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第三部 スタート

□序章

 世の中には2種類の人間がいる。諦めのいい奴と諦めの悪い奴だ。

 これには、様々な解釈があるのだけれど、今は、恋愛に限定して話をしたい。

 例えば、失恋したとする。

 その場合、一般的に諦めの悪い奴は、「女々しい」とか「男らしくない」と揶揄される。

 本当にそうだろうか?

 いや、おれは、そうは思わない。

 本当に惚れた相手なら簡単に諦めることなんてできるわけがない。

 だって、そうだろ!

 もし仮に諦めることが出来たとしたら、人は悩んだり、苦しんだりしないハズだ。

 だから、誰もがもがき苦しみ一度はこう思うハズだ。

 自分の心を自由にできたらどれだけ楽になれるだろう・・・と。

 それでも、だからこそ、おれは、徹底的に、完全無欠に諦めの悪い男になってやるつもりだ。

 そう、大いに悩んだり、苦しんだりするつもりだ。

 

 だって、それが本当の恋だとおれは思うから。


□第八章 イケメンの心得

 おれは、大学のキャンパスの前に立っていた。

 立ち止まってるおれに女子大生たちが熱いまなざしを向けてくる。

 そう、おれは、イケメンである。


 交通事故に遭ったおれは、人類史上初の非合法の手術をされた。

 そう、人体実験である。

 術式は、聞いてびっくりの脳移植である。

 事故の際、もともとのおれは、心停止状態で、今のおれ、イケメンくんは、脳死状態だったそうだ。

 早い話が、脳だけがもともとのおれで、顔と体は、イケメンくんのものである。

 とまあ、こんなカンジでイケメンになってしまった。

 そんなこんなあり、おれは、ゆかりと再び出会うために井村卓也として生きていくことを決意したのだった。

 ちなみに井村卓也とは、イケメンくんのことで今のおれの顔と体を担ってくれている。

 ここまではいい、ここまでは良かったんだ。

 しかし、ここからが地獄だった。

 おれは、卓也となる為、卓也の素性から人間関係、人格から学力まですべてを叩き込まれたのだ。

 あの超ドS女にである。

 超ドS女とは、おれに人体実験をしたマッドなサイエンティストの助手をしているメディアという名のクソ女である。

 メディアという名とは裏腹に、長い黒髪のロングでタレ目の純和風美女である。

 一見、おとなしそうな顔つきなのだけれど、その口から発せられるテポドン並みの言葉攻撃力は、まさに罵倒系の最終兵器彼女である。

 その名は、偽名であるとマッドなサイエンティストが言っていた。

 それは、まあ、一目瞭然なのだけれど、そのついでに本名まで言おうとしたマッドなサイエンティストをマッドSな助手は、拉致監禁し、三日三晩拷問したそうな。

 そんなかわいそうなサイエンティストこと、おれに人体実験をした張本人、侍ハゲの白髪と白衣とメタボは、ドクターミッテランという名のもぐりの医者だ。

 当然ながら偽名である。その世界では、有名人だったらしく本名は言えないそうだ。

 どうも、大学病院の教授まで登り詰めて、炎症性変化と誤診をして失墜したらしい。

 ふう、これがまさに説明ゼリフ乙の図である。

 ここで冒頭に戻りたいところなのだけれど、もうひとつだけ聞いてほしい。

 なんと、卓也っちは、将来のエリートたちが集まるの大学の2年生だったのだ。

 ちなみにおれは、自称尾崎豊推進委員会会長だったので、勉強に意味など見いだせなかったタイプである。いわゆる、15の夜タイプである。

 要は、バカというこの二文字に全てが凝縮されるのだ。

 そんなおれが超ドS女から勉強を教わったんだ・・・。

 おれが、バカだとわかった時の目の輝きを今も恐怖とともに覚えている。

 そんなこともあり、社会復帰するまでに2年半もの月日を要してしまったのである。

 

 地獄の2年半を耐え抜いたおれは、実に清々しい気分でキャンパスの前にたっていた。

 やっと、スタートラインに立てるのだ。

 それは、もう一度ゆかりと出会い、そして、もう一度ゆかりと恋をする為のスタートラインに。

 そんな決意と希望に満ちあふれていたのは、おれがイケメンになってから3度目の冬が始まろうとしている秋の終わりのことだった。

 おれがキャンパスに足を踏み入れた瞬間、キャンパスの空気が変わるのがわかった。

「あれ、井村くんじゃない。」


「帰ってきたんだ。やた。」


「やっぱり、かっこいいよ~」

 とか、モブどもが騒ぐ騒ぐ。

 そう、設定では、井村卓也は、留学から帰ってきたということになっている。

 本当は、留学期間は、1年だったのだけれど、おれの頭があまりに尾崎っていたので、期間を延長してもらったらしい。

 当然ながら、クソ女は、そのことについてなにも言わなかったのではなく、嬉々としておれを罵っていた。

 ほろ苦い記憶だったが、今おれは、黄色い歓声の中にいる。

「全くしょうがない奴らだな。お前らこそ、正真正銘のうる星やつらだな。」

 と思わず心の声が出てしまったのである。

 自分でも失笑したくなるくらいのセリフなのに反応がコレだ。

「きゃ~、かっこよすぎ~!」


「超クール!!」


「わたしをゲレンデに連れてって!!」

 おまえら、イケメンに対して甘すぎないか?

 ここに来る途中に道を聞いた時もそうだった。

「そこを右にまわって、2本目の角を左です。大丈夫ですか?宜しければ、私も一緒についていきます。一生」

 と瞳を潤ませながら言われましたよ。

 これが俗に言う美徳というやつなのか。


 あまりのイケメンフィーバーにおれは、調子に乗った。

 昔、金持ち4人組と1人の少女のドラマが放送されていたことを覚えているだろうか。

 そのドラマの中に主人公の言葉で「どけ!ブス」と言う台詞があったことを思い出したのだ。

 過去のおれはブサメンでその資格はなかったが、今ならどうだろうか。

 これは、もう試すしかないね。

「どけ!ブス」

 モブの1人に言ってみた。

 すると、

「きゃ~、卓也くんが話しかけくれた。もう、一生の思い出だよ。」

 卓也マジパネェ。

 しかもこれは、超キモチいい。

 そんなおれは、ますます調子に乗った。

「いいか。家畜の分際で人間話しかけるな。養豚場かここは。」

 さあ、どうでる。モブの諸君。

「怒ってる卓也くんもス・テ・キ!!」

 や、やべぇ、なんもいえねぇ!

 拝啓、父さん、ぼくは罵倒系が癖になりそうなわけで。

 おれの増長がとどまるところを知らない。

 すると、携帯が鳴った。

 盗聴器で一部始終を聞いていたメディアからの呼び出し電話だった。

 その結果、おれは土下座して説教を喰らうハメになるのだった。


 次の日は、完全に卓也モードで大学へと向かった。

 キャンパスを闊歩するとあいかわらずの黄色い歓声。

 だが、今回は卓也モードで対応する。

「やあ、こんにちは。今日もいい天気だね(キリッ」

 卓也モードは、仙人モードと同じで長く続かないのだ。

 すると、メディアさんからの怒りのメールがすぐに届いた。

「ふざけてたら、ちょん切りますよ!イラ☆」

 おれは、スグに返信した。

「了解しました。ぴしぃ!」

 と返してスグに電源を切ってやった。

 おれは、自由になれた気がした。

 するとキャンパスの向こうからおれに向かって歩いてくる女がいる。

 その女は、周囲のモブたちとは明らかに違うオーラを身に纏っていた。

 

 そいつの名は、アリサ。

 卓也とは、友達以上恋人未満の仲である。


 


 

 

 

 

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