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「うわー、優人の方は大変そうだなあ」


 教導の合間、朱夏は紅嶺崎からの教導を受ける優人を眺めていた。息も絶え絶えに扱かれているその姿を見ていると、自分があの場所にいないことに感謝すら覚えていた。


「それにしても、木乃香は凄いなぁ」


 視線を巡らせた先には、教官と対峙する木乃香の姿があった。刀を握る教官に対して、薙刀のリーチを生かした動きで互角に打ち合っている。白衛家と言えば、薙刀術の大家であるが、刀の鎬家、槍の本多家と並んで護国の家としても有名だ。事実、多くの門下生を抱えており、その中には装者になっている者も多い。


「ィエェイッッ!」


 気合の籠った声と共に、教官の刀が弾き飛ばされてきた。CADを装着して扱う事を想定されているソレは、鈍い音を立てながら地面に突き刺さっていた。


「参りました。さすが白衛の方ですね。手も足も出ませんでした」


「いいや、うちの方こそギリギリやった。これからも精進するで」


 そう言って礼をする二人に、周りからは拍手が送られる。周りにいるのは3年生ばかりだったが、その3年生から見ても素晴らしいものだったのだ。学年首席は伊達じゃないなと朱夏が思っていると、CADを収納した木乃香が真っすぐ歩いてきた。


「いやー、疲れたで。やっぱし、生身とCADやと感覚がちゃうね!」


「いや、そんな風には見えなかったんだけど?!」


「ほらあ、これでも10年近う稽古してるさかいね。そこそこは動けるで」


「あれでそこそこ……」


 横で教官と戦っている3年生が一方的な展開に陥っているのを見ると、木乃香の言葉を素直に受け取れない。むしろ、木乃香の言葉の通りだったとすると、ド素人なのにここにいる自分はどうなるんだと、朱夏は心の中で思う。


「まあ、朱夏ちゃんも焦らんといて訓練を続ければ、ほないに掛からんといて動けるようになるで。筋は悪ないんやさかい」


「ほんと?!」


「ほんまほんま」


 笑いながらそう言う木乃香。2人がそうして話している中、大きなどよめきが聞こえてきた。その源を見ると、麻衣が遠くに設置された的を狙撃している所だった。手前側に設置された的には多くの狙撃痕があるが、つい今しがた麻衣が狙撃したのはその倍以上も奥に設置された真っ新な的だった。


「ほへ~、麻衣ちゃんの狙撃はほんまに凄いな。ウチにはあんなん無理やわ」


「私は狙撃どころか射撃すら全然だからなぁ……」


「そこは麻衣ちゃんがカバーしてくれるさかい、心強いやん」


「まあ、そうなんだけどね」


 そんな風に互いの得意分野を再認識しながら、学生部隊の訓練初日は過ぎていった。


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