれまで」
学生部隊に配属されてから1週間、授業が終わるとすぐに荷物をまとめて送迎の為に待機しているバスへ乗り込むのが、優人たちの日課となっていた。
「もうこの光景も見慣れたね」
「そうやな。最初はあんなにびっくりしたのにね」
バス内は初日の緊張した雰囲気とは打って変わって、和やかな空気が漂っていた。共に教官からの教導を受ける仲間として、学年の垣根を越えて会話がされていた。その中で、近くに座っていた由紀と愛佳が優人たちに声を掛けた。
「優人くん達がこの部隊に選抜されたって聞いた時は驚いたな」
「そうだよね~。ほとんどが3年生の中で1年生からは4人だけだもんね」
「それを言ったら、伊波先輩たちも2年生で選ばれてるじゃないですか」
先輩たちの言葉に、朱夏がそう返す。
「まあ、愛佳はこんなんだけど麻衣ちゃんと同じ狙撃適性Bだし、私だってそれに寄りかからないよう努力してる自負はあるからね」
そう言いながら隣で眠たげな表情をしている愛佳の頭を揺すると、む~と言葉にならない声を上げながら頬を膨らませて不満を露わにしている。そんな二人の様子から、お互いの仲の良さが良く分かり、友人としてだけでなくバディとしても良好な関係を築けていることが分かった。
「それに、同じことは朱夏ちゃんや優人くんにも言えるでしょ?朱夏ちゃんは狙撃適性Bの麻衣ちゃん、優人くんは近接適性Bの木乃香ちゃんがバディだけど、二人ともそれに甘えないで努力してるから招集されたんじゃない?」
由紀の言葉に嬉しさを覚えると同時に、話せない事情も絡んでいる事に、悪い事をしている訳でじゃないのに申し訳なくなってくる。
「まあ、そうですね」
「あ、ありがとうございます」
そんな会話をしていると、防衛基地にバスが到着する。バスを降りると初日に説明された更衣室で、制服から動きやすい運動服に着替えてグラウンドに集合する。これにモタモタしていると、教官の教導が厳しくなるのは、二日目に遅れてきた先輩の惨状を見て全員が学習済みだ。
「全員揃ったな。それでは、本日の教導を開始する」
始まるのは、ウォーミングアップと称した体力強化訓練。走り込みに筋トレなど、身体を鍛えるような運動を1時間ほど行っていく。もちろん、手を抜くことなんてことをすれば教官から厳しい指導が全員に行われる為、最初から必死だ。それが終われば、今度は適性毎に分かれての教導訓練となる。教導を行うのは誰もが精鋭と呼ばれるに値する装者ばかりだ。そのため、一部を除いて全員が手も足も出ない状況だった。その一部である人物、白衛木乃香が下段から振り上げた薙刀で、刀ごと教官を弾き飛ばしているところだった。
「全員集合!」
いつもより少し早めに教導訓練が切り上げられ、集合がかかる。息を切らせながら集合した優人たちに、教官がにやりと、悪戯っぽい笑顔を見せる。
「1週間の訓練に良く着いてきた。そろそろ同じことの繰り返しに飽きてきたところだと思うので、今日から部隊員同士での模擬戦を行う」
広いグラウンドに良く通る声で、教官はそう言い放った。
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