伯父の来訪
それにしても暑い。勉強する気が全く起きない真砂は床に寝転がった。あ、冷たい、気持ちいい…と夢の世界へ旅立とうとするところに母の邪魔が入った。
「まさごー!伯父さんたち来たわよー!!」
「えっ!」(宏樹さんがくるのは明日だと思ってた…)真砂は手櫛で髪を整えながら階段を駆け下りた。
黒く高級な光を放つハイブリッドカーから降りた伯父は、4歳下の父よりも若々しい。助手席から出てきた妻の早苗も上品で美しい。(やっぱり都会の人は違うんだな…。)彼らに会うたびいつも感じる事だった。けれど、気取ったところもなくて気さくな人たちであるため、真砂は気兼ねなく彼らに甘えている。
「宏樹さん!早苗さん!お久しぶりです!」真砂は彼らに駆けよった。
伯父さん、伯母さんと呼ばれるのをなぜか嫌がるため、いつも名前で呼んでいる。
「久しぶりだな、真砂。お前ちょっとやつれたんじゃないか?夏バテか?ただでさえほっそい身体してんだからちゃんと食えよ。男が寄ってこないぞ~」
「失礼な!開口一番それってないよ~。もう宏樹さんにお酌しないもんねー」
「まあまあ真砂ちゃん、こんなのほっといて良いわよ。何もしなくても真砂ちゃんは可愛いから」
早苗の言葉に真砂は本気で照れた。
あたふたしていると、後部座席から男性が出てきて驚いた。宏樹によく似た、女の子にもてそうなすっきりとした顔立ちの若者だ。思い当たるのは二人の息子だ。(えっと、どっちだっけ・・・)
真砂の困惑が顔に出ていたのか、早苗が言った。「弟の岬よ。こっちに来るのは中学校以来だから、分かんないわよねー。ホント背ばっかり伸びて、見かけだけ大人なのよ。見かけだけね。」早苗が毒を吐きながら笑う。岬…あ、たしかそんな名前だったっけ。あ、兄ちゃんの名前出てこないや。
「うっせ。もう成人してるよ」岬が欠伸を噛み殺しながら返す。きっと車の中で爆睡してたんだろうな、この人。
ふと、岬がこちらを向いた。「久しぶり、真砂ちゃん。俺のことおぼえてる?」
ご免なさい。正直あんまり覚えてません。真砂は気まずく苦笑を浮かべた。
伯父一家は一泊してまた東京に戻るということだった。その日の夕食は寿司の出前をとった。岬の姿をみた母と妹がハイテンションで質問攻めにしていた。女という生き物はイケメンが大好物である。いや、私も一応女なんだけど…。そんな母と妹を邪険にすることもなく、ニコニコと返答する岬が少々意外だった。
そんな彼らを横に、宏樹が聞いてきた。「真砂は高校3年生なんだろう?進路はもう決めたのか?」
「う~ん、今のところはK大かな。家から通えるし」
「家から出させてもらえないのか?」
「いや、そういう訳ではないんだけど、一人暮らしができる自信がなくて。部活がESSだったから、本当は英語を学びたいって気持ちがないでもないんだけど、文学部に入れば第二言語で選べるかなって」
真砂は呟くように言った。
「お前の気持ちも分からんではないが、せっかくやりたいことがあるなら、相談だけでもしてみたらどうだ?英文学と普通の文学部ではやはり違うと思うぞ。」
う、エリートに言われると説得力がありますな。
もっとまじめに考えてみようかな、と寿司を食べながら思った。
恋愛要素まだまだです。すいません。




