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「クソッ、応援はまだ来ないのか?本部は?!」
「それが、連絡を入れたあと急に繋がらなくなって!」
「……新型の能力か」
言葉を交わす間にも、アビスの攻撃は止むことは無い。それどころか、最初に接敵した時よりも数が増えてきているようにも思える。
「学生の避難は?」
「……あんまり進んでないわね」
スクランブル部隊にも抜擢される彼女らが、基本型のアビスを殲滅出来ていない現状は、一重に学生の存在が大きかった。学生の命を最優先に考えた場合、彼女たちの傍を離れてアビスに攻撃することは、この数相手では護り切れない可能性があったからだ。
シールドがあるとはいえ、安全圏ではないこの場所では何が起こるか分からない。現に、アビスの待ち伏せを受け押し返せない状況にあった。加えて、防ぎきれなかった攻撃や、すり抜けたアビスが学生に向かっている。今は、伊波と逢坂と名乗った二人の学生が何とか持ちこたえているが、それもいつまで続くか分かったものじゃない。
「数が、多すぎる!」
無論、私達も手をこまねいているだけではない。近寄ってきたアビスは確実に銃撃し、殲滅している。しかし、後ろに控える新型をどうにかしないことには、現状を本部に伝えることも、応援を再度要請することも出来ない。
「櫛名、少しの間だけ任せられるか?」
「突っ込むつもり?!」
「それ以外に現状を打破できないだろう?応援もいつ到着するか分からないし、学生にも無茶をさせ続けている」
「……分かった。でも、全力戦闘となると私もあまり保たないわよ?」
「心配ない。スクランブル部隊前衛の実力を見せるいい機会だ」
そう返して前を見据える。目標は、大きな図体をして後ろに控える新型2体だ。
「いくぞッ!」
突撃砲を構えて吶喊する。新型に向かう私をアビスが集中して狙うが、最速で目標に向かうために邪魔になるもの以外は無視して前進していく。二重三重と防衛線を張るようにアビスが立ちふさがるが、両手を刀に持ち替えてそれを斬り捨てた。
「今までの、お返しだぁッ!」
そうして新型の目の前に辿り着き、振り上げた刀を勢いよく打ち付ける。妨害機能に特化していたのか、大した抵抗もなく刃を通しその身体を結晶化させたかと思うと、そのまま砕け散った。
「よし、次……ッ!」
砕けた新型を横目に、もう一体へ意識を向けた瞬間だった。言い知れない感覚が意識に飛び込み、右腕に違和感を覚えた。見ると、腕から翡翠色の結晶が生えてくるところだった。
「結晶化!こんな時にッ!」
結晶が大きくなるにつれて、自分の身体なのに言う事を聞かなくなりつつある右腕に恐怖しながら、眼前に捉えていた新型から離脱する。
「皆城、その腕!」
「最悪だ。右腕が使い物にならない」
櫛名のところまで戻った時点で結晶の成長は止まったが、引き換えに右腕の感覚が一切しなくなっていた。勿論、突撃銃の引き金を引くことはおろか、刀を握っていることも出来なかった。
「新型も一体しか倒せなかった。そっちの状況は?」
「あの学生二人が優秀なお陰でまだ何とかなってるけど、そろそろ限界ね。私も、そんなに長く戦えないわよ」
「応援は?」
「影も形も見えない」
「……万事休すか」
話す間にも左腕で引き金を引くが、体内の晶力が減ってきているのか、強い疲労感を覚えるようになってきていた。
「……いざという時は、分かってるな?」
「……せめて彼女たちだけでも、でしょ?」
増え続けるアビスに対して、段々と反撃の力が弱くなっていく自分たち。いよいよ、最後の手段が脳裏にチラついてきた。最後の手段、それは“自爆”だ。CADによって体内の晶力を暴走させ、周囲の晶気と共に爆発させることで状況を打開する。もちろん、自爆した本人が無事でいられるなんてことはない。確実に死亡する最終手段“カグツチ”。
それでも、人類の防人たる自分たちが未来ある学生を護るためには、自分たちが犠牲になるこの方法しかないと考えていた。
「ッ!」
近寄ってきたアビスを倒した瞬間、右腕の結晶が成長を再開し身体を侵食し始める。いよいよ限界が近いらしい。
「皆城、いったん下がって!」
増えていく結晶を見た櫛名が、悲鳴のような声を上げる。このままアビスを倒し続ければ、皆城が完全に結晶化してしまうと分かったからだ。結晶化は徐々に進むものではない。症状が出ているのにアビスを倒し続ければ、加速度的に進行するものだ。
「下がるって言ったって、安全なところはどこにもないじゃないか」
「でも!」
「潮時だ。櫛名、学生達を頼んだ」
「皆城……」
「“カグツチ”を使う。早く離れてくれ」
悲壮な、しかし気高い覚悟がそこにはあった。その言葉に、櫛名は何も言えない。
「頼む」
「…………バカ、ちゃんと戻ってきてね」
それだけを言うと、櫛名は学生達の下へ向かう。
「無茶を言うなぁ……」
その後ろ姿を見ながら笑みと共にそう独り言ちると、システムを起動させた。
『“カグツチ”発動申請を確認しました。発動しますか?』
「はつ…………」
「…………さい!こ……、…………隊です!…………、聞こえますか!?」
最後の一言を、その口が紡ごうとした時だった。ノイズだらけだが、はっきりとその声が聞こえてきたのは。
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