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来場していた者が散り散りになって帰って行く。


「グラッセン王妃陛下、場を移しましょう。」

アーベント王太子が口元だけ微笑む。

「話が早くて助かる。」


そのまま、4人は大広間の隣にある休憩室へ移動した。

休憩室は大きめの窓に落ち着いたベージュのカーテンが掛けられている。

3人掛けと2人掛けのベージュの革製のソファが置いてある。

ソファの間に円テーブルが置いてあり、家令がそれぞれが座った目の前にお茶を淹れたティーカップを置いた。


最初に、アーベント王太子が口をつけてからグラッセン王妃に勧める。

グラッセン王妃がティーカップを優雅に指先でカップの取っ手をつまみ口付けた。


ティーカップをソーサーに戻してから、ゆっくりとした口調でリラに話しかけた。


「リラ、お前のその姿…若かりし頃のクライノートにそっくりだ。」

グラッセン王妃の目が優しく細められた。


「ずっと幼き頃より姿を偽らせていたので、今日見るまでお前がこんなにクライノートとそっくりになっていたとは…」



「あれは姿形が美しいだけではなく、私の心を慰めてくれる存在だったよ、あの男が私の目を掠めて手を付けたのを悔やんでおったが、お前を見て溜飲が少しさがったよ。」


グラッセンがティーカップをソーサに戻した。


「リラ、私の思惑に間違いはないのだろう?アーベント王太子殿下と心を通わせておるのだろう、アーベント王太子の妃なら国として誰も文句はない、トゥアキスの代表として祝おう。」


「クライノートには私から伝えておくよ、幸せそうだったとな。ノアールに他に女がいると影が伝えてきたから心配していたからね。」


(王妃は敵ではなかったのね……)


「グラッセン王妃ありがとうございます。王妃の心遣い、いたみ入ります。」

リラが深く頭を下げた。

グラッセン王妃が目を細めリラを見てから、アーベント王太子に向き直った。


「さて、交渉事といこうか。」


「ヴァイヒをライアの妃にしてもらおう。」


隣に座っていたヴァイヒが目を丸くする。

「お母さま!?」


「もとより、ブラオからは第一王女をと打診されておったのだからな。リラがグリュック王国に嫁ぐならお前がブラオ王国に嫁ぐんだ。」


「政略結婚は王族の仕事だ。」


「受け入れなさい、ライアはああ見えて御しやすい男だ。ノアールとずっと比べられてきているから、見た目にコンプレックスがある。認めて優しくしてやれ、必ずうまくいく。」


ヴァイヒは、グラッセンの目を見てもう決定事項だと知る。

「何日間か滞在して思ったが、このヴァイス城でこんなに住みやすいのだ。王都の城はもっと快適だろう。」


「下水道事業をトゥアキスにもたらしてくれ、いいなヴァイヒ。」


その流れを見てアーベントが提案した。


「では、グラッセン王妃陛下の先ほどの協力の対価に、下水道工事の資金をグリュック王国で持つことにしましょう。」


「グラッセン王妃の功績になるでしょう。」


グラッセンがアーベントを褒めた。

「流石だ、次期国王は話が早いな。」


「では、もう一つこれは私の個人的な願いだ。」


「なんでしょう?」


「グリュック王国は一夫一妻制だったな?ブラオも法律でそうしてもらえると嬉しい。ヴァイヒを送り出す母としての願いだ。」


ヴァイヒが目を見開いた。

「お母さま……私頑張ります。」


リラもヴァイヒと同じでグラッセン王妃の子を思う母の心に胸を打たれて自分からもお願いした。


「アーベント王太子殿下…」

リラがアーベントを見つめて、アーベントもリラのレッドダイヤモンドの瞳を優しく見つめる。


「リラ、いつものように呼んで。」

「アヴィ…」

「何かな?」

アーベントの声が優しい。

リラが胸の前で両手を組んでアーベントを見上げてお願いした。

「グラッセン王妃の願い…わたくしからもお願いします。」


「フフ…そうだね、かわいい婚約者の頼みでもある。人肌脱ごう。」


話が国王抜きで話が進んでいくことに、あのグラッセン王妃がなんの疑問も持たない。

リラはグリュック王国の及ぼす力を肌で感じた。




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