表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/96

-43-

 防衛基地内のとある一室。そこで俺と麻衣は、司令から頭を下げられていた。


「とんでもない事を頼んでいるのは承知している。その上で、改めてお願いする。出撃して、スクランブル部隊が到着するまで訓練部隊の応援に行ってくれないだろうか」


「あの、急に言われても……状況が分かりません」


「あ、ああ……そうだったな」


 指揮所の見学をしようとしたら何やら忙しい様子で、指示を出している司令と目が合ったかと思えば急にこの部屋に連れられたのだ。司令も慌てていたのだろうけど、俺たちも状況についていけていない。


「時間もないので手短に説明しよう」


 そう言ってホログラムを起動する。


「本日、学園の3年生6名と正規装者2名が実戦訓練を行っていたが、折り返し地点でアビスと遭遇。応援要請を受けたがオモイカネに反応はなく、その後通信出来なくなったことから、先日現れた新型が関わっているものと思われる。通信で分かっているのは、新型が2体、基本型が20体いるという事と、学生の避難が完了していないという事だけだ。アビスに増援や更なる伏兵がいる可能性は捨てきれないが、先日の侵攻によって私達に出撃可能な戦力は残されていない」


 一気に色々と情報が流れてくるが、つまりは先輩達が危険な状態にあるということだ。麻衣と視線が合う。言葉にするまでもなく、麻衣も同じ気持ちの様だった。


「もちろん、俺たちができ……」


「待って!なんで優人くん達なん?こないな時の為のスクランブル部隊はどないしたん?」


 俺の声を遮るように、一歩後ろに下がっていた木乃香が疑問を投げかけた。その表情は硬く、どこか司令を非難している様な様子だった。


「……スクランブル部隊は、君たちが基地に到着する前に現れたアビスの対応をしている。未だ戦闘中で、訓練部隊の救援に行くためにはそれなりの時間が必要となる」


 辛そうな表情で、絞り出すようにそれを木乃香に伝える。


「じ、じゃあ、他の装者は?装者がそんなに少ない訳じゃないんでしょ?」


 今度は朱夏が声を上げるが、それに司令は首を振って答えた。


「先日のアビス侵攻に際して、多くの装者が出撃し多数のアビスを撃破した。そのため、出撃制限になっている者が多い……本当に、優人くんと麻衣くんだけしかいないんだ」


「それにしたって、なんで優人くん達なん……?」


 木乃香の疑問はもっともだった。俺たちは学園に入学したばかり、CADに触れたのだってつい最近だし、稼働時間だって少ない。それなのに、俺と麻衣に依頼をする司令の考えが分からなかったのだろう。


「それは……」


 一度そこで言葉を切ると、俺に視線を向けてくる。本当の事を話してもいいのか?という事なのだろう。迷いなく、それに頷く。こうしている間にも、先輩達はアビスに襲われているのだから。


「彼らが、前回の侵攻で新東京市を守った人たちだからだ」


「え!?」


「なんやって?!」


 朱夏と木乃香の驚きの声が部屋に響く。


「本当なの?」


「うん、本当だよ」


 俺の言葉に少し分が悪いと思ったのか、たじろぐ木乃香。


「ほんでも、優人くん達だけってのは納得出来ん!うちも出撃する!」


 驚きの表情で固まる朱夏。その横から、木乃香がとんでもないことを言い始めた。


「いや、しかし……」


「ウチは白衛やで、そこらの学生と一緒にせんで!」


「!では、そちらも……」


「あ、私は普通の何でもない学生です。でも、それだったら私も出撃したいです」


「む、むぅ……」


 突然の申し出に、苦悶の声を上げる司令。送れる戦力は大いに越したことはない。しかし、正式な装者でもなく実績もない新入生を、命の危険がある現場に送り込む事に思い悩んでしまう。


「私達は優人くん達のバディや!相方が出撃してるのに、黙って指くわえて待ってるのは我慢ならん!」


「む……、分かった。私の権限で出撃を認めよう」


 木乃香の言葉に根負けしたのか、司令が出撃の許可を出す。


「しかし!……こんな事を依頼しておいてだが、くれぐれも無理はしないでほしい」


「分かりました……それじゃあ、すぐに出撃します」


沈痛な面持ちでそう言った司令にそう返すと、俺たちは部屋から駆け出した。指揮所を抜け、ちょっと前に見学した出撃場へ向かう。


「それにしても、木乃香が自分の家の名前を盾にするなんて珍しいね!」


「ほらあ、それくらいせんと優人くん達の実績についていけなと思うたさかいね!利用できるものは遠慮のう利用するで」


 逞しい木乃香の言葉に、こんな状況だが思わず笑みを浮かべる。


「私は木乃香のお零れに預かった形になっちゃったけどねー」


 あははは、と笑う朱夏だったが、その声に後悔の色は無い。朱夏も朱夏なりに考えがあって出撃しようと申し出たのだろう。それにとやかく言う言葉を、俺は持ち合わせていないし、言うつもりもない。


そうやって話しながらも走る俺たちの前に、一人の男性が姿を現した。丁度通り過ぎようとしていたのか、走ってきた俺たちの姿に驚いていたが、続けて発せられた声に俺たちも驚いた。


「朱夏……?」


「え、父さん……なんで?」


感想、ご意見、ポイント評価頂けると嬉しいです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ