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片恋の、その先へ  作者: 過去形
始まりはここから
22/75

遭遇そして side祥花 01

祥花サイドはちょっと短めです。

ある日。


家に帰ると、いつもよりなんとなく空気が騒がしい。

いや、騒がしいというか、誰か父以外の人がいるような感じがする。


お客でも来ているんだろうか。


トントンとリズミカルな音がする。


今日の夕食当番は父だ。

それじゃあこの音は父のものだろう。


廊下を通って台所を覗いた。

とりあえず声をかける。


「ただいま~」


こちらに背を向けて調理に専念しているのが見えた。


だが、その上背は明らかに父のものではない。

よく見ると制服だ。


そして気づいた。


「・・・・・・っ河野?!」


なんで家にいるんだ。


「っうわっ?!」


振り向いた河野の方が驚いた顔をしていた。


なぜ驚く。

ここは私の家だぞ。


「あ、おかえり~祥花ちゃん」


河野の後ろからひょっこりと顔を出したのは父だった。


河野の驚き様とは対照的に、いつもどおり、ニコニコしている。


「い、いやご、ごめんやっぱおれかえりますっ!」

「こーら、なにいってんの」


なぜかパニックに陥った河野が慌てて出て行こうとするのを父が後ろ首を掴んで引き止める。


まるで漫画の一場面のようだった。


河野は首がしまって苦しそうだ。


「で?どういうこと?」


河野は放っておいて、まずは楽しげな父に訊いた。


「信彦君と偶々スーパーであってね、一人暮らししてるっていうから、夕飯に招待しちゃった」


父はノリノリである。


正直のところ、またかと思った。


赤の他人を連れ込むことは今回が初めてだが、夕食時に従兄の樹を連れ込んだことは数え切れないほどあった。


父と娘の二人暮らしが長いせいか、父は食事時に人数が増えることを喜ぶ。


「…悪いな、河野。父はこういう人なんだ。…諦めてくれ」

「・・・うん」


河野はぜいぜいと呼吸を整えつつ頷いた。








食卓の上に器によそった料理を並べるのを手伝う。


河野はごつい見た目とは裏腹にテキパキと動いている。

私が普段使っているエプロンを着ていたが、裾が明らかに足りない。


全体的にピチピチだった。


私の視線に気づいたのか、照れくさそうに慌てて勝手に借りていたことを詫びる。


それは良いが、なんて言うか・・・似合っていた。


ちゃんとサイズがあっていれば、何の違和感もなかっただろう。

やはり一人暮らしだからだろうか。


そんな河野は、少し不思議そうに母の写った写真を見ていた。


テーブルの上に置いてある写真には、赤ん坊の私とそれを抱えた母が写っている。


お母さんはどうしたんだと聞くから、私が小さい時になくなった、とだけ答えた。


それ以上は踏み込んで聞かれなかったので、ホッとした。


できるなら、あまり話したくはない。


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