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4 招かざる者

 ここは無限回廊、多くの魂達が新たなる世界へ旅立つ場所。今日も希望を抱えた魂が扉をたたき、その扉を開ける。



 コン、コン。


 空色の扉の管理人が客を招き入れ相手にソファをすすめる。そして彼は本棚にあるファイルから真新しいパンフレットを取り出しテーブルに並べた。


 それでは、こちらをご覧ください。最近できた転生おすすめプランです。ええ見ていただくと分かります。こちら大変お得になっております。個別で選択するよりも多くのポイントがうきます。


 期間限定プランですので、次にお越しの際はあるか…どうか? ええ、そうですね。3つのプランに分かれています。


 ●長期滞在型プラン→(貴方も憧れの長命種族になって世界をのんびり探索しよう。エルフやドラゴン、精霊にもなれます。※孤独耐性のある方、推奨)

 消費魂pt 500pt


 ●一般滞在型プラン→(安心安全凡人の生活。普通の寿命、普通の日常、平凡な家庭に誕生します。波乱万丈とは無縁の生活を貴方に贈ります。※ただし戦争に巻き込まれた場合の保証はされません)

 消費魂pt 250pt


 ●短期滞在型プラン→(自然豊かな森を獣の姿になって果物や肉を狩りをしよう。食べたい時に食べ寝たい時に寝る。緑に囲まれた怠惰な生活を貴方に…低コストで生まれ変われます。※ただし身を守るスキル所持必須)

 消費魂pt 125pt

 


 私は3枚のパンフレットを見せて客の様子を伺う。うーん、反応がいまいちですね。どうしてでしょうか…。


 よく観察してみると(たましい)は肌の表面にエメラルド色の美しい鱗がチラチラ見えます。

 これは1回、長寿種の竜系種族を経験してますね。アプローチを変えますか…。


 私は机の引き出しから新たなるチラシを取り出す。それで先のパンフレットをサッとよけてテーブルに置いた。


 こちらは最近人気の世界なのですが…ただ、残念ながら私が担当する世界ではないのです。

 はい、本当に残念ですが


 管理人は癖っけ茶髪の前髪をかき分け、開いているかわからないような糸目をよりいっそう細めた。


 はい、()()()の世界です。なるほど魔族になりたいのですか? ここならぴったりです。ダンジョンも魔道具もあります。


 そうなんですか? 魔族で最強になり魔王を目指したいと素晴らしい目的ですね。久しぶりに夢のある、お話を聞かせていただきました。


 ええ、こちらの部屋では手続きは出来ないんです。今から部屋の横のあちらのグレーの扉を担当の部屋につなげます。


 管理人は上機嫌で何か呪文を唱えグレーの扉へ指を向ける。すると、薄暗い扉の色が鮮やかなモスグリーンに瞬く間に変化した。


 なれたもので管理人の動作がやけにスムーズで(たましい)は流れるように誘導され、その扉の向こう側に消えていく。



 あれ? チラシがない。


 持って行ってしまったのか…1枚しかないのに仕方ない。また暇な時に作るか。


 今日もサクッと仕事を終えた。

 ひと仕事後のティータイム。甘いチャイの香りが身体を包み込むようで美味しい。


 ああ…リラックスする。やっぱり疲れた時は甘いものですね。


 私は暇な時間ができたので先日釣った魚の魚拓を広げ眺めていたんです。だって管理人になってからの初めての大物です。自然、顔にニヤニヤ笑みをうかべます。


 そのまったりとした時間を壊すように邪魔する音がします。


 ドンドン!ドンドン!


 無視をしていると音がしだいに大きくなってきました。うるさいですね。 


 ドコン!ドコン!ドコン!


 私は大事な魚拓を丁寧に、それでいて素早くまとめる。そして、それに渋々返事をかえした。すると扉から 中肉中背のスエット上下の男が飛び込んで来た。額には1本の立派な角が鈍く光っています。


 「おい、お前!どういうつもりなんだ」


 男は乱暴に部屋を歩きズカッとソファに腰かける。そして、手に持っていた紙をテーブルに叩きつけた。


 バタバタとうるさいですね。そんなに怒鳴らなくっても聞こえます。静かに喋って下さい。


 ああ、男が持っていたのは、さっきのチラシですね。モスグリーンの間の世界の情報をのせたやつです。これは不味いですね。私が故意に(たましい)をゲームの様な世界に誘導していた事がばれました。とりあえず、ごまかします。


 はい、あれは、お客様に分かりやすく話をする為にお客様の要望で…ええ、たまたまゲームに似た世界、そうです。レベル仕様の世界を他に知らなくってですね。


 柄の悪いスエットの男はモスグリーンの扉の間の管理人で私は奴に必死に悪気が無いことを説明します。ですが男の怒りが収まるところを知らず、足をテーブルに打ち付けるようにのせる。


 ダン!!


「いいか、お前が俺の部屋に何人も客を誘導するから俺はゲームが出来ずにいた。見ろ、この手を! 禁断症状のふるえだ!」


 ああ、本当に震えていますね。ゲームできなかったんですね。申し訳ないです。はい次の客からは必ず別の世界を調べて…ああ、だからぶたないで下さい。


 男は震える手を握りしめ拳を振り上げ。そして何かを耐えるように言う。


 「いいか、最後にもう1つ」


 はい、なんでしょうか?


 「お前、あやまる時ぐらいは口を使え。仕事中もプライベートも()()のみって、それはないだろう…」


 「あっ! はい。申し訳ないです。念話が楽なんで口を使うの忘れていたみたいです」


 空色の扉の管理人はモスグリーンの扉の間の管理人にきちんと口で謝罪した。


 「便利すぎるスキルも問題だな」


 男は謝罪を受け取ると明日から有給休暇をとるむねを伝え足早に扉から帰っていった。

 

 念話、正直言って楽なんですよね。声だと聞き取り間違いとか聞こえないとか言われる事もありますし、念話なら直接、魂に語りかける事が出来るので確実なんですが…仕方ないです。


 残されたのは、ぐちゃぐちゃになったチラシと少しだけ反省した私です。



 これからは念話の仕様を少し控えますね。






 

 

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