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「ふむふむ、今回は余計なのが付いてきたのか」
どことも知れない白い空間で、ダアトが呟く。眼前には、自らが差し向けたアビスと戦う朱夏達の姿が映し出されていた。
「まあ、今回はオマケみたいなものだからいいんだけど」
そう言って右手を振ると映像が消え、同時に白い空間に色が付いていく。いや、逆だ。白い空間の方が溶けて消えていっていた。完全に白い空間が消えると、ダアトの周囲は紅い光に照らされた黒水晶の空間になっていた。視線を上に移すと、天井に紅い球体が輝いていた。
「さて、原石達が出ざるを得ない状況に傾きつつあるけど、まだ足りないね」
呟きながら両手を紅い球体にかざす。それが合図だったのか、明滅を始める球体。それと同時に、何かを形作るようにダアトの手が動く。
「前は小手調べだったから攻性タイプじゃなかったけど、今度は正真正銘侵略用の攻性タイプだよ」
紅い光に照らし出された空間に、黒水晶が生えてくる。それは、ダアトが望んだ姿を形作っていき、最後に一際明るく光った球体から別れた小さな紅玉が、黒水晶の構造物に落ちていった。
「完成だ」
紅玉が自身のあるべき位置へとたどり着いた瞬間、構造物に命が吹き込まれた。目に当たる部分に光が宿り、感触を確かめるように全身が動き出す。
「さあ、次のアビスは今までとは一味違うよ?頼むから消滅してくれないでね、原石たち」
目の前の化け物を見つめながらそう言うダアトの口元は、いつもと変わらない微笑が浮かべられていた。
対アビス防衛部隊、防衛基地内の一室。緊急で招集された基地内の各部署の責任者たちが、自分たちを呼び出した司令が現れるのを今か今かと待っていた。
「すまない。待たせた」
扉が開く音と共に司令が部屋に入ると、定位置である一つだけ開けられた座席に座る。
「重要な案件になるため、忙しい中招集させてもらった。まずはこれを見てくれ」
そう言って司令が起動させたプロジェクターに書かれていた言葉に、室内がどよめく。
「司令!本気なんですか?!いくらこんな状況とは言え、学生を部隊に組み込むだなんて!」
その声に頷く者、同じような声を上げる者、反対に理解を示す者と、室内は一瞬にして侃々諤々の様相を呈した。
「諸君!まずは聞いてくれ」
そんな司令の声に、加熱していた空気が冷えていく。
「諸君が言いたいことは私も重々承知している。その上で、私はこの“学生部隊”について提案する」
司令が提案したのは簡単な話、学生を正規装者として部隊を作ろうという事だ。アビスの急な侵攻により装者の数が圧倒的に足りていない現状、その補充をするには候補生である学生を繰り上げて正規装者として扱うしか方法は無かった。
「もちろん、全ての学生を対象にしようとしている訳ではない。しっかりと実力を判断して部隊に組み込もうと考えている」
事実、3年生の一部は正規装者に一部比肩する技術を持っている者もいた。適性だけを見れば、1年生の一部にも該当する存在はいる。麻衣や木乃香がその例だ。
「しかし!それでも学生です。一部技術が突出していたとしても、それ以外がお粗末では対応出来ない状況になった場合、無駄死にするだけです!」
「そんな事は分かっている!あくまで学生、予備役としてだ。ただ、他の学生と違い学園だけではなく、こちらでも訓練をしてもらう」
すぐさま実戦に投入されるわけではない事に、反論の声が弱まる。
「私だって、無駄死にさせたい訳ではない」
司令のその言葉に、一応の納得を見せた室内の人々と細々とした調整を済ませると、正式に学生部隊の発足が決定された。初期招集メンバーは、事前に学園側から提供されていた資料から選出されたため3年生の名前が多かったが、例外もいた。
「あの、司令……この4人は1年生とあるんですが」
「ああ、それに関しては問題ない。実戦経験者達だ」
「え!?」
驚きの表情を張り付けるその人を前に、司令は沸き上がってくる申し訳なさを飲み込みながら、上坂優人、上坂麻衣、白衛木乃香、 近藤朱夏と書かれた文字を見ていた。
一応の2章完となります。
続けて3章に入りますが、色々と指摘を頂いているので1章・2章の改稿も進めていこうと考えています。
毎日投稿は途切れさせないように頑張っていきますので、よろしくお願いします。
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