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片恋の、その先へ  作者: 過去形
信彦の家族
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行方不明の真相 side信彦02

(・・・いた!)


坂に入って少しして、俺は秋津の姿を捉えた。

疲れたのか腰に手を当てながら歩いていた。


今こそ追い抜くチャンス。


少し上がった息を、意識的に呼吸することで整えて走る。

追い抜くその時に、秋津がいつもするみたいにニヤリと笑ってみた。


「・・・何それ、なんかムカつくんだけどその笑顔!」


仕返しには成功したようだ。


秋津も走り出した、その足音が聞こえた。


「まてぇこうのー!」

「待てと言われて誰が待つかー!」


疲れてヘロヘロの声に言い返してさらに走った。


(・・・なんか、楽しいな)


さっき気まずい沈黙に溜息をついていたのが嘘のようだ。


坂を登りきり、ラストスパートをかける。

もうここまでで足には結構きていて、ドタドタした全く格好よくない走りだったけれど。


「っ到着!」


店の前で立ち止まり、膝に手をついて息を整える。


結構本気で走ったな・・・。いつぶりだろう。


額にじんわり滲んだ汗を手で拭った。


「・・・河野、君、女子相手だって、忘れてなかったか?」


後ろから恨めしげな秋津の声がした。

ゆっくり歩きながら近づいてくる。

途中から走るのをやめにしたらしい。


「ごめん。でもいきなりあの新ルール作ったの、秋津だし。負けると財布が」

「・・・あぁそうか。一人暮らしには辛いか」


言いながら秋津はドアを開ける。


カランカランとベルの音がして、いらっしゃいませーと、樹さんの声が聞こえた。


「こんにちは、樹さん。妹がお世話になったみたいで」

「あ、信彦くん。・・・来るな!少しでも近寄ったらこの子の命はないで!」


俺を見た樹さんは声を低くして俺の目の前に立ちふさがった。


広げたその手にはお盆。

腰にはカフェエプロン。

そしてなぜかサングラスをかけ始めた。


「・・・樹兄。誘拐犯ごっこ、終わり。全然怖くないし。大根役者にも程がある」

「ええ?!さっきの反省を踏まえて声もより低くしてみたのにー!それに、ほら!サングラスで怪しさもプラスや!」


キュピーンと決めポーズも決める。なんでそのポーズが目の所でのピースなんだろう。


「いや、そもそもエセ関西弁抜けてないから」


秋津が言った。


うん、根本的なツッコミはそれなんだけど、今は目の前のポージングに言及して欲しかった。

それとサングラスしても樹さんの場合、怪しいというより格好良くなっている。羨ましいな。


「うわ!忘れとった!・・・こんな時にも出てまうやなんて、俺もうネイティブやな!」


何故か嬉しそうな様子の樹さん。


「褒めてないからね。樹兄」


疲れた様子の秋津。

さっきまで走って疲れて、今度は精神的に疲れたようだ。


労う意味でポンと軽く秋津の方を叩いた。


その瞬間、樹さんから異様な気を感じたけれど、次の瞬間には消えていたから俺の思い違いかもしれない。


「あの、律子はどこにいますか」

「律子ちゃんやったら、奥でおやつタイムや。お腹すいてるっていう話やったから、軽くお昼もな」

「・・・すみません、本当に」

「ええって。それにしても、いきなり居場所がわからんって心配やったやろう?とりあえずは何もなくて良かったな、信彦くん」


にっこりと笑みを浮かべた樹さんに、俺は、はい、と気の緩んだ声で返事をしたのだった。



書き終わったあと読み返して、「なに追いかけっこしてんのこの子ら・・・」と、少し呆然としました。ウフフ、アハハという幻聴が聞こえる・・・。バカップルか。まだカップルというか片思い状態ですらないのに、恐ろしい子・・・!なんてね。

あと、明らかに樹兄さんは信彦を殺気を込めて見つめていました。一瞬だけですけど。

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