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ヴァイヒ王女とグラッセン王妃は一ヶ月ほどヴァイス城に滞在した。

ライア王太子はグラッセン王妃の読み通り、ヴァイヒ王女によってうまく手懐けられており、帰国の際はライア王太子がトゥアキスに付いて行くと言ったほどだ。


2人は一年後に婚姻するようだった。

それまでの婚約期間は、お互いの国を行き来するように約束をしていた。


上下水道工事も平行して行われることに決まった。


ブラオ元国王は退位して、元王妃と領地でのんびり過ごすことになった。


ノアール王子とローザはヴァイス城で今まで通り暮らし、こちらも一年後に婚姻の運びとなる。

ローザは形だけ一週間は寝たきりを演じていた。



「もう出立するのか?」

ノアール王子とローザが桟橋に見送りにきていた。

「早く、リラを国に連れて行って父に紹介したいからね。」

アーベントがリラの腰に手を当ててタラップに上がる。


「また会える?」

ローザがローズクオーツの瞳を瞬かせた。

ローザの目が、前世の記憶がある者通し仲良くしようと言っている。


ローザは、婚約をもって呪いが解けたことにしたらしい。


ローザの鈴のなるような声に、ノアールの愛がさらに深まってうっとおしいほどだと言っていたのをリラは思い出す。


リラはその時のローザの様子を思い出して可笑しくて笑った。


「使用人の、わたくしへの偏見を全て解いておいてくださいね。必ずまた遊びに参りますから。」


「それは、本当に済まなかった。」

ノアールがバツが悪そうに謝る。

このことについては、もうアーベントからたっぷり苦情を言われていた。



「じゃ、そろそろ行こうか。」

アヴィがリラを促す。


「気を付けてね。」

ローザがリラの手を握った。

リラも握り返す。

「手紙を書きますわ。」




2人は船に乗り込む。

デッキから出航を見送ってくれるノアール王子とローザ、使用人達に手を振る。


船は波の上を滑るように進んだ。

見送りの者たちの姿が見えなくなってから、アヴィがリラの耳元でささやく。

「早く最上階のぼくの部屋に行こう、覚えている?」

「ええ、出航したらバルコニーから海を見てみたかったの。」


エレベーターで最上階に上がる。


アヴィがシャツのポケットからカードを出してタッチして扉を解錠した。


頑丈そうな見た目の扉が自動で開く。



「おかえりなさいませ。アーベントさま、リラさま。」

家令がお腹のところで両手を組み、お辞儀をした。


アヴィが家令に伝える。

「2人にしてくれないか。」

「かしこまりました、ご入用の際はお呼びください。」

家令が退出した。


「国に戻ったら、直ぐに婚礼の準備をしよう。君の両親も招待して。」

「そうだった、君の侍女はこの下の階に部屋を用意して自由に過ごしてもらってるから、後で呼んであげるといい。」

「本当に堂々とブラオ王国を出れましたわ。」

リラが微笑む。



アーベントがリラの腰に回した手をさらに自分の方に引き寄せて、リラの耳に軽くキスをした。


そのまま、部屋の右手前にある3人掛けの白の革のソファに誘導してリラを座らせた。


アーベントが、リラの座ったソファの背に手をついて、リラを閉じ込めた。



「リラ、愛しているよ。」

「アヴィ…わたくしも。」

リラが瞳を閉じた。



アーベントがリラを見つめて、ゆっくり顔が近付き触れるだけの優しいキスを唇にした。


そのまま角度を変えて、ついばむように何度もキスを繰り返して、そのまま押し付けるような激しいキスに変わる。


リラの息が上がったのを見て、アーベントが一度唇を離してタンザナイトの色の瞳を細めた。


それを見てリラも目を細めて、アヴィの唇に指先を這わせる。


「アヴィ…お手柔らかにお願いね。」

「じゃ、気分転換にバルコニーに出よう。」


リラとアーベントは窓を開けて、バルコニーに出た。

海風が、リラの髪をなびかせる。


どこまでも続く海を見ていたら水面が光りに反射して眩しい。


「アヴィ…これは色付きの眼鏡があった方がいいわね。」

「ぼくのを掛ける?」

アーベントがリラを側に引き寄せて抱きしめる。

リラが甘えた口調で頼んだ。

「今度わたくしにも作って。」


リラが波を見ていると、遠くの方で水しぶきが上がった。

リラには銀色の影が見えた気がした。



(やっぱりここは人魚姫のパロディだったのかしら?)

(でも、ちっともストーリー通りじゃなかったわね。)



リラはアーベントの胸元に後頭部を付け寄りかかって海をしばらく見ていた。











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