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「休憩終了!集合しろ!」


 教官の声に閉じていた目を開き、急いで立ち上がる。放課後に学園で正式に学生部隊配属が伝えられると、間を置かずに用意されたバスへ乗り込み、基地に到着するなり訓練開始とせわしない時間を思い返しながら優人は列に並ぶ。


「ウォーミングアップは終了だ。諸君はその実力を見込まれここにいる。つまり、我々の同僚として活動することが想定されている。そのため、急ピッチにはなるが諸君が実戦に耐えうる技術を叩き込んでいく!」


 教官の力強い声が優人たちを叩く。基地到着から40分ほど行っていた訓練がただのウォーミングアップと聞いて、表情を曇らせる人が殆どだった。


「これからはCADを使用した訓練になるため、一層気を引き締めるように!では、適性毎に分かれるように、駆け足!」


 その言葉に、それぞれの適性が書かれたボードを持つ教官の場所へ移動を開始する学生達。その中で、優人は自分がどこへ行けばいいのか決めかねていた。


「ん?君は……」


「あ、教官。すみません、自分はどこに行けばいいのか決められなくて」


「いや、いい。上原優人だな」


「はい!」


「君の事は聞いている。そして、君の教導は別の者が担当することになっている。少し遅れているようだが……ああ、いらっしゃった」


 教官の言葉に優人が振り返ると、見覚えのある紅く長い髪が目に入った。


「え、紅嶺崎さん?!」


「優人、そんなに驚くことないじゃないか……君は行っていいぞ、ご苦労だった」


「ハッ!」


 紅嶺崎の言葉に、綺麗な敬礼を返して立ち去る教官。


「さて、時間も惜しいから早速始めようか」


「ちょ、ちょっと待って下さい!何で紅嶺崎さんが……?」


「ん?私だって正規装者なんだ、何も不思議な事じゃない」


「それは、そうですけど……」


「まあ、あれだ。前にアドバイスをすると言って出来なかっただろう?その埋め合わせだと思ってくれ。自分で言うのもアレだが、私に教導をしてもらう事はなかなか出来ないことだぞ?」


「そう、ですね……」


 そう言って笑う紅嶺崎にそれだけを返す。いきなりの登場に少し混乱したままではあるが、現状を受け入れる。


「さあ、CADを展開しなさい。最初は近接からだよ」


「はい!」


 優人がCADを展開するのと同時に、紅嶺崎もCADを展開する。周囲で遠巻きにそれを見ていた学生と教官たちの中でどよめきが広がった。無理もない、紅嶺崎は装者の中でも有名な一人だ。その姿を見られるだけでなく、CADを展開した姿も見られる機会はそうあるものじゃない。


「まずは刀を振ってみようか」


「分かりました」


 紅嶺崎の言葉に、刀を展開すると素振りを始める優人。


「うん、それくらいにしようか」


 しばらく優人の素振りを真剣な表情で見ていた紅嶺崎だったが、3分も経たない内にそれを止めると、自分も優人と同じ刀を展開した。


「よし、次は好きなように打ち込んできなさい」


 そう言って刀を構える紅嶺崎。優人も相対して刀を構えるが、いざ打ち込もうとしても、どう打ち込めばいいか分からない。それに気づいたのか、あからさまな隙を作る紅嶺崎。


「セアッ!」


「いいぞ、その調子だ」


 振られた刀を防ぎながら声を掛ける。反撃することはせず、ただひたすらに優人の斬撃を紅嶺崎は自身の刀で受け止め続けた。


「よし、そこまで」


「はぁ……はぁ……ッ!」


 荒く息を吐く優人と対称的に、紅嶺崎は涼しい顔だ。


「息を整えながらでいいから聞いてくれ。まず、やはりというか予想通りではあるが、素人剣術なのは仕方ないことだ。それでも、不思議と剣術に通じる動きがあるのは二三四のお陰かな?」


 間違いなくエピメテウスの特訓のお陰だが、それを答える余裕は優人にはなかった。


「それと、これも分かっていた事だが他の学生と比べて圧倒的に経験値が足りていない」


「それは……」


「二三四のVRゴーグルもいいが、それだけではまだまだ足りない。だから━━」


 紅嶺崎の雰囲気が変わった。今まで感じなかった圧が、紅嶺崎から向けられる。ビリビリと空気を震わせるような錯覚を覚えるくらいの威圧に、優人の手が疲労によるものだけでなく震えだす。


「これからは私も攻撃していくよ。なに、ちゃんと手加減はするさ、心配いらない。ただ、ちょっとは必死にならないと怪我はするかもしれないな」


 聞き返すまでもなく、その目が本気だと告げていた。優人の背筋に嫌な汗が伝う。


「ほら、構えて。じゃないと、本当に怪我をするよ」


「ッッ!!」


 慌てて刀を構える優人。そこへ打ち込まれる紅嶺崎の刀を必死で受け止めていく。その光景を見ていた周囲の学生は、紅嶺崎の教導を受けられる優人を羨ましいと思うと同時に、絶対に自分が受ける側にはなりたくないという相反した思いを抱いたのだった。


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