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3色アイドルプロデュース  作者: 番通 定男
5/12

人は見かけによらないものだ?


 おかしい……


 いや、なにがおかしいのかというとウチの事務員になってくれた千堂さんだ。黒髪ロングで目もキリッとしていて、スーツがバシッと決まっている。イメージ的には”敏腕秘書”という感じだろうか。愛想も良くて人としての魅力がある。


 ところがどっこい、彼女は行動を開始すると全てを一変してしまう。最初は緊張しているからだと心の中で弁解していたけれど、俺も薄々感づいてきた。


 ・全く違うファイルに書類をまとめる


 ・持ってきてくれたお茶をこぼす


 ・何もないところですっ転ぶ


 これはいわゆるお約束のパターンじゃないか?


 ちなみに彼女のパンツは白だったり……ゲフンゲフン! 顔を赤くして「……見ました?」なんて言われると、どんなミスでも許してしまうのが男だ。むしろ役得だったりするからもっと転んでくださいお願いします。


 ……とまあ、いろいろといらないことを喋ってしまったが、ここ一週間の付き合いでわかったことが1つある。彼女はそう”あれ”なんだろう……というか大半の人は気づくのではないだろうか。


 彼女はーー


 いわゆる”ドジっ子”というやつだ。

 

 クールでドジっ子ってどんなアイドルだよ、と思うけれど間違いないだろう。何かやらかす度に”あっ”とか”えっ”とかの気の抜けた声を上げているから、ねらってやっているわけではないはずだ。もしわざとだったなら彼女は天才に違いない。


 一緒に仕事をしていると、ボールペンのバネがこちらに飛んできたのはさすがにビビった。インクが出なくなって中身を解体してみたら、うっかり飛ばしてしまったらしい、どんなうっかりだよ。


 まあこの件に関してはさっきのパンツ事件の後だから、俺の記憶を抹消しようと射撃したのかもしれない。肝心のバネは俺のコップの中にダイブしていったから、使い物にならなくなってしまったのだが。


 他にもいろんな話があってだな……


* * * * *


「あの、愛さん、今月末のアイドル募集の件なんですけど、キャッチコピーとかどうしましょう? なにかいい案あったりしますか?」


 あ、言い忘れていたが彼女の名前は”(あい)”だそうだ。なんともかわいらしい名前で今ではしっくりきてしまう。千堂は仮初めの姿で愛が真の姿なわけだ。


「そうですね……『かわいこちゃん集まれ〜』とかはどうですか?」


 ……彼女のセンスが微妙に古い気がするのは気のせいだろうか。今の中学生とかにかわいこちゃんは通用するんだろうか。


「な、なかなか良い感じですね。僕は『夢をつかもう』とかが良いかなって思うんですけど……」

「ええ〜ちょっと普通すぎませんか? やっぱり印象に残ってもらうためにも、個性的な名前の方が良くないですか?」


 なるほど……愛さんが言っていることはもっともだ。全てのことに言えることだが『第一印象はとても大事』と確かに俺も教わってきた。現に、愛さんと初対面した時のイメージは今でもわずかに残っている……ほんのわずかに。


 ならここは多少強引でも気の惹けるキャッチコピーをつけるべきかもしれない。同じ女性である愛さんの方が、俺よりアイドル達の気持ちもわかるに違いない。


 さっきの俺の意見は撤回することにしよう。”かわい子ちゃん”はナウいヤングな言葉だったんだ……たぶん。それなら愛さんの意見をもっと参考にさせてもらおう。


「たしかにそうですね! 他にも案はありますか?」

「う〜ん、そうですねえ……」


 愛さんはウンウンと唸りながらもアイデアを絞り出してくれている。美人が悩んでいる姿っていうのもいいものだな……っと違う違う、今は真面目な話をしているんだった。


 しばらくすると、愛さんはピコンと何かを思いついたように顔を上げた。そしてどこか誇らしげな表情をして口を開いた。


「『未経験の人も募集しています!』とかはどうでしょうか? これならいろんな人が来てくれるはずです」


 愛さん……


 それはキャバクラ募集だよ……


 結局、愛さんの意見は採用されることなく『アイドルになりたい女の子募集!』で収まることになった。

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