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色吉捕物帖  作者: 真蛸
岡っ引与太助
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 いったん長屋へ帰って寝たが、六つよりもかなりまえにはもうきのうの襲撃場所に来ていた。礫を探してみようとしたが、川の縁の草むらには石が大小取り揃えてごろごろしているのですぐにあきらめた。

 それから色吉は羽生の旦那の邸宅を訪ねた。同心羽生多大有の出勤の供をすると、すぐにまた羽生邸に戻る。隠居の前当主、歩兵衛に前夜のことを相談するためだった。

「ほほ、それは卒太と根吉だな。背の小さいほうが卒太で、太ったほうが根吉じゃ」

「へい」

 しかし色吉の覚えている限り、ふたりとも背が小さく、太っていた。まるで親分の太助をそのまま縮めたみたいな、絵にかいたような親分子分だった。

「それから、あとから出てきた年の寄ったのは、自分で名乗った通り――」

 いつもの歩兵衛の部屋で、色吉は歩兵衛と向き合っていたのだが、そこに留緒が茶菓子を運んできたので話をいったんやめた。

「うちのものがいま持ってきたんです、さざ波っていうお菓子です」

 色吉と歩兵衛のまえに菓子の乗った小皿を置いた。留緒の実家は浅草の菓子屋なのだ。

「ありがとうござんす」

「お茶のお代わりもどうぞ」

「ありがとうござんす」

 留緒が部屋を出ていくと、歩兵衛は話を続けた。

「竹五郎だ。三人とも先代の簾蔵のころからの手下だから、太助がそのまま引き継いだんじゃな。年も竹五郎はもちろん、他の二人も太助よりも上だった。卒太も根吉も三十半ばのはずだ。竹五郎は色吉殿の見立て通り、もう六十に近い」

 歩兵衛はここで茶を一口飲み、留緒の置いていった菓子をかじった。「お、うまい」

 色吉も食べてみた。うまい。ふだん酒を飲まないこともあり、甘いものは好物だ。

「しかし簾蔵には通したつもりだったが、思わぬところから物言いがついたの。これはわしの手落ちじゃった、色吉殿にはすまんことをした」

「いや、そんなつもりで言ったんじゃねえんで。ただそのあとの礫の件がちぃと気になりやして」

「ふうむ、太助がやはり、腹に据えかねて色吉殿を追いかけたということかのう。まあとにかく、簾蔵と太助にはあらためてわしから話をしておこうよ」

「へえ、ありがとうござんす。ただ、その際にはあっしも同道させてもらいてえんで。よけえなことは言わねえようにしやすんで」

「ふむ、色吉殿も顔を通しておいたほうがよかったかもしれんの。いや、いま思い出した、わしもそう考えとったんだった。あのころは多大有とともにあちこちに挨拶回りにでかけなければならなかったので、あいつらのことはつい後回しになって、ついには忘れてしまったんじゃった」

 思い立ったが吉日とばかり、多大有が帰宅したらそのまま簾蔵を訪ねることになった。


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