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まとめ回の様なものの筈が、いつの間にかイチャイチャ回?みたくなっていました。
対アビス防衛部隊の隊員に送ってもらったあと、色々あり疲れていた俺たちは夕食を出来合いの物で済ませ、リビングでくつろいでいた。
「今日は本当に、色々ありましたね」
しみじみと麻衣が呟く。確かに、色々なことがあった。紅嶺崎さんに連れられて二三四博士の研究所を訪れるだけのはずが、アビスの侵攻と果てには直接戦闘と、内容の濃い一日だった。
「そうだなぁ」
「私、アビスと戦ったんですね」
そういう麻衣の表情は落ち着いたもので、俺は安心する。あの時、無理をしていると言っていたから、全部が落ち着いて反動が来ているのではないかと思っていたが━━
「本当に、強くなったなぁ」
麻衣の成長を感じて、思わず声に出る。
「え?」
「だってそうだろ?昔はアビスの事を思い出すと寝られなくなって、よく一緒に寝たじゃん」
「あれは!小さい頃の話で……」
俺の言葉に慌てたように声を荒げるが、唐突に俯き、黙り込む。
「麻衣?」
「…………久しぶりに、一緒に寝ますか?」
「ッ!」
僅かに俯いたところからの上目遣いは反則だろう。心なしか、瞳が潤んで頬が少し赤いように見える。そんな麻衣の表情に動揺を誘われ、咄嗟に返しが思い浮かばない。
「な、な~んて……」
「いいよ」
沈黙に耐え切れなくなったのか、茶化そうとした麻衣に言葉を被せる。
「……え?」
「だから……久しぶりに、一緒に寝よう」
「………………うん」
きっと、今の状況を外から見られる人がいたら、俺たちの顔が真っ赤に染まっている事に気付いただろう。しかし、今ここにいるのは麻衣と俺だけ。お互いの言葉に思考力を奪われている状態では、それぞれの顔がどんな風になっているかまで気が回らなかった。
気恥ずかしさを隠す様にテーブルの上をいそいそと片付けると、麻衣から風呂へ入る。何かをしていないと落ち着かない気分だったので、食器を洗ったり、普段からキレイにしているものの自分の部屋の片づけをしてみたりと、動きっぱなしだ。
「あの、兄さん……お風呂空きました」
「あ、ああ。ありがとう」
風呂から上がったのだろう、急な麻衣の声にドキッとする。幸い扉越しだったため、その姿は見られていない。着替えをまとめて風呂場に直行し、風呂に入る。湯が張られた湯船に身を浸すと、心地よさが全身に走った。
「ふぅ~~~」
思わず大きな声が出る。しばらく浸かっていると、さっきまで身体に籠っていた熱が湯に溶けていったかのように、冷静になってきた。
何を恥ずかしがる必要があるのか。相手は妹だぞ。確かに、一緒に寝るのは久しぶりだし、当時と違ってお互い色々と成長しているが、それでも可愛い妹だ。恥ずかしがる必要は、どこにもない。
勢いよく湯船から立ち上がり、身体を洗い仕上げと冷たいシャワーを浴びると、完全に気持ちが落ち着いた。寝間着に着替えてリビングに出ると、麻衣がその長い髪を乾かしているところだった。ドライヤーの風を、ブラシで一房ずつ救い上げられた髪に当てている。
ほとんど乾いているようだが、俺が風呂に入ったくらいから乾かしていると考えると、かなりの時間がかかっている。
「あ、兄さん。おかえりなさい」
「ただいま。いつもそうだけど、長い髪の手入れって大変じゃないか?」
ふと、疑問を口にする。小さい頃にはよく俺がブラッシングをしていたが、今よりも短い当時でも相当な量だった。実際、風呂上りに長時間髪を乾かしている姿をよく見る。
「それは、そうですけど。でも、当分は整えることはあっても切るつもりはありませんよ」
乾かし終わったのか、ドライヤーを片付けながらそう言う。
「そっか……そうだ、久しぶりついでにブラシをあてるよ」
昔を思い出していたからか、自然とそんな言葉が出ていた。
「ぁッ……じ、じゃあ……お願いします」
少し恥ずかしそうにしながらも嬉しそうな麻衣からブラシを受け取り、丁寧に髪を梳いていく。長い黒髪はよく手入れされていて、ブラシが全然引っかからない。キューティクルが光を反射して、キラキラと輝いている。
「昔からそうだけど、ほんと綺麗な髪だよな」
「手入れは欠かしていませんからね……ふゎ~あ」
ブラッシングを心地よく感じてくれているのか、欠伸がもれる。
「そろそろ寝るか」
「ふぁい、そうですね……なんだか、急に眠くなってきました」
ブラシを片付け、麻衣と共に俺の部屋に入る。シングルベッドと言っても、俺も麻衣も横幅がある方ではないので、多少くっ付くことになるが眠れないことはない。
麻衣もそんな事を気にする余裕が眠気に塗りつぶされたのか、既にベッドに横になり目を閉じている。その姿を見ながら隣に潜り込むと、冷えないようにしっかりと布団をかけ直した。
「麻衣、今日はお疲れ様……おやすみ」
むにゃむにゃと返事をする麻衣の頬をつつくと、伝染してきた眠気にそのまま身を任せた。
翌朝、目を覚ました麻衣が俺の隣で寝ていることに気付き、恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にして走り去るのを、俺はまだ知らない。
第1章 完
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