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5 緋色の扉

 ここは無限回廊、生を終えた魂が希望を抱え訪れる場所。今日も1つの扉をノックする音がする。


 コン、コン、コン! 


 「……………」


 コン、コン、コン!


 魂の訪れに扉の中の反応がない。


 「あら、留守かしら?」

 

 扉をノックしたのは大ネズミ系の鬼天竺鼠獣人。可愛らしい小さな丸い耳がピクピク動く。やはり中からは何も音がしない。


 しばらくして獣人は赤い扉をビクビクしながらも、ゆっくりと押す。


 ギィ~~。


 そこには、しばらく誰も訪れていないのか埃っぽい部屋が現れた。


 「お邪魔しまーす。あれ? やっぱり誰もいない。そんな扉が有るなんて初めてだわ」


 彼女は興味津々で部屋の中を物色し始める。しかし、彼女が動けばホコリも舞う。


 「くしゅんっ、うわー凄いホコリだわ。これでは中をゆっくり見ることもできない…ここは、生活魔法を使って…」


 『クリーン』『クリーン』『クリーン』


 たちまち部屋のホコリは消え、心なしか部屋全体が明るくなったように見える。

 

 「だいたい綺麗になったわ。テーブルの上に本があるけど。何々?~火山の多い世界へようこそ~。本のタイトルかしら」


 彼女は綺麗になったソファに座り本を読んでみる事にした。


 「へえ~、この本によると奥の扉の先にある世界は、火山が多く野菜や果物が美味しく育つと、なるほど、私の好きなイモ類も豊富なのね。なかなか良い世界じゃないの」


 本をペラペラめくりながら、ある1ヶ所でページを止める。


 「うそ、世界中で温泉が湧き放題なの? 暑いのが苦手な方は注意ですって、特に氷の精霊は存在出来ないので転生時には気をつけましょう…転生後に即死します…か。種族を選ぶ世界なのね」


 彼女は本を抱きしめて、うっとりする。


 「やだ、鬼天竺鼠獣人にとってのパラダイスって、ここの事では?! なんて素敵な世界なのかしら」


 ソファから立ち上がった彼女は他に情報となるものがないかと部屋を歩き本棚に向かう。そこには、他の扉の世界の情報紙が並んでいた。


 

 「あまり、興味深いものがないわね」

 

 彼女の目が他と異なるデザインの本で止まる。


 「あなたも管理人になれる《資格スキルの取得方法の全て》…何これ、もしかして私でも管理人になれるの?」


 思わず、ごくりと喉を鳴らす。


 「他の世界の扉に埋もれてしまっている、この素晴らしい火山と温泉の世界を…他の(たましい)に教えてあげられる。この素敵な世界を伝えたい!!」


 両手の拳を握り彼女は決意した。その後は早かった。


 カウンターらしき物の引き出しから、管理人契約書の紙を取り出し注意事項を見て必要な魂のポイントの確認。全てに問題が無いことを再度確認して、その紙にサインをした。


 その瞬間、彼女の魂からポイントが引き抜かれ、ステータスに新たなスキルが記載された。



名前 ラータ

種族 鬼天竺鼠獣人

魂pt 350pt

レベル ※※※(レベル制の世界でのみ解放)


職種 火山と温泉の世界No110260の管理人


スキル 生活魔法 ステータス 料理 

    魂の記憶 ptの管理全般  

   


称号  なし


 「うわー、ptの管理全般のスキル1500ptも消費した。正直、衝動的に管理人になってしまったわ」


 やってしまった感の雰囲気を自ら打ち破る。


 「でも、定期的に安全に収入(ポイント)が入るから、確実に魂ポイントは貯められる。それに退職時にはptの管理全般のスキルが消える代わりに消費したポイントが戻ってくるらしいから、意外と良い判断だったのかもしれない」


 ラータは自分の行動を肯定する。

 その後、何と無しに身支度をすると、緋色(ひいろ)の扉を叩く音がした。


 コン、コン、コン!


 「はーい! どーぞ」


 彼女は明るく声をかけた。


 扉を叩く者に対して今度は返事をする者がいる。


 緋色の扉の管理人。




 もし、あなたが誰もいない部屋の扉を見つけたら管理人になってみるのは、どうでしょうか? 安定した高収入を得られますよ。



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