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片恋の、その先へ  作者: 過去形
試験の試練
54/75

運命の日side信彦

テンポ良く進めるため、同じ場面の片方の視点を脱落させたまま

進めることがあります。ご了承ください(ペコリ)。

期末テスト第一日目。

科目、世界史と数学Ⅱ。


俺は朝から憂鬱だった。

いつもよりも心なしか遅く家を出てしまい、少し焦りながら登校する。


テスト開始10分前に教室に着いた。


いつもと違い、出席番号順の座席だ。

俺は右から2列目の一番後ろ。秋津は教室の一番右端だ。

だから、前のドアから入った時に一瞬目があった。


「おはよう、河野」

「・・・あぁ、おはよう、ございます」


なぜだか敬語になってしまった俺に秋津はフッと笑って。


「大丈夫だ。緊張するな。いつもどおり、やればいい」


そう微笑みながら言われると、肩の力が抜けた。

どうやら相当緊張していたらしい。


「ふぅ・・・ありがとう秋津。頑張る」

「うん。頑張れ。絶対できるから」


そう言い交わして、俺は自分の席に着いた。


ここまでテストで緊張したのは久しぶりだ。もしかしたら、高校入試以来かもしれない。

あの時は両親の了解を取り付けようと必死だったから。


周りの席では直前の追い込みにみんな必死だ。

世界史の教科書や資料集、まとめたノート類が其処此処で見受けられる。


俺も授業のプリントを取り出した。


世界史自体はこの春から履修が始まった科目だから、今までサボっていた俺でも充分挽回できる科目だ。

何より先生が教壇の端から端まで歩き回り、黒板を利用しつつ、身振り手振りも激しく物事の流れを説明するという授業は、結構面白くて、勉強することはさほど苦痛でもなかった。


一通りプリントに目を通し、ややこしいカタカナ用語を確認したところでテスト監督の先生が入ってきた。

慌ただしくプリントなどをしまいこみ、筆記用具を準備する。


静寂に包まれる教室。


さて、試合テスト開始だ―――。







キーンコーンカーンコーン、カーンキーンコーンキーン―――


「はい、終了です。鉛筆おいてー」


先生の声に一斉にシャーペンの置かれる音が鳴る。


どうでも良い事だけど、シャーペンが主流の今になっても「鉛筆」っていうのは不思議だな。

と、テストに関係ないことにまで考えが及ぶのは、解答欄を結構埋められたからだろう。

ただ当てずっぽうで埋めるのではなくて、割と自信を持って答えられたから尚更。


でもここで油断してはいけない。『勝手兜の緒を締めよ』とは先人の有難い言葉だ。

まぁ、勝ったかどうかも現時点では分からないのではあるけれど。


次の時間は、運命の科目のひとつ、数学だ。

まだ明後日にももう一つの数学があるし、明日には数学より苦手な英語がある。

今日最後のテストに全力を出して、これからに勢いをつけたいところだ。


問題集と解答を出して、パラパラ確認する。


今回のテスト範囲のページは、少しくたりとして、めくりやすくなっている。

我ながら頑張った。

後は、本番でヘマをしないように、だな。


「よーし、もうすぐチャイムなるから、そろそろ準備しろよー」


教壇を見ると、この時間のテスト監督は加賀先生だった。

俺の方を見て、ニコリとする。いや、したような気がした。


・・・俺、期待されて、る・・・?


「・・・よし」


頑張らなくては。


回ってきたまだ裏返ったままの問題用紙を前に、気合を入れなおす。


キーンコーン・・・

「よーし、はじめ!」


その合図とともに皆一斉に問題用紙を表に返す。その音は教室いっぱいに響いていた。


「・・・!」


(え・・・!嘘!)


俺は自分の目を疑った。


(・・・解る!!)


どの問題も、見たことがある。解法が浮かぶ。


信じられなかった。

今までずっと分からなかったのに。


(やっぱり秋津の言うとおりにして良かった・・・!)


俺は自信を持って解答を書き始めた。


今回はいけるぞ。

そう確信した瞬間だった。


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