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1夜 エセビッチとの出会い

「成橋先輩....付き合ってください!!」


 さっきまで騒ぎ立てていたギャラリーは静まり返り、この中庭にひと時の静寂が訪れた。

 今、俺こと成橋風太(なるはしふうた)は昼休みの中庭にて大観衆の中、一つ下の後輩に告白されている。


「いつも先輩の事を考えてました」

 はいはい、またそれね。


「考えれば考えるほど、胸がドキドキして」

 まぁ、そりゃそうだな。


「気づいたら好きになっていました」

 うん、そいつの事がね。


「だから、私とつきあってください!」


 俺は静寂の中、ため息を一つつき、重い口を開いた。


「ごめん、俺じゃ無理だ」


 その言葉が放たれたと同時にギャラリーが、一人また一人と減っていき、さっきまでとは違う、廊下を歩く音、ギャラリーの声、それらが入り混じった雑音が響いた。

 そんな中、目の前の女の子の声が雑音の中をかい潜り、俺に問いかけてきた。


「どうしてですか?どうして私じゃダメなんですか?」


 そう言った女の子は少し涙目で、でもまっすぐ俺の目を見ていた。不意に一粒の汗が俺の頬を伝った。

 その声を受け取った俺は、ただ一言だけ。


「ごめん」


 おそらくこの言葉は正しく受け取られない。

 そして俺は、雑音の中に飲み込まれるほどの小さな声で呟いた。


「俺のせいでごめん」


 目の前の女の子はまっすぐ俺のことを見つめ一言、「そうですか」と言い、すぐさま後ろを振り向き走り去っていった。

 俺は女の子が去った事を確認し、一人教室に歩き始めた。


  ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 教室につくと教室内はいつものように騒がしく、俺もいつものように自分の席に座った。

 すると俺が座った事を確認するや否や、一人の男が目の前の席に座った。


「風太〜、振ったのは当たり前として、相手はやっぱり風太病だった?」


 この意味不明なワードをいってるこいつは俺の親友の鳥崎俊(とりさきしゅん)

 誰とでも仲良く話せて、クラスのムードメーカーみたいなやつだ。

 俺みたいな学校でもずっと勉強して周りと話さない奴が、周りから浮いていないのはこいつが俺と周りの仲を取り持ってくれてるのが大きい。

 俺にとってはなくてはならない存在だ。


「風太病はやめろって、結果としてはそうだった訳だが、、、」


「自分の想像上の風太を本物だと思い込んで、現実の風太を好きになる病気、それが風太病!怖い怖い。」


 実際問題、俺に告白する女子はほとんどがこの症状を患っていて、なぜわかるのかと言うと中学の経験によってと言ってしまうが、今はどうでもいいから割愛させてもらう。


「てことは、やっぱり告白の言葉もあのままだった?」


「あぁ、一言一句同じだよ、」


 すると、俊がその雛形となっている文を言い出し、それに呼応するように俺も補足した。


「いつも先輩の事を考えてました」

「お前の想像の中での俺をな」

「考えれば考えるほど、胸がドキドキして」

「そりゃそうだ、自分の都合いい好みの性格の俺を想像してるんだから」

「気づいたら好きなっていました」

「そりゃな、お前の理想だからな」


 一連の流れを言い終わると、俺は素朴な疑問を親友にぶつけた。


「やっぱりこの症状が発症してるのって俺のせいだよな?」


「そりゃもちろん。イケメンのくせに女子と目を合わせない、付き合わない、近寄らない、極めつけは女子と話してるときに限っては笑顔を絶対見せず、素を見せないときた。」


「イケメンでこんな奴がいれば、青春真っただ中の女子にはいい妄想材料だろうね。」


 俺は的確に指摘された親友の言葉にうなだれ、そんな俺を起こすかのように、昼休み終了のチャイムがなった。

 親友の俊は去り際に「無理だけはするなよ」とだけ言い残し、席を去った。

 やっぱりあいつは親友だ。


 チャイムからしばらくして、担任の先生がクラスの扉をあけ、5限目の始まりを告げた。


「よーし、みんないるなー?っと高宮はまだ来ていないのか?」


 その名前が先生の口から発せられた瞬間、クラスがざわついた。


「高宮さん、いつも遅刻じゃん。何をしてるのかは知らないけど」


「来てもいつも授業中寝てるし」


「いつも寝癖ついてるし、制服すごい着崩してるし、香水も毎日違うのつけてるし」


「多分相当自分に自信があるんじゃない?私たちに見せつけて見下してるのよ絶対」


「私たちが話しかけても、全く反応してくれないし。必死に私に話しかけてとか内心絶対笑ってるよ」


「朝とか挨拶してもガン無視だもんね。」


 今クラスで話されている人物は高宮こと高宮沙織(たかみやさおり)

 金髪でスタイル抜群、俗にいうギャルみたいなやつだ。

 みたいだというのは、学校ではいつも一人だし、何かアクセサリーを体につけたりしてる訳でもない、メイクも男の俺がわかる範囲では全くしてないため、俺が想像してるギャル像とは似てないことからみたいだと付け加えてる。


「やっぱり、あの噂本当なのかな。」


「ほんとでしょ、だってそれなら全てにつじつま合うし。ほんと性格悪いね。」


 そう、高宮がここまで目立ってるのには理由がある、それが噂だ。

 クラスのみんなが話していることはほとんどが本当で、それらから導かれた答えが噂の本体となる。


 高宮沙織は性格の悪いビッチであると。


「ん?あと鳥崎もいなくないか?」


 俊?あいつはさっきまで俺の近くにいて、チャイムがなったから席に向かったと思ったが、


「すみませーん、ちょっとトイレに!」


「はぁ、そういうのは昼休みの間に行っとけ。」


 そういうと先生は廊下に出て、高宮の出席について他の先生と確認をとり戻ってきた。


「とりあえず学校に来てる生徒は全員揃った、本題に入るぞ」


「今日は先月行った親睦遠足で撮った写真の中から買いたい写真を選ぶ時間にする、各々今から掲示板に貼られてる写真を確認し、欲しい写真に割り振られた番号を購入用紙に書くように、以上」


 そう先生がいうと、ぞろぞろと教室から生徒が出て行き、各々欲しい写真を探しに行った。

 俺も、ゆっくりと席をたち写真を探すために教室を出ると、そこには当たり前のように俺を待っている俊がいた、なぜかニヤニヤしながら。


「俊、何か企んでるだろ?」


「いんや、別に」


 こいつのことは信用している、親友だからだ。だがこの顔をするときのこいつは全くもって信用してない。

 嫌な予感しかしないが、とりあえず悩んでいても仕方ないため写真探しを始めた。


 そして、その嫌な予感は的中した。


「おい、なんだこの写真」


「ん?これは風太が家のベッドで上半身裸で寝てる写真だね!うまく撮れてるじゃん!」


「なんで親睦遠足の写真にこれがある?」


「え?風太が遠足先に自分の使ってるベッドが置いてあっていきなり寝たんじゃん、忘れたのー?お茶目さん!」


 脳内裁判開廷。死刑。


「殺す」


「いや、待って!怖い、怖い、目が怖いよ!風太君はそんな人じゃないよね!」


 理解できないことを言っているこいつを殺そうとした時、周りを歩く女子の声が聞こえた。


「やっぱ1000番入れたんだ〜」


「当たり前じゃーん、そんなこと言ってあんたも入れてるじゃん!」


「いやいや、女子でこの番号入れない人いないって!」


「貴重な資料だもんね!」


 1000番?そんなにでかい番号あるのか?遠足でそんな撮るとか流石にはしゃぎすぎ.....。

 俺は気付いた、気付いてしまった。


「俺のこの写真に1000番が割り振られてる、だと...」


「ありゃ?ほんとだ、でも、おかしいなトイレに行った時に、余ったスペースにこの写真をつけたから番号なんてついていないはずなのに」


「待て、どういうことだ?俊が番号をつけたんじゃないのか?」


「いや、俺はクラスの女子に家での風太君が見たいって言われたから観賞用に貼っただけで」


 こいつさらっと犯人であることを認めたが、でも今の言葉に嘘はない気がする、そうなると一体誰が。

 

「先生も買うんですか〜??」


「まぁな、生徒ととの思い出は残しておきたいし、なんかみんなのオススメはあるか?」


「1000番は買ったほうがいいですよ!」


「1000番か、どんな写真か知らないが買ってみようかな」


 俺は知ってしまった、知りたくもない真実を。

 それは分かりきっている事だった、番号を割り振れるのはこいつがトイレから戻ってきた後、廊下に出た人物。

 そんなの一人しかいない。


「あんの変態教師!!」


 俺はこの写真の購入禁止を先生に申し出るため、写真を貼り付けている画鋲を力一杯抜いた。

 しかし、勢いよく抜きすぎたせいで写真を掴み損ね、風の気流に乗っかり、空いている窓から写真が落ちてしまった。


「おいおい、嘘だろ。確かこの窓は中庭に接してるから」


 俺は全力で中庭に向かった。これ以上被害を出さないためにも、誰かに見られれる前に取りに行かないと。

 幸いにも今は他のクラスは授業中、たまたま中庭にいて、たまたま写真を拾うなんてそんな確率ゼロに近い、この事だけを心の支えに全力で走った。


「はぁ、はぁ、あの窓から落ちたからこっちの方に.......」


 俺は自分の心の支えが折れる音を聞いた。

 俺の予想落下地点には一人の女子が立っていたのだ。


「最悪だ、人はいるし、写真はがっつり持ってるし、ていうか見てるし、、、、あれは、高宮?」


 最高レアのキャラが最高レアなアイテムを持って中庭に降臨している。


「あいつ、学校に来てたのか、てかやっぱり今日もすごい寝癖だな」


 予想外すぎて自分が何しに来たか一瞬忘れて高宮観察をしてしまったが、すぐに我を取り戻し写真を渡してもらえるようお願いするために近づいた。

 そして、声をかけようとしたその時、


「やったーーーー、やっと、やっと、裸が見れたーーー!!」


 俺はこの光景を忘れる事はない。

 そして、俺は俺が嫌いな、人に自分の想像した型をはめる行為を高宮にしてしまっていることを知った。

 だって、俺の目の前には噂から導かれる高宮はいなくて、無邪気な笑顔で嬉し涙を流す高宮がいるんだから。

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