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会場中にブラオ国王とライア王太子のやり取りが響き渡る。
アーベント王太子がリラのそばに来て腰を抱く。
家令がさらによく通る声で言った。
「ブラオ国王陛下が計画を遂行せよと仰せでしたので実行したまでです。」
「使用人一同、皆陛下の計画の通り動きましたが。」
ブラオ国王が家令を責めるように怒鳴りながらテーブルを叩いた。
「私は中止と言ったぞ!」
ライアも同調した。
「ホワイトローズの娘なら、私の妃に欲しいぐらいだ!罪人になど落とすわけがなかろう。」
ナハト王国とノイエルの王国の王太子が貴賓席から立ち上がった。
「では、ブラオ国王陛下はリラ王女殿下を罪人に仕立て上げる計画を立てていたということですか。」
「ホワイトローズの娘だと知って急遽中止したが、家令がそのまま実行してしまったと。」
この茶番劇にナハトとノイエルも絡んでいることを、権力の移り変わりに敏感なグラッセン王妃が気付きすぐにそれに乗り言った。
「リラを、アーベント王太子殿下の婚約者にと先ほど直々に打診をされたぞ。あのグリュック王国の次期王妃になるやもしれない者に殺人罪の汚名を着せようと画策されておったのか…」
「どう責任を取るおつもりか、ブラオ国王陛下。」
「リラ王女殿下がアーベント王太子の婚約者だと!?聞いてないぞ!」
ライア王太子がグラッセン王妃に食って掛かる。
グラッセン王妃は全く取り合わずに話を続ける。
「ライア王太子も計画に加担していたようだが…」
「まさか、リラに殺人罪をなすりつけその責任をトゥアキスに取らせるつもりで画策していたのではあるまいな。」
ライア王太子が、青くなりリラの方をちらっと見た。
リラは、ライア王太子を見ないようにした。
アーベントが苦笑した。
ブラオ国王の立てた謀を逆手に取って、ナハト王国とノイエル王国の王太子にグラッセン王妃のセリフを言わせるつもりだった。
さすがトゥアキスの遣りての王妃、すべてのシナリオを読み先手を打ってきた、とアーベントは思った。
しかも、トゥアキスの第三王女よりアーベントの婚約者に仕立て上げた方が、確実に大事に持って行けるとこの瞬時に判断したようだ。
「よかったのう、ブラオ国王陛下にはノアール王子殿下がおる。跡継ぎがいなければ国が乱れるところだったな。」
王妃がライアも一緒に更迭しようとしていることに気付いてブラオ国王が覚悟を決めた。
嵌めようとしたところを逆に嵌められてしまい、自分達の負けだと悟った。
ブラオ国王は、力が抜けて椅子に掛けた。
「すべて、私の独断でやったことだ。ライアは関与しておらん。」
「私は責任を取り退位しよう、緊急時だ。ここでライアを国王とすることを宣言する。」
「父上!」
グラッセンがゆったりと構え微笑む。
「ブラオ国王どのは、領地でゆるりと過ごされるがよかろう。」
グラッセンがブラオ国王の最後まで仕切った。
ブラオ元国王が、ライアの肩を一つ叩いて衛兵に囲まれて退出した。
ライア王太子は動揺を隠せなかった。
それを見てグラッセン王妃が会場にいるもの達みんなに聞こえるように声を張った。
「ローザさまの状況も気になるし、ここはもうお開きだ。」
その場にいたものが皆グラッセン王妃の言葉に従う。
(すごい影響力だわ、さすが王妃…)
「アーベント王太子殿下、リラ。」
圧倒的存在感を放ってグラッセン王妃が2人のそばに近付いてくる。後ろにヴァイヒもついてくる。
「さ、予定外のお方のご尽力を賜った。今から交渉開始というところか。」
「リラは、私の側に。」
「必ず守るから。」
アーベントがリラに耳打ちする。




