-50-
第3章開始です!
改稿も進めていくので、文字数少なめになりますがよろしくお願いします!
「━━、よく聞きなさい」
夕焼けに染まる道場で、幼い少女が真剣な表情で目の前の女性の言葉を聞いている。道場には少女と女性の二人しかおらず、それぞれの傍らには獲物である薙刀が置かれていた。
「私達━━家は、代々護国の礎となってきた。それは今も同じこと」
女性の鋭い視線が、少女を貫く。その視線の圧からか、正座した膝の上に置かれた両手が微かに震えている。
「━━、貴女も大きくなればその使命を背負う事になる。だから、今はそのための力を付けなさい」
「……はい、お母様」
「よろしい。では、稽古を開始する」
その言葉を合図に、傍らの薙刀を構える二人。
「戦場に出れば、頼れるのは自らの力のみ。心せよ」
「はい!」
鋭い視線を少女に向けたままの女性であったが、その瞳には重い使命を娘にも課すことになる申し訳なさと、何としても生き残れる力を付けさせようという親心が宿っていた。
「よし……ならば、こい!」
「……ッ!」
その女性の心を、言われずとも少女は感じ取っていた。厳しい稽古の日々ではあったが、不当に扱われていた訳ではないのだ。だから、沸き上がる恐怖心を必死に宥めながら、夕日を反射する薙刀を構えた。
「はあ……はあ……」
「そこ!振り方が雑になっているぞ!」
「ッはい!すみません!」
投げかけられた叱咤の声に、大きな声で返事をすると、優人は疲労で重い身体に活を入れる。周囲には、同じように刀を振るう少女たちがいたが、優人と同じように疲労の色を浮かべていた。
ここはつい先日、見学にきた防衛基地の一角。周囲にいるのは、殆どが学園の3年生だが、木乃香や朱夏、麻衣といった何時もの顔ぶれもいる。そんな俺たちを、正規装者数名が取り囲んでいた。いじめや懲罰を受けているわけではなく、歴とした訓練であるのだが、学園で行われている者よりも数段レベルが高い。今は刀の素振りを行っているが、少しでも形が崩れると先ほどのような声が飛んでくる。恵まれた環境ではあるが、実際にやっている身からすれば、地獄と同義だった。
「よし、素振りはここまで!5分の休憩に入る!」
教官役である女性の言葉に、周囲にいた学生が崩れ落ちる。優人もその例に漏れず、大の字に両手を広げると、空を見上げながら荒い息を吐いていた。
(なんだって、俺たちは急にこんな事━━!)
この状況の発端は、今日の朝にまで遡る━━
「上坂優人、上坂麻衣、白衛木乃香、近藤朱夏、君たちは放課後に多目的室へ行くように」
基地見学が終了した次の月曜日、朝のホームルームが終わり課題を提出した為に自習時間になっていた優人たちを呼び出したのは、担任である須藤先生だった。内容を他の学生に聞かれない為か、校舎の一角にある会議室を使って告げられた内容に、優人たちは表情を強張らせていた。
「ああ、説教などではない。それは安心しろ」
そんな優人たちの表情を見た須藤先生が、不安を和らげるように言う。優人たちが危惧していたのは、基地見学の際に司令からの依頼であったとはいえ、出撃した件について何か言われるかと思ったからだった。
「あの……先生」
「なんだ?」
「内容をお聞きすることは可能ですか?」
恐る恐ると言った様子で麻衣が声を上げた。恐らく4人の胸中に共通する事だが、出撃の件以外で呼び出される覚えがないのだ。そのため、呼び出しの内容が気になるのは仕方のない事だろう。
「ふむ……」
思案するように腕を組むが、すぐに問題ないと判断したのか口を開く。
「他言無用ではあるが、最近のアビス侵攻状況を鑑みて、学生の実力者たちを集めた学生部隊の発足が決定された。そして、その部隊へ君たち4人が招集された」
そんな須藤先生の言葉に、優人たちは呆けた顔をするしかなかった。
感想、ご意見、ポイント評価頂けると嬉しいです。
よろしくお願いします。




