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リラは部屋で夕食をとった後に、ノアール王子の私室に呼ばれた。



ミーアに身支度を整えてもらい、部屋の外に出ると護衛がノアール王子の私室まで案内してくれた。


ノアール王子の部屋の扉は両開きになっていて、扉の前には護衛が左右に一人ずつ立っている。

護衛がノックをして入室の許可を取り、リラは中に入る。



ノアール王子の私室の壁紙は、ベージュに金の糸で花の模様の刺繍がしてある。


室内には大きめの窓が3つとバルコニーがあり、それぞれの窓から出れるようになっている。

ベッドの側には出窓があった。


窓にはベージュを基調としたドレープカーテンにライトグリーンの小花が刺繍されている。

内側にチュールレースのカーテンを左右に束ねてある。


今は春で暖炉は使われていないが大理石の暖炉がベッドの足元側にあった。


天井の照明も温かみのある色で、全体的に豪華だが落ち着いた印象の部屋にしてある。



家令のシュリップがリラにベッドサイドに置いてある椅子を勧める。

「リラ王女殿下、こちらにどうぞ。」


リラがしずしずとベッドサイドまで歩く。


天蓋付のベッドにはベージュに金の刺繍が施されているドレープカーテンと、レースがふんだんに使われているカーテンが重ねてあり支柱で纏めてある。



ノアール王子は、ヘッドボードに重ねたクッションを背もたれにして上半身を起こしていた。



リラはカーテシーをして挨拶をした。


「トゥアキス王国第3王女リラ・ズィルバーン・トゥアキスと申します。」


「先程はご挨拶もせず失礼いたしました。ノアール王子殿下お加減はいかかでしょうか?」



「ブラオ王国第2王子ノアール・シュテート・ブラオだ。」

「リラ王女殿下…ありがとう、あなたのおかげでこうして起きあげれるまでになったよ。改めて、助けてくれてありがとう。」


ノアール王子が5本の指を揃えて手のひらを椅子に向けて座るよう促す。


「椅子にかけてくれ。まだベッドから降りる許可が得られずこんな形でお礼を言うことを許して欲しい。」



「とんでもございません。」

リラは軽く頭を下げて椅子に腰掛けた。




今回の政略結婚は、トゥアキス王国の資源が欲しいブラオ王国とブラオ王国の発展した技術が欲しい二国間の思惑によって調えられたものである。



厳格な身分制度があり今だ開発途上のトゥアキス王国を、ブラオ王国は格下に見ていると事前に聞いていたがノアール王子の丁寧な物腰にリラは安堵した。


ノアール王子が前髪で隠れているリラの瞳を覗き込もうとじっと見つめる。


家令の咳払いでノアール王子がハッとして、居ずまいを正した。


「そうだ…紹介がまだだったな、この者はこの城の家令でシュリップという。」


リラがシュリップの方を向いて目礼した。

「シュリップ、こちらに滞在中お世話になります。」


家令が両手を腹の前で組み頭を下げた。

「リラ王女殿下、ご挨拶が遅れたこと申し訳ございません。御用の際はいつでも申し付けください。」



「私としては、命の恩人のあなたと早々に婚約発表をしたいと考えているがどうだろうか?」


ノアール王子からの願がわしい提案にリラは口元が綻びる。



「結婚式などは日程調整が必要だな、トゥアキスの両陛下にもお越しいたただくことを考えると1年後ぐらいか。」

ノアール王子が家令に確認する。


「それぐらいが妥当だと思います。」

家令がノアール王子に賛同した。


「国内に向けての婚約発表はもう少し早くてもいいでしょうが、諸外国には婚約披露パーティの招待状を急ぎ準備して周知いたしましょう。」


「そちらの手配はシュリップに任せる。」


家令はノアール王子がリラを好意的に見ていることに安堵した。



リラもノアール王子が婚約を好意的にとらえてくれていることがわかりホッとした。


「ノアール王子殿下の心遣いに、感謝いたします。」


リラはこの縁談がまとまらなければ、なんかしらのペナルティがあっただろうことを考える。



リラの頭に人魚姫の物語がチラつく。


(ここで、人魚の話をするべきなのか…頭がおかしいと思われるかしら……)


(物語的には、本当の命の恩人が人魚姫だと王子は知らずに、王子を見つけただけの隣国の王女と婚姻するのよね。)


「リラ王女殿下どうしました?」

ノアール王子が考えごとをして黙ってしまったリラに声をかける。


「申し訳ございません、ノアール王子殿下との婚約を実感して感極まってしまい…つい心ここにあらずになってしまいましたわ。」


リラは笑顔を作った。

「長居しては、ノアール殿下のご負担になってはいけませんのでわたくしこれで失礼いたしますわ。」


「リラ王女殿下、医師の許可が出たら食事でも一緒にどうかな。」


「はい、お誘いをお待ち申し上げます。」


「一ヶ月後に、国内だけでも先に周知をしようと考えているがあなたは大丈夫だろうか。」


「もちろんでございます。どうぞよろしくお願いいたします。」

リラはそのまま退出の挨拶をしてノアール王子の私室を出た。




リラは護衛と共に与えられた客室に戻る。


ミーアが心配して出迎えた。

「リラさま、王子殿下のお話はなんでしたか?」

「婚約の話よ、うまくいきそうだわ。」


リラはベッドに腰掛けた。


「良かったですね!」


「そうね、ノアール王子殿下もとても優しい方のようだし、うまく運んでよかったわ。」


「リラさま、この国はトイレが水洗化してて本当にすごいですね。部屋がずっといい匂いですよ〜。」

「トゥアキスと違って、匂いを気にしなくてよいと言うのは本当にいいです!」


リラも笑って答えた。

「香水の匂いも、きつくないしね。」


「リラさま幼少の頃から香水が苦手でいらっしゃいましたもんね。」








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