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水の亡国  作者:
第三項: 水晶の都
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古ノ国覚書 一

時は戦乱の世、夕月の年。水の檻現れ、全てを喰らわんとす。








【この覚書は、数百年前に起きたという水の亡国の終焉についての、とある手記の抜粋である】

 

 雪融けも終わり、春の木漏れ日が心地よくなってきた季節。ある一冊の手記が世間を賑わせたことは、皆さんの記憶に新しいだろう。

 人里離れた森から見つかったこの手記には、人類最大ともいえる事件についての記録が記されている。


 今から数百年前に起きたとされるこの事件は、資料が虫食いの部分も多く、はっきりしていることが少ない。

 唯一詳細まで記録されているのがこの手記で、内容から察するに亡国へ挑んだ者のひとりが書いたようだ。

 手記は数百ページにも及び、時に執拗なまでに真実を書き記している。

 難点は古い字体で書かれていることであり、専門の者でなければ読み解くことは難しいだろう。

 本稿『古ノ国覚書』は、伝承の域に達しつつある亡国に関し、出来得る限り誰でも読める記録を残すことを目的としている。

 それでは、筆者の考察を交えつつ、かの国について語るとしよう。




【歴史】

 くだんの国、アクリアルは、元はキッカという名の国であった。初代王キッカルラの名からつけられた国名だが、四代目シャンティの時、深淵詠みの聖者よりかの有名な剣を賜ってからは今の国名、『アクリアル』で知られるようになる。

 ここまでは誰もが習ったことのある歴史だが、手記の記述では少し違う。

以下は引用である。


 ……深淵詠みの聖者として知られる彼は、その昔、水櫃に棲まう者という称号を与えられていたという。

 かつては聖と魔の区別はなく、あるのは”水”を手繰る業だけだった。

 この区別が出来始めたのは、千年前、かの王が国を崩壊させた後であろう。

 ウンディーネはシャンティ即位の際に贈られたものであり、水櫃に棲まう者が深淵から全ての性質を取り込み、織りなした剣である。

 シャンティはこの剣から特に『水』を見出し、そのため剣はウンディーネと名付けられ、国名もそのように変えられた」



 アクリアルと改名した国は、多くの聖者や魔女(この時は区別がないらしいが)を従え、破竹の勢いで領土を拡大していったという。

 都の移動は何度かあったものの、最も多く都に指定されたのがハイロリアである。

 



【古都ハイロリア】

 白雪の都、いにしえのハイロリアは水晶の名産地であった。

 溢れるように水晶が採掘される様は、王の流水の剣とあいまって、水の都と称されることもあったらしい。

 アクリアルの歴代の王らは『水』の性質を強く持っており、それは世襲制による血の影響だけでなく、ハイロリアという特殊な地からの影響もあったのではないか、と指摘する学者もいる。




【餓鬼】

 ハイロリアに出没したという魔物。元はハイロリアの住民だったらしい。

 生命はなべて”水”を有し、それによって構成される。深淵から溢れだした”水”に自身の”水”を吸い取られた住民たちは、正気を失い”水”を求めるだけの化け物となった。



【白銀の騎士団】

 ハイロリアに駐在した自警団。騎士団の名は自称だが、驕りとならぬ位の実力はあった。

 弓兵八人、槍兵二十人で構成されていたという。白銀色の鎧を身につけ、良く民を助けたため、人々からの人気は高かった。

 


【ドラゴン】

 深淵より生まれし炎の獣。強大な炎の性質により構成され、全ての火を司る優美な生き物。使命に忠実であり、一度主人と定めた者には生涯仕えるという。




【ウンディーネ】

 アクリアルの王たちに継承される白き剣。柄から刃全てが真白い石で出来ており、決して刃毀れせず、真の使い手ならば”水”の力を得ることが出来る。

 光は、全ての色が集まれば白になるという。なれば、この剣の白さは、深淵より全ての性質を取り出したことによるのだろうか。 




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