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第2話 初心者的プレイ時間

 うーむ、やはり冒涜的だ。

 女の身でありながら好きな男のアバターを作って自分の名前添えて愛を囁くくらいの罪深さを感じる……。

 い、いや、大丈夫。きっとそのうち慣れるはずだ。


 ともあれこれだけ可愛ければそれはもうちやほやされ、みんなが私を守ってくれるに違いない。

 初心者キラーも思わず手を止めてしまうかもしれないくらい可愛く仕上がっている。


 しかしせっかくのセカンドキャラなのだから少しばかり楽をさせてもらっても罰は当たらないだろう。

 ほとんどのプレイヤーがメインキャラからセカンドキャラにアイテムやお金を送ることで楽に素早くレベリングを図っている。

 とはいえ、私の目的はセカンドキャラの高速育成ではないし、あまつさえメインキャラの存在がバレるようなことがあってはいけない。

 あくまで私は不慣れな初心者を装ってみんなに優しく守ってもらえるような存在にならなければならないのだから。

 となると送るアイテムはかなり厳選しなければいけない。

 一般的に他人のインベントリを覗くことはできないが、他人に見せることができる機能はついている。となると、最悪インベントリを見られたとしても大丈夫な程度のものしか持って来ないのが無難だろう。

 大金なんてもってのほかだし、強化されたレジェンダリィアイテムなんて身に付けているだけで目立つことこの上ない。

 できるだけ目立たず、役に立ってくれるような都合のいいものがあるわけ……………………あったな。


 私はさっそくメインキャラでログインし、モモコに向けてそのアイテムをメールに添付して送った。

 親愛なる私の娘へと一言添えて。


 そしてモモコでそのアイテムを受け取ってさっそく自分の左目へと嵌め込んだ。


バロールの魔眼

 装備部位:ファッションアイテム

 効果:スキル『バロールの魔眼』が発動可能になる。


 装備には一般的な装備品とファッションアイテムがある。

 装備品に分類されるのは「右手・左手・頭・身体・腰・手・足・背中・下着・指輪×2、耳飾×2、首飾り」の計十四種類の装備品であり、それらは装備画面を操作することで装備することができる。

 そしてそれ以外のものはファッションアイテムに分類され、実際にオブジェクト化してアバターにくっ付けることにより装備できるようになっている。

 なぜこのような仕様になっているかというと、装備する位置が決まっている装備品に対して、ファッションアイテムの装備箇所は多岐に渡るためである。

 例えば髪飾りを装備するにしても、右寄りに付ける人、左寄りに付ける人、そして大量に付ける人など好みは人それぞれ違う。その違いに臨機応変に対応できるようにこのような装備方法となっているらしい。

 つまり、ファッションアイテムは身体に接してさえいれば装備されたことになる仕様だ。

 そしてこれはMMORPGでは良くある話なのだが、ファッションアイテムという名前なのに、なんとデザインが変わるだけではなく、装備効果までもが付与されている。ただし同じ種類のものを二つ装備しても効果は重複して発動しない。


 そしてこのバロールの魔眼も例に漏れずなかなか便利な装備効果がある。

 それにこのバロールの魔眼は目と同化して目のデザインを変えるという代物しろものなので、装備していること自体バレにくい。

 さらにこのアイテムの存在を知っているプレイヤーは私以外にはいない。

 というのも、これは世界で最初に魔王バロールを討伐して魔眼城の城主へとなったギルドマスターに贈られるユニークアイテムだったからだ。

 私はこのとき既にプレイヤーの嫉みに対してかなり敏感になっていたので、サーバーに総数が決められているようなアイテムを手に入れたとしても、そのことを公言したり、装備したりすることはなくなっていた。

 MMOのおいて他に誰も持っていないアイテムほど羨望と嫉妬の対象になるものはないのだ。


 そういった径違があるからこそこの魔眼は存在を知られていない


 他にも存在を知られていないアイテムをいくつか持っているが、装備しているだけで目立つため、持ってくるわけにはいかない。私の目的はあくまでか弱い初心者プレイヤーになることなのだから。


 魔眼を装備すると左目が赤くなり、瞳の奥に六芒星が浮かび上がってくる。

 しかしそれも覗きこまなければただのオッドアイにしか見えないだろう。

 オッドアイ自体はキャラクタークリエイトで普通にデザインできるものだから全く問題はない。


 よし、これで全ての準備は整った。


 今日はもう寝よう。


 いつの間にやらもうかなり遅い時間になっている。

 初心者の振りをするならばログインする時間も重要だ。

 やはりベストは20時から23時の間くらいだろう。間違っても午前3時頃までログインして廃人アピールをしてはいけない。

 私は新しい冒険に夢を膨らませつつ、柔らかなベッドへと潜り込んだ。

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