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3日後、トゥアキスからグラッセン王妃と第一王女ヴァイヒが予定通りヴァイス城に着いて居館の西棟に入った。


トゥアキス側では、情報が錯綜していたので婚約パーティーの参列と聞いて王妃はご機嫌でヴァイス城までやって来た。



居館の西棟には、ブラオ国王と兄で王太子のライアも宿泊していた。

こちらも、ヴァイス城に到着してから、ホワイトローズと噂されている第一王女が来ていると知って浮足立っていた。


昼食後に家令は最終打ち合わせをするために、国王の居室を訪れる。


「シュリップ、毒は少し気分が悪くなる程度のものを用意してあるな?」


「はい、一口で2日ほど効くと思います。」

シュリップは、あえてどういう作用を引き起こすかは口にしない。


「2日か…もっと軽くてもよいが、まあ…あまり早く回復すると交渉しにくいだろうからな。」


「ノアールのやつが命の恩人とやらと婚姻したいなぞ言い出さなければ、こんな面倒なことをせずともよかったのにな。」


「ただ、なかなか表に出ることのなかった噂の『トゥアキスの歩く宝石』の娘が見れる。こんな機会は無い、ライアうまくやりなさい。」


計画の最終確認のために国王の部屋を訪れていたライアに話を振った。

「父上、もちろんです。」


「こちらの意向としては、第3王女のしでかした代償に、第一王女との婚姻と鉱山資源を要求しよう。下水道事業もこちら主導でいけば我が国の利益になるだろう。」


「そうですね、こうなるとノアールに感謝ですね。」

ライアが熊のような大きな巨体を揺らしクツクツと笑った。


ライアはブラウンの髪に黒の瞳で、太ってはいないが体ががっちりとしてかなり大きい国王譲りの見た目だった。

昔から、ノアールがしなやかな体型で女性にモテることもあり、見た目にコンプレックスを持っていた。


「それでは、私は当日に確実にことに当たれるよう、この件に関わる者たちに再度確認をしておきます。」


「頼んだぞ、シュリップ。」


家令のシュリップは一礼して、国王の居室を出たあとすぐにノアールのところヘ事の仔細を伝えるために向かった。





婚約パーティー当日、朝の早い時間から入浴を済ませて、体にオイルを塗ってマッサージしたり、クリームで保湿したりと、リラはミーアに念入りに支度をしてもらっていた。


コルセットではなくウエストニッパーというフックで留める補正下着を付けてパニエを履く。今までより簡単に楽に着脱することが出来る。


アヴィの用意したドレスに着替えた。




イブニングドレスはアヴィが用意したもので、ペールブルーのノースリーブで裾が長く床に付いている。


ベアトップの部分は細かな花の刺繍が銀色の糸で施されてあり、光加減でキラキラと輝く。ウエストからはボリュームたっぷりのチュールが重ねがけしてあり存在感がある。


ネックレスは、胸元に向かうにつれて広がるタイプでタンザナイトの宝石をふんだんに使ったボリュームのあるタイプに、ネックレスと同じ石を使った揺れるタイプのイヤリングが準備されている。


靴とオペラ・グローブがセットで揃えてあった。


「では、髪はハーフアップにしましょうか。」


「ミーアに任せるわ。」


「リラさまは…目の色はクライノートさまと同じお色味ですが…髪の色が……伸びるのには時間がかかりますから…遠目から見て娘だと周知できればよいのですが……」


「ミーア、この髪も悪くないわ。かえって珍しくて目を引くかもね。」


夕方から舞踏会が開かれ、そこで婚約発表の場が設けられる。



リラはグラッセン王妃が、招待状の名前を見てどう思ったのか気になって時々考え込んでしまう。


「仕上がりましたよ、クライノートさまに負けず劣らお美しいです!」


「ありがとう。」

「本当ですよ!美しいです。あとは全てがうまくいってグリュック王国に行けるといいですね。」






扉をノックする音とともに声が掛かった。

「時間でございます、リラ王女殿下。」






大広間まで、アーベントの付けた護衛が案内をしてくれた。


大きな扉の前に着くと、アーベントが待っていた。


アーベントは瑠璃色の爽やかなマッシュショートでワックスをさっと馴染ませてスタイリングしている。

鮮やかな紫味の青いタンザナイトのような瞳がリラを見て目を細める。

背が高く、均整の取れた体つきでブラックの正礼装美しく着こなしている。

アヴィはリラを見て目を蕩けさせた。

ペールブルーのドレスがリラを神秘的に神々しく魅せる。


「リラ、湖の精。その美しさゆえに、見たものを湖の中に引き入れ込まないようにするんだよ。ああ、私は別だがね。ケースに入れてわたしの手元から離さず持ち運びたいよ。」


「フフ…なんですの、それ。アーベントさまもとても素敵です。」




アーベントのエスコートで式場に入場する。


大広間は今夜のために美しく整えてある。


床は赤い絨毯が敷いてあり、等間隔にある大きな窓には同色のドレープのカーテンとレースたっぷりのカーテンとシャンデリアが会場を豪華に見せている。


王族の席が真正面中央に用意されている。


立食パーティーになっているようで白いテーブルクロスを敷いたテーブルが部屋の左右の壁側にセッティングされている。

テーブルには、飲み物やデザートや軽食が用意されていた。


「テーブル席の真ん中が、ブラオ国王陛下でその右隣がライア王太子殿下の席だ。」

「ブラオ国王とライア王太子殿下は、まだ2階の控室にいるが第一王女殿下を口説こうと必死だったよ。本物はここにいるのにね。」

アヴィが子供っぽい優越感を出して、リラにに笑いかける。


「私たちに用意された席はノアール王子の隣だ。」


「今日招待されているのはブラオ王国の貴族とトゥアキスの王妃と第一王女、ノイエルとナハトの王太子だけだから緊張しなくて大丈夫だ。」



入場前にアーベントがリラに説明をしてくれる。


2人の入場を告げる声で一斉に視線が集まる。


「さて、美しいリラ。私の方を見て微笑んで。」

言われたままリラが、アーベントを見上げて微笑む。

「はぁ、かわいい。」

アーベントがリラの額にキスを落とす。

リラはアーベントのエスコートで会場の用意されている席まで進む。




リラとアーベントは堂々たる姿で入場する。

招待客からどよめきが上がる。

リラの美しさを褒め称える声がアチラコチラで聞こえる。

『ホワイトローズ』、『トゥアキスの歩く宝石』と、ささやき声が聞こえる。


(よかった…私を娘だと認識してもらえた。)


中には口をぽかんと開けたままの独身貴族も何人もいた。



グラッセン王妃とヴァイヒ王女殿下が控室から2人を見て目を丸める。


グラッセン王妃は、リラがクライノートにそっくりだったのを見て驚いた。


グラッセン王妃はヴァイス城に着いてすぐに、破談になったことを聞かされていたので、この後に場が設けられて今後の話し合いが成されると聞かされていたので交渉を有利に運ぶための算段を立てていた。


ヴァイヒ王女は自分が狙っていたアーベント王太子がリラをエスコートしており、なおかつもう親密そうな2人に目をむいた。




ライアは、2階の王族の控え席から一部始終を見て今まで口説いていたヴァイヒがホワイトローズではなかったことに歯噛みした。


三者三様の思惑でこの2人の入場を見守っていた。


アーベントがリラをエスコートして用意されていた王族席につくと、続いて今回のメインであるノアール王子とローザが入場する。


会場中が静まりかえった。


ローザの人外の美しさに皆息を呑んだ。


ノアール王子は満足そうに、ローザをエスコートして王族席にまでローザをエスコートした。

次に、グラッセン王妃と第一王女ヴァイヒが入場して、最後に国王と王太子が入場して席に着く。


ブラオ国王が立ち上がり、来賓挨拶をして婚約発表を告げた。


「ブラオ王国第2王子のノアールが先日、嵐に会い転覆した船から助けてくれた女性と婚約することとなった。皆祝してやって欲しい。」


ノアール王子とローザも席にから立ち上がり来場者に挨拶をする。


「彼女とともにこの国のためにさらなる尽力をする所存ですので皆さまよろしくお願いします。」


ノアールがグリュックのアーベント王太子と、トゥアキスのグラッセン王妃とヴァイヒ王女に目で挨拶をする。

会場に大きな歓声と拍手が湧いた。



ヴァイス城に着いてから家令にこの話を聞いた王妃は烈火のごとく怒ったが、婚約パーティーにアーベントが来ることを思い出し一先ずこの婚約の話を飲んだ。


第一王女のヴァイヒとアーベントを縁付かせるチャンスだと考え列席することにしが、言い寄ってくるのがブラオ王太子で辟易していたところに、リラとアーベント王太子の仲睦まじい様子を見て急いで計画を変更した。



ライアは、アーヴェントがリラをエスコートして王族席に座るまでずっとリラを見ていた。


ブラオ国王の挨拶が終わって早々に、ライアが席を立ち上がりリラの方へ向かってきた。







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