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話が長くなったので、リラは紅茶を淹れて出した。


「喉が乾いたんじゃない?よかったら、紅茶をどうぞ。」


リラは先にティーカップに口を付けて見せる。


ローザは喋り続けて喉が乾いていたのか、いい音を立てて紅茶を飲み干し、ティーカップを音を鳴らしてソーサーに戻す。


リラは、ローザの美しい容姿と紅茶の豪快な飲み方のちぐはぐさに目を丸めた。


(お節介かもしれないけど…ノアール王子と婚姻するなら、最低限のマナーを身に付けておいた方がいいとノアール王子にお伝えしておこうかしら。)


ローザが満足したのかまた喋り始めた。


「わたし、こっちに来て必死だったからね。今度の婚約パーティが終わったらやっと落ち着けるって思ったのよ。だからあなたに会って確認しておいた方がいいような気がして。」


「確認……?」


「あなたが、わたしを逆恨みしてたら一難去ってまた一難でしょう?」

ローザが探るような視線をリラに向けてきた。


リラはおかしくて、口に手を添えて笑った。

「ふふふ…一難去ってまた一難…分かるわ。そうだわ、夜討ち朝駆けってご存知?」


「え〜、それ使うことある?使ったことないけど、知ってる。」


二人で目を見合わせて笑った。



リラはローザのために2杯目の紅茶を淹れて出した。


「大変だったわね、あちらの世界で生きてきて突然こちらに来られて。」


「わたしさ、多分あっちで急性アルコール中毒になったんじゃないかな…もしかしたらそれが原因で死んだのかもって…」

「かなり飲んでて、最後どうだったかも覚えてないんだよね。」


「それで…人魚姫のローザも、魔女の薬で死んだのかもって。ずっと一人で悶々としててね。」

ローザが、紅茶を飲んだ。


「は〜!聞いてくれてありがとう。この紅茶すごく美味しいね。さっきよりも今飲んだやつのが味を感じる。緊張が解けたからかも。」


ローザが開放感からか、すこしだけ伸ばしていた背中を丸めた。


「ずーっと筆記で会話してて、疲れてたんだよね。」


「そうだ、ノアールと結ばれたら呪いが解けて、喋れるっていう設定にしてあるから、それまではわたしが話せるの内緒にしてて。」


「ええ、わかったわ。お互いに安息を得るために乗り切りましょうね。」

リラが気を許した人にしか見せない、リラックスした笑顔を見せた。


ローザがリラの笑顔を見て感心した。

「わたしもすごい美貌だけど、リラもかなりだよね。すごくきれいな目だよ!」


「あ、リラって呼んでいい?」

リラをちらっと上目遣いで見てくる。


(なんだか、憎めない人ね。)


「フフ……構いませんわ。わたくしは、本名をお呼びしましょうか?」


「わたし、真央って言うんだ。」


「マオさまとおっしゃるの?」



ローザが少し間を開けてから言った。


「ありがとう、でもローザって呼んで、もうローザとして生きていかなきゃ…だから。」


「そろそろ戻るね、ついこの間まで刺客に狙われててさ、ノアールが心配するからね。」

ローザが紅茶を飲み干した。


「お送りしたいけど、仲良くしているところを見られて、作戦が失敗してはいけませんものね。」

「気を付けてお戻りくださいませ。」


「5分後に護衛に迎えに来るように言ったから、扉の前にいるんじゃないかな。こんなに長居する予定じゃなかったからね。」

ローザが席を立った。


リラも見送るために席を立ち一緒に扉の方へ行く。


リラが扉を開けた。


「じゃ、会場でね。」

ローザが笑顔で手を振った。


リラも笑みを返す。

「ええ、作戦が成功したらまたゆっくりお喋りいたしましょう。」


ローザは護衛と戻っていった。


ちょうど扉の外で、護衛と並んでリラが出てくるのを待っていただろうミーアに声を掛けて一緒に部屋に戻った。







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