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片恋の、その先へ  作者: 過去形
文化祭、その過程
41/75

LHR当日 side祥花 03

入室の時に声をかけて、鍵を所定の場所にかけて退室。

中学の最初の時こそ一々緊張したものだが、今は慣れたものだ。


職員室前に置いていた鞄を取って、正門に向かおうとした時だ。


「お、LHR終わったのか。お疲れ様」


階段のところで加賀先生と出くわした。


出張でLHRは先生なしで進めていたのだった。

生徒を信頼しているのか、なんなのか、加賀先生は割と(言い方は悪いが)放任主義なのかもしれない。

いや、だったら河野を構うことはしないだろう。


ちょうど良かった。

先生に今日のLHRの報告をしなければならなかったのだ。


私は加賀先生を引き止めた。


そういうことなら化学教員室に行こうと、一階のグラウンド側にある化学教員室に向かった。


この学校の校舎はH型で、東側には普通の教室、西側に特別教室が集まっている。

化学実験室と化学講義室は最もグラウンドに近い場所にあった。

おそらくは何か爆発でもあった時に避難しやすいためではないかと思っている。


「コーヒーでも飲むかい?」

「いえ、お気遣い無く」


なんでこんなまるでおうちに遊びに来ましたというような会話が成り立っているのだろう。


まあ、化学教員室のこの一角は雑多な荷物に溢れているせいで完全に加賀先生の根城と化しているわけなのだが。

山積みのプリント。分子模型がいくつか。ノートパソコンはずっと開きっぱなしで埃をかぶっている。それなのに、机の端には三脚とガスバーナーとビーカーの三点セットが鎮座している。


少しでも何かに当たれば大雪崩を起こしかねない状況の中、軽い身のこなしでテキパキと自分用のコーヒーを沸かしている。

その先生に、私は今日のLHRの内容を大雑把に伝えた。


「そうかそうか。一色さんはとても乗り気のようだね」

「はい。とても頼もしいです」

「僕は今年が初めてだからねぇ。右も左もわからないし、君たちが楽しんでやってくれれば、こちらからは何もいうことはないよ。何か担任が要ることがあれば遠慮せずに言ってください」


ドリップする形のインスタントコーヒーに湯を注ぎながら先生は言った。

はい、と返事をしてから帰ろうと踵を返した。


「あ、そういえば」

「はい?」

「河野君と一緒に主役をやるんだったよね?」

「はい」


振り向くと、先生はおいでおいでと手招きしていた。


なんだろう。

もう話は終わったと思っていたのだけれど。


その手招きに従って、先生の目の前に座った。


「それにしても、河野君が主役とは、ねえ?それも一色さんの提案?」

「はあ、まあそうですね」


先生はニコニコして楽しげだ。


「びっくりだろうね、彼は。いや、楽しみだよ、実に楽しみだ」

「先生、とても嬉しそうですね」

「ああ、うんそれはとても。最近彼はいい顔をするようになったよ。やはり君のおかげかな?」

「そんな・・・とんでもない」


私は別に何もしていない。

ただ話しかけられたら相手をしているだけで、まず話しかけることをしているのは彼自身の自主的なものだ。

言ってしまえば彼自身の努力によるものだ。私の手柄にはならない。


「いや、秋津さんの影響はかなり大きいと思ってるよ。これからもよろしくしてやって」


そう言って先生は笑って、コーヒーをそれはそれは美味しそうに口に含んだ。



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