勉強@放課後の教室 side信彦 01
次の日、ちょうど放課後練習がなかったので秋津に勉強を見てもらうことになった。
俺と秋津のほかは誰もいない教室。
状況としては、秋津と会った始めの頃と同じだ。
「今日の授業内容はわかった?」
「・・・察してください」
俺はうなだれるしかなかった。
秋津はそんな様子の俺に、ふぅと溜息をついた。
「まぁ、高校からの編入組だから、厳しいのはわかるけども。高校に入ってからの英語の文法、ちゃんとやってないだろう?」
「ぎくっ」
「・・・見てたらわかるから、無理に口に出さなくていいぞ。・・・そうだな。文法を最初からやっていたら時間ないし、要はテストで点が取れればいいんだから・・・」
「なんかいい方法があるのか?!」
思わず身を乗り出して尋ねると、秋津は苦笑した。
「食いつくな・・・。あるにはある。というか、勉強の基本なんだけども」
「なに?」
「音読」
「へ?」
「ほら、よく言うだろ。『読み書きそろばん』って。その中の『読み』だ。昔の寺子屋では分かりもしない論語なんかを小さい子達が暗唱していたんだ。『しのたまわく・・・』ってな具合で。『門前の小僧習わぬ経をよむ』、『読書百篇、意、自ずから通ず』。英語も言語なんだからおんなじ。とにかく音読だ」
「い、意味もわからないのに?」
「そのための授業だろうが。・・・まぁ、いい。一回だけなら、解説しよう。ちゃんとノートに書いておけよ?」
「あ、ああ」
言われるがままにノートを取り出し、すらすらと流れていく秋津の文構造解析(これが大事なんだそうだ)と訳をひたすらメモっていった。
ここからここまでが主語、で、この部分が修飾語句。動詞は文の流れから常に過去形だから、この場合は過去完了形。
この文は一見長いからややこしく見えるけど、ほとんどが補語で最初は省いて考えればいい。
まずは、主語・動詞・目的語の関係を把握する。
五文型は大事だからちゃんと復習しておいて。
今回の範囲ではこの文法事項が新しく出てきたものだから、ちゃんと覚えて。
多分テストに出るだろうし。熟語もきちんと。・・・などなど。
「・・・すごいな、秋津」
「別に。予習しておくだけでかなり楽になるしな。・・・これでわかった?」
さらりとすごいことを言う。
予習をするなんてことは俺の意識に今まで上りもしなかった。




