ジョニーさんとのお話!
「俺はなにをしたんだ・・・?」
呆然と柑橘類と血の香りが混じったなんとも言えない匂いの中呆然と俺は立ち尽くして居た。
確かに俺は女の子が捕まえられているのを見て思い切りブチ切れて居た。
だが今の戦いはなんだ?
頭の中にミカンの事が浮かぶとそれに伴って身体が勝手に動く感覚がした。
ハッキリ言って気分が悪い。
まるで誰かに操作されているみたいだ。
そして何よりも俺が戸惑っているのは戦いの最中、俺は確実に、命の危険があったにも関わらず、【戦いを楽しんで居た】のだ。
「ホッホッホ・・・、随分と派手にやりましたな。ホッホッホ・・・。」
ふと振り返るとそこには空に浮かびながら俺に話しかけてくるジョニーさんが居た。
俺は人間が宙に浮いているということに一瞬ビックリしたがここは異世界、あのジジイは剣と魔法の世界と言っていた。
すぐに我に返ると俺はジョニーさんに話しかける。
「なんでジョニーさんが・・・?」
「娘のおかげで御座いますよ、あの子は私が作成した様々なマジックアイテムを持って居ますからなあ、私を呼ぶなんてことはお茶の子さいさいなのですよ。」
だったら俺、エレナをビックローチから助けなくてもよかったんじゃ・・・という言葉が
喉から出かかったが俺は其れを飲み込む。
しかしいくらマジックアイテムを使ったといえど俺がエレナから離れてまだ五分も経っていないはずだ。
その間にエレナからの連絡を受け、俺のところにピンポイントにやって来るなんてこのジョニーさん、すごい人なんじゃ・・・。
「ふむ、服が汚れてしまって居ますなあ、早く店に戻って何か着るものを身繕わなくては・・・。ほれ、早く行きますぞ。」
そう言うとジョニーさんは俺の制服の襟を掴んで歩き始める。
うわっ⁉︎タダの人のいい執事っぽいおじさんだと思っていたらこの人、すごい力だ!
「なんで俺を助けに・・・?」
「其れは・・・あなた、エヒメ殿が私の店の大事な従業員だからですな。いくらさっき契約したばかりといっても確かにあなたは私の店の従業員、私の店は従業員は皆、家族の様に接すると常日頃から決めていますからな。」
メチャクチャいい人じゃんか!
俺はこの人の下で働くことの出来るのを感謝した。
「ふむ・・・人さらい、で御座いますか・・・」
俺はジョニーさんとエクシア行商店に向かって歩いていた。
なんで飛んで帰らないんだ?と疑問に思い、ジョニーさんに尋ねてみると
『従業員とのコミュニケーションも大事な店主としての仕事なんですな。』
と返して来た。
俺はその帰りの時間を利用してさっきの一連の出来事について話していた。
「やはり、ここ十年で治安がめっきり悪くなっておりますなあ・・・。」
ジョニーさんはハァと小さくため息をつきながらそう言う。
「ここ十年、というと其れ以前はこんなことはなかったんですか?」
俺はジョニーさんに尋ねる。
「ええ、十年前の隣国との戦争で大量の亜人が国内に流入しましてな、現国王がなんとかその時の混乱を収めたのですが我が国の大臣には少なくない数の亜人排斥派がおりましてな。十年立つ今でもこの国のいたるところに亜人のスラムがあるのですぞ。」
ジョニーさんはそう言うと悲しそうな目をして遠くを見る、ジョニーさんはその十年前の隣国との戦争にでも参加して居たのだろうか。そんなことを考えているとジョニーさんは彼を見る俺の視線に気がついたのか話題を変える。
「ところでエヒメ殿、チラッと見ただけでしたがすごい戦い振りでしたなあ。あんな戦い方見たことありませんぞ!あれはエヒメ殿の故郷の魔法ですかな?」
ジョニーさんはそう俺に問うて来た。
そりゃそうだ、俺だってミカンで戦う奴なんできいたこともねえよ、と思いながらもジョニーさんの問いに答える。
「まあそんなところです、といっても俺にはこれしか出来ないんですがね。」
そういって俺は<ミカン>と唱えて温州蜜柑を出現させる。
「ほう・・・素晴らしい、本当にこれしか出来ないのですかな?こう、火を出したりとか?」
「ええ、これだけです。」
俺がそう言うとジョニーさんはガッカリした顔をする。
「あれだけ戦う事が出来るならば娘の護衛をして欲しかったのですが・・・ふむ・・・」
そう言うとジョニーさんはしばしの間考えこみ俺にこういった。
「其れではエヒメ殿、私の下で魔法を学んで見ませんかな?」
「魔法を・・・ですか?」
「ええ、その奇怪な魔法が出来るのならばエヒメ殿には少なからず魔法の才能があると言うこと、娘の護衛をして頂けるならばお代は結構、どうですかな?」
「少し・・・考えさせてください。」
俺はそう言うと歩きながら考えはじめた。
成る程、魔法か、悪くない響きだ。
エレナ曰く、今この国では魔法使いの数は少ないらしい。
ならここで魔法を学べば食いっぱぐれることはないんじゃないか?
しかもエレナの護衛をすればお代いらないときた!
護衛と言うことはエレナと合法的にずっと一緒に居られるということ。
エレナは俺の好みにどストライクだ。
となると俺にはデメリットは皆無なんじゃ・・・。
よし、きめた!
「ジョニーさん!ぜひお願いします!」
俺がそう答える頃にはもう日はかなり傾いており、エクシア行商店はすぐそこに迫って居た。
「そうですか!其れでは宜しくお願いしますな。」
「はい!」
俺はそう元気に答えるとジョニーさんと共に店の中に入っていく。
今思えばこの時もっと良く考えるべきだったのだ。
エレナが一人で森の中にいた理由、
そして魔法を学ぶ、と言うことの意味を・・・。
このあと魔法の説明を挟んで本格的に話が進みます。
今のところ3つほど話を考えているのでボチボチ書いて行きたいです。
そしてその後の「ハゲ撲滅編」まではなんとかれんさいを続けたいです。