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第3話 初心者的死に様

 翌日の二十時が来た瞬間私はゲームにログインした。

 ログインする場所は当然初期村。

 本当はきちんと村の名前があったはすだけど、みんな初期村としか呼ばないからすっかり忘れてしまった。

 初期村はその呼び名の通り、キャラクタークリエイトを経て作成されたキャラクターが最初にログインすることになっている村である。

 初心者はまずこの村を拠点にキャラクターを育てることになる。

 そのため、この村は初心者を狙ったギルドの勧誘が特に盛んに行われている場所でもある。

 一般的なセカンドキャラであれば、ある程度しっかりした装備をメインキャラから送れば、余裕をもって敵を倒しながら次の村へと向かうことができるので、この村に長く滞在することはない。つまりこの村を拠点に行動してということは初心者であることの証明でもある。

 村にはクエストが用意されているが、手に入るのは初心者の育成を補助するような装備ばかりであり、メインキャラクターがある程度育っているようなプレイヤーは、それ以上の装備を簡単に用意することができるため、初心者以外にわざわざクエストをこなすものはいない。

 そして初心者は既にゲーム内に知り合いがいるという場合を除き、入るギルドが決まっていない。

 つまりギルメンを募集しているギルドからすると絶好の狩猟場なのである。


 そして私は今日から初心者だ!


 ならばコツコツとクエストをこなすことで初心者アピールをしなければならないだろう!


 村を歩いていると、そこらかしこで初心者を勧誘している姿を見かける。

 羨ましい……とは思う。

 しかし私は決して自分から話しかけたりなんて真似はしない。確かに私は初心者としてギルドに入ってちやほやされたい。しかしそのためにも私は自主的にギルドへ入るのではなく、われて入りたいのだ!


 そしてそのための初心者アピールである。


 私は村に用意されているお使いクエストを淡々とこなしていく。

 こなしていくが…………おかしい。かれこれ一時間も奮闘しているというのに誰からも声を掛けられない。

 くっ!クエストをこなすだけではまだ初心者力が足りないというのか!

 いいだろう!そこまで言うのであれば魅せてやろう!私の初心者力を!


 私は村で受けられる初心者用の討伐クエストを受けて、さっそくそのモンスターのところへと向かった。

 そして初期装備の杖を振りかぶり…………殴る!

 するとノンアクティブだったクエストモンスターが私に向かって攻撃してくる。

 本来であればこのような単調な攻撃当たるはずもないが、ここは甘んじて受けよう!なぜならば私は初心者なのだから!


 私とクエストモンスター『ゴブリン』とのガチバトル。魔法職だというのに殴り合うという初心者的行動!そしてその結果当然モンスターに殴り殺されてしまう私!


 レガリアでは死ぬとその場で死体となり、復活させてもらうのを待つか、前にいた村に死に戻りするかの二択となる。

 ここで勧誘目的の熟練者でもいれば、復活を待つのは得策である。が、周りを見渡してもそれらしい人は見当たらない。

 しかしそれでも構わない。

 私の目的は村に死に戻ることなのだから。


 システムウィンドウに表示された『村に戻る』を選択して私は村へと戻った。


 死んで戻る地点は決められている。

 それは町の真ん中の噴水そばで、とても目立つ石碑の前であった。

 だからこそ、私が死んだことは目立つ。相当目立つ。しかもこんな初心者エリアで死ぬようなプレイヤーなど初心者以外の何者でもないはずだ。

 私は光に包まれて石碑の前で復活を果たした。


 どうだ!私の初心者力は!!!


 さぁみんな!私をギルドへと誘ってもいいんだぞ!


 ……………………。


 ……………………………………………………………………………………。


 ………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。


 なぜだああああああああああ!!!

 なぜこんな可愛い妖精族が死に戻りしているというのになぜ誰も気に掛けてくれないのだ!

 おかしい。絶対におかしい。

 何が悪かった!?可愛さアピールか?よし、それなら任せろ!


「シ、シンジャタ。テヘッ」


 今軽く自分に対して殺意が沸いた。

 思わず八つ当たりでこの村にいるプレイヤーを犯罪者プレイヤーを取り締まっているNPCの護衛兵もろとも皆殺ししてしまいそうになるほどに。

 よし、メインキャラでログインしなおして…………い、いや、いけない!

 私は初心者!初心者なのだ!

 今のはたまたま誰も私のことが見えていなかっただけに違いない。

 も、もう一度トライすれば私だって!


 私が村の外に向かって歩き出すと、一人の女の子を複数人で勧誘ナンパしているギルドがあった。

 ナイト系の男とアタッカー系男とヒーラー系の女が何とか目当ての女の子を逃がさないように必死に取り囲んでいる。

 く、悔しくなんてないんだからな!

 自然と溢れだしてくる熱い涙を拭ってその横を通り過ぎようとすると声が聞こえてきた。


「あの、通してください……。知り合いと待ち合わせしてるんです」

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