失敗の春ーSide 桜ー
おまけみたいなものです。
ーー桜視点ーーーー
「ああ〜またやっちゃったよ……」
家に帰ってきて、真っ先にベッドに倒れこんだ。
もうこれで何回目だろう、オーディションで失敗するのは……
養成所で練習はいっぱいしているのだけれど、全然自分に自信が持てない。今回のオーディションでも、何を答えたのかも覚えていないぐらい緊張しちゃった。
ただ覚えているのは”自分が今回も失敗した”ことだけ……
「ReStartに入れるおっきなチャンスだったのにな……」
思わずため息をつきながら、ポカポカと頭を殴ってしまう。
ReStartといえば養成所の中では、みんながこぞって入りたがる芸能プロダクションだ。急な募集だったけどわたしはきちんと準備してきた……つもりだった。
「うぅ〜〜」
思い出せば思い出すほど、ダメダメな自分が悲しくなってきちゃう。養成所の先生達にも”今度こそ大丈夫よ”って送り出してもらったのに……
”さくら〜ご飯よ〜”
一階からママの声が聞こえてくる。
ママは何も言わないけれど、わたしの様子を見て結果を察してくれたのだと思う。ママにも気をつかわせてしまってることが余計に泣けてきてしまう。
「ああ〜ダメダメ! こんなウジウジしてるのはわたしらしくないよね!」
無理やり口角を指であげて笑顔を作る。辛い時にいつもやっている、おまじないみたいなものなんだ。
『自分の取り柄は笑顔』
わたしはよくわからないけど、先生たちが言っているんだからきっとそうなんだと思う。
”明日からもう一度がんばればいい”今までもそうやって失敗を乗り越えてきたんだから。
すっと夢に見ているアイドルのステージに立つまでは、絶対にあきらめない。
フッと気合を入れてわたしは立ち上がった。
それと同時に”グゥ〜”とわたしのお腹の音が鳴る。
……
…………
………………
「……ま、まずはご飯を食べてからだね」
落ち込んでいても、お腹は空いてくるんだから仕方ないよね。
わたしは足早に階段を降りて食卓に向かった。