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基地見学の日。俺たちの乗ったバスが対アビス防衛部隊の防衛基地に向かって進んでいる。初めは、遠足気分で騒がしかった車内だったが、道を進み周りの景色が荒廃したものになっていくと、自然にその声は収まっていた。
「こっちに来ることなんて、普通に生活してたらないからな」
「ほうやな。うちも門下生の装者の見送りでついてきた時、びっくりしたで」
俺の隣に座っている木乃香がそう返してくる。バスの席順は、バディ毎になっていて俺たちの前には麻衣と朱夏が座っている。
「優人くんはあんまり驚いてないね?前に来たこと……あ、10年前の」
「ああ、うん。それもだけど、ちょっと前に機会が合って」
「そうなんや。それにしても、それにしても、ADFの基地ってどないな感じなんやろうな」
暗くなりそうな雰囲気を感じた木乃香が、急な話題転換をしてくる。前にもあったような展開だけど、それだけ木乃香がよく気を配る人な事が分かった。それに乗っかって話をしていると、程なくして今日の目的地である防衛基地に到着した。
研究基地と違って、すぐ近くに天岩戸があり設置された晶力エネルギー発生装置が、威圧感を見る者に与えてくる。基地の前には、沢山の勲章を胸に付けた人たちが立っていて、基地の責任者だと思われた。
「ようこそ、新入生諸君。私はこの基地の司令をしている花田少将です」
ピシッとした雰囲気に自然と背筋が伸びる。花田司令はキリッとした顔立ちで、仕事が出来そうな印象の女性だった。
「今日、皆さんを迎えられたことを嬉しく思います。毎年行っている基地見学ですが、先日のアビス侵攻により開催が危ぶまれていましたが、学園の先生方との調整もあり例年通りに実施となりました。皆さんはこれから3年間、装者となるべく学び、鍛錬を積んでいくことになりますが、そのモチベーション向上の切っ掛けになってくれればと思います」
人の上に立つ司令らしい言葉に、周りの学生が頷いている。
「では、早速ですが事前に決められた班毎に移動を開始して下さい」
花田司令の言葉に、静かになっていた学生が活気づく。学園の学生と言えども、普通の高校生と今はさほど変わりなない為、普段入ることが出来ない場所に入れるとなれば、テンションも上がってきてしまうのは仕方のないことだろう。
俺も、班員である木乃香達と合流し、バス内で配布された基地見学のしおりを見ながら移動を開始する。基地見学は割ける人員少ないこともあり、学生が自分たちで回る方式だ。それぞれ重要施設には説明担当が居て、到着した学生に説明をしてくれることになっている。
基地内に入ろうとすると、これから出撃なのか愛佳先輩と由紀先輩を見かけた。先輩達も俺たちに気付いたのか、手を振って答えてくれた。それに手を振り返し、基地内を進んでいく。見学すべき場所は沢山あるが、回り方は学生に一任されている。
「どこから見て回ろうか?」
「ん~、どこからでもいいかな」
「まあ、そうだよな。近場から回るか」
そうして近くにある隊員の慰労施設や、整備室を回っていった。
「司令、一時はどうなるかと思いましたが、何とかなりそうですね」
「そうね。3年生の実戦訓練の方も順調な様だし、一先ずは安心ね。でも、実践訓練の方は折り返し地点よ。つまり、一番基地から遠い場所にいるってこと。少し落ち着いているとはいえ、アビスの侵攻があったばかりだもの、警戒を厳として」
「了解です」
緩みかけている空気を、そう言って再び引き締める。装者の候補者とはいえ、今はまだ学生。その命を預かっているのだから、気を抜けるわけがない。そんな中、恐れていた事態が起こった。
「司令!訓練部隊から緊急通信です!」
「なに?!内容は!?」
「我ら、アビスと遭遇す。敵編成、妨害型2体と基本型20体!」
普段の哨戒任務では遭遇する事のない数だ。状況が状況ならスクランブル部隊が対応する規模になるが、今は学生が到着する直前に現れたアビスの対応をしていた。
「何だって?!」
「続きがあります!……学生保護の為、撤退中。学生の一部が恐慌状態のため、至急応援を求む!」
想定が甘かった!正規装者2名に学生6名は荷が重かったか。
「今出せる部隊は?」
「スクランブル部隊が出撃中で、残りの装者も出撃制限のため、有りません!」
「クソッ!前回の侵攻の傷跡か……それにしても、オモイカネに反応がないとはどういうことだ!これも妨害型の能力だというのか……?」
普段であれば予備戦力がいるが、今は時期が悪かった。少し前にあったアビスの侵攻の所為で、装者の殆どが出撃制限になっており、出せる戦力が居なかった。加えて、通信が入るまで発見出来なかったことで、他エリアからの応援を要請している時間もなかった。
「司令!どうしますか?!」
「出撃できる戦力が無い事には、応援を出すことも出来ないッ……」
そんな時、司令の目が指揮所へ入ってくる人影を捉えた。
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