3/44
第三話「そなたとの婚姻を破棄する」
彼は立ち上がり、ゆっくりと宣告した。
「本日をもって、そなたとの婚姻を破棄する。王妃の座を返還し、ただちにこの城を去れ」
静寂。誰もが息を呑んだ。
アデリアは、ゆっくりと目を閉じた。そして、開いた。淡い青の瞳に、涙はなかった。
彼女は立ち上がり、深く、優雅に一礼した。
「……承知いたしました」
その声は、静かで、どこか安堵に満ちていた。
「王国の永い安寧をお祈りいたします、陛下」
誰もが息を呑んだ。逆らわないのか。抗議しないのか。泣き叫ばないのか。ただ、静かに受け入れるだけなのか。
ユリウスは、一瞬、目を逸らした。
ラウラは、勝ち誇ったように微笑んだ。
そして護衛の騎士たちが、アデリアを取り囲む。
彼女は振り返ることなく、背を向けた。銀金色の髪が、朝の光に最後に輝いて。王妃としての、最後の姿だった。
お読み頂きありがとうございます!少しでも楽しんで頂けたら、評価やブックマークを頂けると励みになり嬉しいです!




