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スイーツ巡りのぶらり道中  作者: das
ハーピィの娘 ~マンゴー大福~
33/36

(10) 理由

衛兵隊の隊舎からエリアンを連れてソーニア宅に帰る途中、ユーリンと関羽がアーウィンの街で寝床にしている定宿に寄った。ソーニアには聞かせられない会話をするためである。


宿の入り口に立つユーリンが、エリアンを見て言った。


「連れ込み宿じゃないから、安心してね」


「そなたはまた余計なことを」


「ただの事実告知なのに……」


安心させるような口ぶりで要らぬことを言い、関羽がいつものようにとがめた。連れ込み宿の意味を尋ねかけたエリアンを関羽は目配せでそれを制し、ユーリンに詰め寄る。


「……ユーリンよ、何があった?その気の猛りを見れば自ずと知れる。また無謀に身を投じたのではあるまいな」


「まだ危ないことはしてないよ。ただアチコチを走り回っただけさ。ソーニアさんと話す前に、口裏合わせをしとかないとね」


ユーリンは、関羽にだけは嘘をつかない。それが2人の暗黙の約束であった。


宿の部屋に入り、ユーリンはエリアンに椅子を勧め、自身は寝台に腰を下ろした。関羽は部屋の壁際に立って腕を組んでいる。


「ごめんね。せっかくのお友だちのお誘いがあったのに、断らせちゃって」


街中を歩く途中、エリアンと同世代の少年たちと遭遇した。エリアンの友人たちであるらしかった。連れ立って親しげにエリアンに声をかける彼らに対して、しかしエリアンは当たり障りのない挨拶のみを返して、早々に会話を切り上げてしまったのである。


「いいよ。……あんま話、あわないし」


いつもそうであるらしく、彼らはエリアンを気にする様子もなく、自由奔放を許された稀少な人生のひと時を謳歌するように、賑やかな談笑に花を咲かせながら去っていった。彼らを見送るエリアンの視線がほんの少しだけ必要以上に長く彼らの背中を追っていたことに、ユーリンは気がついていた。


「……そか。あまり遊ぶ時間もないだろうしね」


「この頃はけっこう楽になったんだ。マンゴーはウルリカからもらうだけだから……これまでのよりも、高く売れるのに」


「もらってあげなよ。ウルリカさんには、お礼の気持ちを伝えるだけで良いさ」


「おれ、何も返せてないんだ。もらって、ばっかり。……めぐんでもらってるみたいだ。それはダメなことなのに」


ソーニアが聡明な女性であることを、ユーリンは疑わない。盲目に近い障害を負う身でありながら、愛息たるエリアンを女手ひとつで養育している。柳腰の柔らかな雰囲気のうちに、凛烈たる能力と意志を有した女傑であることを認めていた。


ソーニアがエリアンに注ぐ愛情は、尊き真実のものである。その質量が十分すぎることは善性に満ちたエリアンの発育から明らかであり、ソーニアの気高さはエリアンにも受け継がれている。しかしそれがエリアンの境遇を束縛する要因にもなっているのだろう。


母たるソーニアにはあり、息子のエリアンには無いもの ――闘志。己を取り巻く環境を対峙し、己の力量を振るって捻じ曲げる。与えられたか弱い手札を握りしめ、世界と戦う克己と意志の力が、エリアンは欠けている。それが遠因となって、エリアンが自身の生活水準に負い目を感じさせ、劣等感という精神の足かせとなっている。


歯がゆい、とユーリンは思った。利用できるものは何でも利用する習性が身についているユーリンからすれば、己に惚れる異性からたかだか希少な果実を貢がせる程度のことをためらうエリアンの姿勢は、弱々しく無責任なものにすら見える。しかし同時に憧れのような好意もある。ユーリンがついぞ身につけられなかった、まばゆい善性の萌芽――それが尊いものであることは、ユーリンにもわかっていた。


どう導くべきか――ユーリンは迷った。エリアンの心の導線を読み、己のために利用するだけならば、これほど容易なことはない。しかしユーリンはそれをしないと誓った。あくまでエリアン自身の幸福な未来を願うことにした。それがユーリンの決意であった。


慎重に言葉を選び、エリアンが感じている屈辱感を取り除くことを考えた。


「うーん。別にダメてわけでもないんだけどね。貢ぐ側が歓んでるんだから、受け取っちゃえばいいさ。なんなら伝授するよ? エリアンくんならボクの技を全部継げること間違いな――」


「……エリアン坊よ。花に水をまいたことはあるか?」


関羽が横から口をはさんだ。

エリアンが考えて、答える。


「? ……あるよ。なんどか。……昔、おれが小さいころは、家の庭にも少しだけ花が咲いてたんだ……いまはダメだけど」


「なればこの際はそれと同じであると心得よ。花に水をまくに際して、花から返報を得ようとは考えぬはず。ウルリカ殿も同じような心境に相違ない。……男子として忸怩たる想いがこみ上げるは止むなしとしても、ウルリカ殿のためにこそ、坊は悩む気振りを封じて受け取るのがよい。男子の甲斐性のひとつだ」


「……いい、のかな。理由なく、もらっちゃって、いいのかな。マンゴー……あれ、ぜったいすごいヤツだよ。街で栽培してるほかの果物とは全然違う。なのにおれがひとりで、勝手に……こっそり使っちゃっても……」


「恩には、受け取るべき時と、返すべき時がある。エリアン坊は、今はまだ受け取るべき時なのだ」


確信に満ちた関羽の断定を、エリアンは静かに聴いている。

ユーリンが力強くうなずいた。


「そそ、珍しくウンチョーの言うとおり。ウルリカさんはものすごくスゴイ人だから、エリアンくんからお返しされても、きっと困っちゃうはずなんだ。ときどきエリアンくんの笑顔を咲かせて、見せるだけでいいんだ……苦しいときに助けてもらうのことは、悪いことでも恥ずかしいことでもない。恩を忘れ、返せるときに返さないこと……それが男の道に反するてことだよね、ウンチョー」


「然り。恩を返すべき時はいずれ訪れる。今は力を蓄えることに努め、その時を待つべきだ。……ゆめ時流を読み違えてはならぬ」


関羽の眼差しがエリアンを射た。それは叱責を含まない指導であった。人生の先達として正しい振る舞いを未熟な年少者に伝えるだけの、乾いた熱風のような抱擁であった。


「……そっか。そうなんだ。……よかった。おれ、悪いこと。してないんだ」


エリアンの心の土壌に広がる沼地のような罪悪感のぬかるみが、晴天の陽射しに照らされる。


「お母さん、いつも言ってるんだ。『誇りを大切にしなさい』って。……お金がなくても、悪いことだけは、ぜったいしちゃだめだって。お母さんも、おれも、働けるんだから、ちゃんと働いて、もらったお金だけでやりくりできてるんだから……『飢えるわけでも、着るものに困ることもない』……恵まれた街に生まれた、恵まれた命だから、そうしなきゃ、って……」


そう生まれたから、それをかみしめて、そうあれかしと生きるべきと、己に強いる――エリアンの母ソーニアの人生観はおそらく正しいものである。しかしその正しさが、エリアンの心を窮屈に締めつけている。


自分の過ちが苦しみの原因であれば、自分を正すことで癒されるだろう。

ならば、人の正しさが原因の苦しみは、どのように癒せばよいのか。


自分が強くなるしかない。強靭たる在り方を学び、真似るのである。

そのためには模範が不可欠だ。世界の中における己の位置づけの捉え方、立ち向かう姿勢と態度、そしてそれを表すための言葉――関羽がエリアンに示したのは、つまり戦いの作法であり、闘争の規範であった。


ユーリンは内心で関羽に賞賛を送った。エリアンの葛藤の根源を知らぬまま、力に恵まれた者の務めを関羽が果たしたのである。それはユーリンにはできないことであった。


エリアンの精神を蝕むのは、母ソーニアから受け継いだ誇り高さによって増幅された劣等感である。大切な友人に生活の資を恵んでもらう立場――その現状認識が心の出血を招き、乾くことのない湿地となって、足を重くしている。ソーニアにも、ウルリカにも、またエリアン自身にも理解できていないエリアンの葛藤の根源を、ユーリンは看破していた。しかしそれがユーリンの限界であった。


わかることと、できることは、違う。

ユーリンにわかることは多い。しかしユーリンにできることは少ない。その落差による軋轢が積み重なり、ユーリンの厭世と自己欺瞞を加速させてきた。ユーリン自身はそれを自覚している。


(だからいいんだ、ウンチョー。キミがいてくれると、ボクはだいぶマシになれる)


エリアンに向けた関羽の言葉が、ユーリンの心の不安定を取り除いた。自分にはできないことをできる人が、自分の側に居てくれる――それが支えとなったのである。


「じゃ。もう少し楽になろう。エリアンくんが抱えている重荷を……ボクが引き取りたい」


ユーリンは小さな鉱石の破片のようなものをエリアンに見せた。関羽がのぞき込み、エリアンは顔を暗くした。


「……これは? 何やら禍々しい気配を感ずるが」


「はい、それ、撤回! これは『神々しい』ていうんだ。……ウンチョーてばマナ量はすごいのに魔術からきしだから、そう感じるのかな」


「ふぅむ。そういうものか。正体は判じ難いが、兎角これが超常なる何某(なにがし)かを秘めていることは見て取れる」


「キミの目の色を変えてみせよう。これは『聖女陽子の遺品』だ。……信奉者としては欲しいでしょ」


「なんと!? 聖女殿の!?」


「まだ推定だけどね。神代の聖遺物に準じるものなのは確定。状況証拠的には、聖女陽子がこの地に残した魔力結晶(マナノード)。アーウィンの地の豊穣の源泉! たぶん」


ユーリンの解説をエリアンは硬直して聞いていた。ようやく動いた舌は、かすれた声をやっとのことで、押し出した。


「……聖女さま……の……?」


「たぶんね。そしてエリアンくんのものでもある。……だから返すね」


「っ! い、要らない! そんなものだなんて、知らなかったんだ!」


「その(へん)の事情を全てを話してほしい、でないと死ぬよ。……その(へん)の自覚はあるんだよね」


「……でも、おれ、わからなくて……そういうつもりで持ってきたんじゃ……」


「エリアンくん!」


ユーリンはエリアンの肩をつかんだ。目を背けることを許さないために。


「これは戦いなんだ。わからなくても勝つ! ……勝つためにできることは全てやり尽くす……負けたら最悪でソーニアさんも死ぬ。ウルリカさんも危ない」


ユーリンの不穏な言に、関羽が目を光らせる。


「それほどの代物(しろもの)であるのか」


「軍事的にも内政的にも、何人死んでも釣り合うだけの重みがある。……表沙汰になればね。経緯と事情はどうあれエリアンくんの手元には聖女の魔力結晶(マナノード)がある。そしてこの際どうあれ肝心なのはむしろ経緯の方なんだ、敵さんは事情を斟酌(しんしゃく)しない」


びくり、とエリアンが怯えて身を固くする。


「お、おれ……、やっぱ間違ったコトしたのか、な……お母さんに……ウルリカまで……」


エリアンが恐慌に襲われたとみたユーリンは、準備していた『精神魔法:鎮静』をすかさず発動させた。精密に操作されたユーリンの淡いマナが、エリアンの心の隙間から精神に浸潤する。エリアンの崩れかかった呼吸が落ち着きを取り戻した。しかしユーリンは違和感を覚えた。放出したマナがエリアンから滑り落ちるような感覚が残ったのである。


(……あれ? 今日はまた一段と効きが弱いな、ボクの精神マナがほとんど届いてないみたいだ。ボクの疲労が原因……だよね……)「エリアンくんを叱るつもりは全くない。喝采を送りたいくらいなんだ。……なんならこのまま寝台に押し倒したいくらいだけど、ボクの節操がそれをさせない。……貞淑の仮面を脱ぎ捨てようかな。完熟には早いけどこの際それもありかも……」


「とうに素顔がむけておるではないか……エリアン坊よ、臆する必要はない。儂らは知りたいのだ。如何なる脅威が迫っておるのか……ユーリンめは性格こそ救い難いが、窮地にて人を救う術を見出すことには長けておる。頼ってよい」


「んん? なんか妙な前置きがあったような? ……そして正確にいうと、助けるのはエリアンくんで、助けられるのはボクなんだ。エリアンくん、ボクを助けてほしい」


ユーリンの言葉の意味をとらえかねて、エリアンが目をしばたたかせる。


「おれが、たすけ……る?」


「そゆこと。言い損ねでも聞き違いでもない。ボクは自分の利得を最大化するためにエリアンくんと手を組みたい。エリアンくんと利害を合わせちゃうのが、いまは1番強い行動なんだよ。つまりボクが敵さんより、一歩、有利。だから協力したい。……この申し入れは許されるだろうか」


「うん。それは、いいよ。でも、おれなんかにできること、あ……る?」


「情報だよ。理由を教えてほしい。……聖域に行った理由、聖域から魔力結晶(マナノード)を持ち帰った理由、そして魔力結晶(マナノード)を地中に隠した理由。この3点だ」


エリアンは顔を伏せた。表情は隠れているが、その心境がユーリンにはよくわかった。蔓草(つるくさ)のように心に絡みついた束縛をほどき、立ち上がろうとしている。未熟な、けれど確かな男子の矜持が、告解に怯懦する己を許さない。エリアンの内に沸き立つ自尊心が、傷つき弱った精神を支えている。


ユーリンの空色の瞳が、エリアンの眼差しを暖かく迎えた。


「……あのさ……おれの父さん、聖域を調べようとして、帰ってこなかったんだって。……おれが産まれる前に。……だからずっと気になってた。ダメだって知ってるけど、いつか行ってみたいと思ってた。……ずっと」


「!? ……そっか。それは当然、気になるよね」


エリアンの父が聖域で命を落としたことを、ユーリンはすでにソーニアから明かされて、知っている。しかしソーニアは、エリアンはそれを知らないと断言していた。意図せずエリアンに悟られるような過ちをソーニアは犯さないだろう。無責任な第三者が軽薄に事情を伝えたのか。あるいは……


(『帰ってこなかったん()()()』……か。……最悪の仮定は、誰かに誘導されていた場合だな)


ユーリンは内心の動揺を隠したまま、エリアンに続きをうながした。


しかしエリアンはうまく言葉が出ない。


「……持ってきた、理由、なんだけど……」


明かすことをためらっているのではなく、適切な言葉を見出しあぐねている様子である。


「迷うよね。でも正確でなくていいんだ。言葉は後から作られるもので、まずあるのは心だ。……エリアンくんが魔力結晶(マナノード)を聖域で見つけた時の気持ちを、そのまま教えてもらいたい」


「……これ、おれの父さんなんだと思う」


「……どれ?」


「これ」


エリアンは魔力結晶(マナノード)の欠片を見つめた。


「そう感じたんだ。見つけた時に。……なんだか、聖域の……周り……何かから、そう言われたような気がして……持ち帰るしかないって、思った。……母さんに渡そうと思って」


エリアンが表した心の軌跡は真実のものである。しかしその見解が客観的な事実であるとは、ユーリンには思われない。


魔力結晶(マナノード)の欠片の品質は、偽りなく神代のものである。現代の高名な魔術師が入念な準備の末にようやく再現可能な高純度の自然(ネイチャー)魔力(マナ)を、夜の浜辺に押し寄せる潮騒のようにゆるやかな高低の波をつくりながら静かに放出し続けている。


エリアンの父が如何なる人物であったのか、その詳細はわからない。しかしこの魔力結晶(マナノード)を作成する術をエリアンの父が有していたのならば、危険を冒して聖域の調査に赴かずとも、アーウィンの土壌を護る他の方策を採用できたはずである。魔力結晶(マナノード)の欠片はエリアンの父に縁のあるものではなく、またエリアンの父そのものであるはずもない。


父の手がかりを求める心の焦燥があらぬ幻惑をエリアンに抱かせたのだろう――ユーリンはそう結論づけた。


「不思議な話だね。それを裏付ける方法はいまのところ無さそうだけど、見つけたエリアンくんがそう感じたのなら、それはエリアンくんにとっての真実だ。言いづらいことを、よく話してくれたね。……ありがとう」


「……うん。おれも、変だと思う。だけど、やっぱりおれはそう思う。……これは父さんなんだ」


エリアンが抱く荒唐無稽な確信をあえて訂正する必要はどこにもない。ユーリンは、魔力結晶(マナノード)の欠片をエリアンに握らせた。


「大切なものを返すね。……そして、この大切なものを庭に埋めた理由は何かな」


エリアンが父そのものであると信じる魔力結晶(マナノード)の欠片を、父を弔う意図で庭に埋葬したとはユーリンは考えていない。確かに魔力結晶(マナノード)の欠片は何かの苗木の根本に埋められていたが、そこに弔いの意図は感じられなかった。


ごく最近、ユーリンは老衰した愛馬の埋葬に立ち会う経験をした。飼い主の住まう自宅の庭樹の根元に、馬の亡骸を埋めた。

墓は、故人とその縁者の対話の場である。途切れた(えにし)を地上に残す結び目として、墓を建てるのである。

エリアンが選んだ若い苗木からは、縁の象徴として墓標とする意図が感じられない。実際的な必要に迫られて用意したものであるとユーリンは判断していた。


「……誰かが、探してるんだ」


「何を探してるて?」


「コレ」


エリアンは手の握りをひらき、魔力結晶(マナノード)の欠片を見せた。


「いつから?」


「聖域から……ウルリカに助けてもらって、帰ってきて、しばらくしてから……ときどき街中で感じるんだ」


「今も感じる?」


「ううん。今はないみたい。……市場の木の下で休んでるときとか、公園で花を見てるときとか……でも、おれを探してるんじゃなくて、コレを探してるんだと思う」


思い出すようにエリアンは視線をさまよわせながら言った。


聖域に無断で足を踏み入れた罪悪感がつくった幻影である――ユーリンはそう診断した。他者の視線を検知する鋭敏さは長年の蓄積によって培われるものである。相手の視線や身体の動きを観る武芸の習熟や人目を避けて隠密に身を落とす行動習慣は、エリアンにはない。しかし精神治療にここで取り組む必要はない。ユーリンはエリアンの言葉を肯定する。


「とすると、持ち歩くのは避けたいね」


「うん。でもコレ、本当に近くまで来ないと気がつかないだろ? すぐに地面に溶けちゃうし……だったら土の中だったら平気かなぁって思って。きっと芽が出るような気がしたから、マンゴーの種と一緒に埋めたんだ」


「……待った! エリアンくん、今、なんて?」


ユーリンの顔色が変わったのに、エリアンが驚く。


「えっ? ……マンゴーの種?」


「その前、その前! ……エリアンくん、まさか気づいてた?」


「ううん。本当に知らなかった。聖女様の大切なものだなんて」


「そこじゃなくて、そこじゃなくて! ……ちょっと貸して」


ユーリンはエリアンから魔力結晶(マナノード)の欠片を借りた。そして、両腕を背中にまわしてエリアンから隠し、ややあって握りしめた左右の拳をエリアンの前に突き出した。


「さぁ、どっちだ!? 右手と左手、ボクのどっちの手で欠片を握っているでしょうか? ……正解したらご褒美でボクの熱いキスを――」


「……ユーリンお兄ちゃんの後ろのポケットの中……でしょ。こんな近くだから、誰でもわかるよ」


突き出されたユーリンの両こぶしではなく、ユーリンの腰元をエリアンは指し示した。

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