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「まさか学生が応援に来るとはね」
防衛基地に帰還してCADを解除すると、半身を結晶化させた装者に声を掛けられた。アビスを殲滅した後は、もう一人の装者に抱えられていたため、話す機会がなかった。改めて見ると、結晶に寄生されているようで生身の部分もあるが、完全に結晶化している部分もあり痛々しい姿をしていた。
「でも、君たちが来なかったら全滅していた……対アビス防衛部隊を代表して感謝する。ありがとう」
動きづらそうにしながらも、丁寧に頭を下げる。
「え、いや!そんな……俺の方こそ、間に合わなくて……」
「君が気にすることじゃないさ。それに、まだ生きてる」
「ちょっと、皆城!どこ行ったかと思えば……怪我人なんだから大人しくしてて!」
「見つかったか……」
バツの悪そうな顔で振り返ったその先には、もう一人の装者が担架を手にした隊員を背に立っていた。
「ほら、怪我人は、さっさと医務室に行く!」
「わ、分かったよ。櫛名」
櫛名、と呼ばれた女性の剣幕に押されて担架に乗せられると、どこかへ運ばれていった。
「君は、応援部隊で来てくれた学生だね。確か……」
「上坂です」
「そう、上坂くん。さっき皆城も言っていたけど、貴方達のお陰で無事に帰ってくることが出来た。改めて、ありがとう」
皆城と呼ばれた女性と同じように頭を下げる櫛名さん。
「いえ……あの、さっき皆城さんにも言ったんですけど、間に合わなくて……」
「ああ、そのこと?皆城も気にしてないと思うけど、学生くんは納得いかないよね」
「……はい」
「正直だね」
そう言って笑う櫛名さん。ふと視線を逸らした先には、先輩達と朱夏達が楽し気に話している。
「私達の使命はね、人類を護ること。そのためには、生き残らなくちゃならない」
真っすぐ俺を見た櫛名さんの目には、強い覚悟の色が宿っていた。
「私達が負ける時はね、何も残らないの。今は技術が進んで大分居なくならなかったけど、それでもアビスと戦っている以上、結晶化のリスクは常に付きまとってる。結晶化症候群、聞いたことあるでしょう?」
「……はい、10年前に目の前で両親が居なくなりましたから」
「ッ!……そう、君のご両親も装者だったのね」
俺の言葉に、悲痛な表情をする櫛名さん。
「なら、分かるかもしれないけど、私達の敗北は居なくなること。つまり、完全結晶化することなの。だから、その前に助けてくれた君たちには本当に感謝してる」
諭すような、優しい言葉だ。その言葉に、俺の中にあった“間に合わなかった”という罪悪感が和らいでいく。
「本当にありがとう」
「……いえ、俺の方こそ、ありがとうございます」
「うん、素直でよろしい!じゃあ、私も皆城の所にいくから、君の仲間も待ってるみたいだし、行ってあげて」
振り返った先には、朱夏達が駆け寄ってくるところだった。足音がして、櫛名さんが基地へ向かっていく。その後ろ姿に深く一礼した俺は、朱夏達の下へ向かった。
その後、俺たちは司令へ報告を済ませた。もちろん、他の学生は全員帰った後だったけど、特別に普段は入れないエリアを案内してもらえたのはラッキーだった。
朱夏のお父さんも、平気そうな顔で俺たちを出迎えてくれたが、朱夏が近くに来るとその表情を崩して抱きしめていた。その姿を見て、改めてしっかりと仲直りが出来たことが分かった。
そんな諸々が終わると、俺たちはいつかの時のように対アビス防衛部隊が用意した車で帰路についた。
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