(2) 郊外の森
賑やかな市場の一角で、関羽は再び途方に暮れた。ユーリンも肩を並べてそれに同調する。
「はて。珍奇なことであるな」
「『マンゴー』が市場には流通してない? どころか名前すら知られてないぽい。……なーんか、たずねて回る先々で、ボク、変な目で見られたんだけど、なんで?」
「……儂なぞ向こうの店先では警邏の衛士を呼ばれかけたぞ。この措置にはさすがに不服である」
「禁句なのかな」
「わからぬ」
大福売りの少年エリアンから黄色の果実の正体を聞き出した関羽とユーリンは、すぐに市場に戻って『マンゴー』を探し始めた。しかし、マンゴーは見つからない。品として売り場に並んでいないのではなく、そもそもマンゴーなる果実が知られていないのである。
「……儂も違うとは感じておるが、そなたの見立てではどうだ?」
「ないね。ソレはないよ。だからそういうことだね」
「うむ。であろうな。あの童子が偽りを申したとは思うておらぬ。なれば街の産物ではない果実ということか」
「同感。アレコレ別々の店で聞き出してみたけどさ、エリアンくんの大福は有名だった。でもそれとマンゴーの名を結びつける人はいなかった。あの黄色いのは、エリアンくん特性の秘密の香料で煮詰めたモモということになってるらしい。お母さまがヨーコノートの有資格者で、エリアンくん自身もそうなんだって。そのストーリーでみんな納得してる」
スイーツ文化の創始者である古の聖女陽子の記したレシピの写本は、通称『陽子Note』として現代にも引き継がれている。聖女のかけた大魔法により、有資格者と認められた人物のみが、そのレシピの写本を読解できる。ヨーコノートの有資格者は、高い尊敬と羨望を受けるのが常であった。エリアンが売り歩く大福に含まれる果実は、そのヨーコノートの秘奥によって不可思議な味わいを実現しているものと見做されている様子である。
しかし関羽はそれをきっぱりと否定する。
「確かに似ていなくはないが、桃ではありえぬ。マンゴーなる果実の弾力と水気は加熱を経ない熟した生の果実でなくては保ちえぬ。桃と偽ったのは、さしずめ方便であろう」
「だね。となると、どうする?」
「マンゴーについてみだりに尋ねてまわるは控えるべきであるな」
「だね。して、おしまい? 名前だけをつましい思い出として持ち帰る?」
「それでも不足はない。しかし、否。童子の意気に恩を返したい」
「同感。ボクたちだけに明かしてくれた秘密の果実。秘匿に協力はするにしても、なーんか、あるね、これは。……ま、明日は予定通りに街近郊の果樹園を訪ねてみようか。マンゴーのてがかりがあるかもだし。キミの希望通りに見学を許してくれるとうれしいけども」
果樹の街アーウィン近郊には、豊かな果樹園が広がっている。しかし果樹園の周囲は防護柵で覆われており、侵入を許さない造りになっていた。
翌日昼前、関羽とユーリン果樹園を見学に訪れた。柵を乗り越えて無断で侵入するわけにもいかず、関羽は果樹園い入口で見学の申し入れのために、衛兵らしい気だるげな中年男と相対した。衛兵は無気力な顔つきで、退屈そうに返答する。
「ダメだ。帰ってくれ」
「……間近でしばし、眺めさせてもらうだけでもよいのであるが」
関羽はひとりで果樹園の衛兵と交渉に臨んでいる。ユーリンの思いつきで、関羽の対人交渉力の鍛錬の機会ということにされたのである。ユーリンは身を隠して様子を伺っているはずであった。
関羽は朴訥と言葉をつなげて交渉する。しかし衛兵の態度は変わらない。
「部外者は立ち入り禁止だ。ここの主さんからの命令でなんでな」
「規律とあらば無理強いはできぬが、こうも警備が厳戒である事情をおたずねしてもよろしいか?」
「なんだ。知らねぇのか。ここらは聖女様のおかげで、フルーツなら、何でも、育つ。……育つが、それを狙う連中もひっきりなしだ」
「なんと!? ……野盗の跋扈とは由々しきこと。しかしフルーツを狙うとは……?」
意外な話に関羽は目を見開いた。たしかに、たわわに実ったフルーツには童心をくすぐるような魅力が備わっており、たまらず手をそれに伸ばしたくなる誘惑はある。しかしあえてそれの強奪を企むほどの価値があるとも思われない。盗み出す財宝としては労力の割に合わない品であるはずだ。盗品を売りさばく儲けを期待しての蛮行とは考えにくい。関羽は、賊徒の動機を想像し、仮説をたてた。
「……さては己が欲望の赴くままに贅を凝らしたフルーツポンチの大鍋をこさえようという企みか。董卓めの酒池肉林が如き浅ましき退廃。フルーツは適量を工夫して味わう対話の過程こそが肝要であるのに……」
憤慨する関羽からは半歩下がって距離をとって、衛兵の男が訂正した。
「いやいや、ゴブリンやらリザードマンだよ。腹をすかして舌なめずりして襲ってくんだ。その場で食い散らかして手当たり次第さ」
「そういう事情であるか。やむを得ぬな」
多少の気まずさを覚えたらしい衛兵の男が、土産代わりに情報を差し出した。
「ま、ごく最近はおとなしいらしいがな。昔からそこの森を越えた山向こうからコソコソと押し寄せてくんだ。だから年がら年中、守りを固めてんだよ。ここらの果樹園はどこも同じだね。諦めて帰りな」
「承知仕った。お時間いただき感謝いたす」
関羽は礼を述べて、その場を後にした。
離れて様子を伺っていたユーリンが関羽に駆け寄り師匠ヅラで尋ねる。
「首尾はどーお? コミュ障なウンチョーくんはちゃんとお話しできたかな?」
「生憎と警備の都合で見学は受け入れられぬらしい」
「ふぅん。……ちょっとボクが代わるね。どのくらい無理なのか試してくるよ」
すっかり諦めきっている関羽をよそに、ユーリンは颯爽と衛兵のもとに向かった。関羽はしょぼくれながらも、あとに付き従う。
衛兵は怠惰を動力としたような相変わらずの緩慢な仕草で、来訪者たちを迎えた。
「……なんだ? また来たのか? さっさと帰れって言っ……っ……!?」
衛兵の顔に驚きと緊張が満ちた。原因はユーリンである。透きとおる空色の瞳に飾られた美貌が、愛くるしくも哀しげな憂いをおびた表情で迫ってくる光景は、さして勤務に意欲的でもない衛兵の不意をついた。
「……ぅ……」
「それを曲げて、どうかお願いできないでしょうか。果実なんて、ヒューマン族が強盗するもんじゃないでしょう? かさばるし、持ち帰れないし、換金しづらいし」
強引な切り口で無理を言っても、相手の不快感を催させない。それがユーリンである。麗しい顔をことさらに衛兵の男によせて、まるで切実に懇願するかのような体裁をつくって、迫った。積みあげられた金貨の輝きに緊張を催すのが一般的であるように、価値あるものを眼前につきつけられれば、通常の人の心は瞬時に硬直する。奇襲じみた判断力の束縛である。
空色の瞳をあたかも純朴そうに潤ませながら、ユーリンは衛兵を間接的に脅迫する。
「あ、あぁ、それは、そうなんだが」
「それに聖女ヨーコの祝福の都合、栽培の技術を他の地で活かせるものでもなし。ヒューマン族であるボクらが、こちらの果樹園を脅かすこと何もないと思うのですが」
「そう……だな……」
「どうしてもボクたち、ここの果樹園を見学させていただきたいんです。……無理を押していただく多少のお礼として、何かお約束できるものがあればよいのですが……あいにくと手元には何も……」
まるで残念そうにみえように、ユーリンは影を目元につくった。喜怒哀楽の適度な明暗が自身の外見的な魅力を増幅させる効能をユーリンは熟知していた。
衛兵の男の目が、杭を打ったように惹きつけられる。衛兵の男は強烈な渇きを覚えさせられた。ユーリンの空色の瞳が、万事心得たといわんばかりにその渇望を迎え撃つ。ユーリンは微笑みを衛兵に下賜した。
「……ちょこっとだけでも、いいんです」
蛹をを脱けたばかりの蝶が咲き誇る柑橘の雌花の誘惑に抗う術を知らないように、衛兵の理性はユーリンの望みのままに導かれる。衛兵の男は操られたように、熟慮の末の賢明な判断に至ったつもりであった。
「……まぁ、ちょっと……くらいなら……と、言いたいところだが、難しいな」
ユーリンは、予定調和として衛兵の返答に打ち返した。
「どうしても?」
「そこは、それだ。どうしてもって言うなら、条件次第でって話になるわな……退屈な仕事なんだ……少しばかり潤いがあってもいいだろ?」
ユーリンは華やかっぽい笑みを咲かせて応諾する。
「じゃあ! いっしょにお茶でもいかがです? ボクのツレがこちらを見学させていただいている間、果樹のつぼみさえうらやむような薫り豊かなひとときを楽しみませんか? お仕事の話、聞かせてください」
「……悪くない……な……」
「決まり! いきましょ。あ、あっちの木陰がいいですね、さぁ、さ」
ユーリンは衛兵の男の手を引いて連れ出した。関羽の前には、開け放たれた果樹園への入り口があった。しかし関羽は足を進めない。頭を抱えてその場に立ち尽くした。
「……そなた、しばし……待て……」
頭痛と胃痛を堪えながら、ユーリンと衛兵の男が並んでいそいそと歩む後ろ姿を眺めた。紅茶のアテにビスケットをつまむような手軽さで人の心を狂わせる――ユーリンにとっては寝起きに肩を伸ばす体操程度のことであるが、狂わされた側は生涯にわたって心の高座にユーリンの彫像の据えることになる。妖魔の幻術に等しいと関羽は考えていた。
関羽はスイーツ修行の一環として果樹園の見学を希望している。しかしその程度の動機のために、勤勉でなくとも悪党でともない衛兵の男を誑かして良いものだろうか――衛兵の男が納得ずくでユーリンの誘惑にのっているとしても。
ユーリンが振り向いて関羽をみた。空色の瞳に稚気を差した目配せで「今のうちに見学してきなよ」と言っている。ユーリンの厚意を無下にするのもしのびなく、関羽は果樹園に足を踏み入れた。衛兵の男とユーリンは、連れ立って先を歩いている。
その時、衛兵の男の腕が、ユーリンの背に伸びた。腕をまわしてユーリンの腰元に手をあて、ユーリンを抱き寄せる姿勢となった。それを察したユーリンの背にピクリと硬さが生じる。男の腕がユーリンの身体を這うように、さらに下がった。
衛兵の男が苦鳴を漏らしたのは、ほぼ同時である。ユーリンの腰にのばされた衛兵の手首を、瞬時に駆けよった関羽が、容赦なく捻りあげたのである。
「……っ! ぎっ……いてぇ……!」
衛兵の男はたまらず膝を折って地に伏せた。涙目でうめき声をあげる。関羽は傲然と、それを見下ろした。
呆れたユーリンが関羽をとがめる。
「ちょっ!? ウンチョー? それなりに人畜無害なオジサンに何を」
「ユーリンよ、この者は務めとして当地の警備を担当しておる。それを儂らの都合で曲げさせるは横着というものだ。やはりここはおとなしく退散いたそう」
「……あのさ、手が、すでに、おとなしく、してない! ……もうっ!」
不満をぶつけるようにユーリンは叫んだが、あまり怒ってはいない。どこか嬉しそうですらあった。繚乱の花畑を舞う蝶のように、気ままな足取りで関羽の側に寄って、その腕を抱きしめた。関羽の腕に頬ずりする。
「やっちゃったもんは、しょうがない! 蒸らしすぎた茶葉みたいなもんさ! あきらめよ」
「然り。……では儂らはこれにて辞去する。騒がせたこと、謝罪いたす。当地の事情についてもお聞かせいただけた。感謝申しあげる」
関羽は両手をあわせて拱手の姿勢をとり、あくまで礼に則って衛兵の男に頭を下げた。
「……つぅ……てめェら、ただじゃおかねぇぞ……」
痛めた手首を抱え、衛兵の男は恨めしそうに2人をにらみ、言った。
果樹の街アーウィンを遠景に眺めながら、関羽とユーリンは街への道を戻る。
果樹園見学の希望は叶わなかったが、関羽は気落ちしていなかった。それよりも傍らのユーリンがご機嫌である理由が理解できず、怯えたように様子を伺い、何か話題をと思案したが、なにも思いつかず、とりあえず先刻の騒動の釈明を述べた。
「……咄嗟のこと故、加減を誤りはしたが、折っておらぬ。しばし安静にすれば、痛みは消えよう」
形式的に拗ねた調子で、ユーリンは穏やかに関羽をたしなめた。
「せっかくうまくいきそうだったのに。ボクが『あんなのにあんなこんな』を許すとでも? テキトーにたぶらかして利用できたじゃん。キミが見学を終えるころにはアイツに芸のひとつも仕込めたよ。オテとオスワリまでいけたって。犬と同じくらいには賢そうだったし」
「無用。兵の質を見れば将の人なりもわかる。このような果樹園を見聞したとて、学ぶものなどない」
「下っ端の品質なんてどこもあんなもんじゃん? 地位と待遇が低けりゃ、『すきあらばあわよくば』で職権乱用しがちなもんでしょ。目くじらたてなくても」
「儂が不快なのだ。そなたが身を削る必要なし。茶席を設けるなれば、相手を吟味せよ」
「せいさい!」
ユーリンは小さく叱責の声をあげ、右手の人差し指を曲げて親指にかけて力をため、関羽の額に狙いをつけたが背がとどかず、結局、爪先をはじいて関羽のアゴを打った。ユーリンの脈絡のなさには慣れている関羽であるが、さすがに目を丸くした。
「!? ……すまぬ。意味がわからぬ」
「あれ? 『制裁』と『正妻』をかけたんだけど、わかりにくかった? 内助の功は黙って受け取るもんでしょ。まったく、まったく。……でもいいよ、悪くない。理解ある夫くんの、ういういしい嫉妬の味、いただきました、だ。……今日のところは『おとなしくおとなしくさせられ』るよ。ふっふーん」
機嫌がよいのはそうでないよりも、よい――と関羽は己を納得させ、ユーリンの心情については努めて放念することを選んだ。
「ここから果樹園を眺める限り、外から侵入する害獣に対して固く備えておるようだ。戦時の砦に等しい。部外者の立ち入りを禁ずるのも道理である。儂だって、禁ずる。……当地に左様な危険がはびこるとは意外に思うが」
「ゴブリンやリザードマンか。連中は狡猾だからね、戦力の充実したヒューマン族の街は襲わない。けれど郊外や野山のヒューマン族は絶好の獲物だ。獲物がデザートを育ててるとなれば、そりゃ色めき立って寄ってくるだろうさ。……のわりには、あんま衛兵さんの質は良くなかったけどね」
この園の衛兵の質はよく言っていまひとつといったところであった。表情に覇気が乏しく、身体能力も高くない。給金分の最低限の仕事を取り繕えればそれで充分という意識が透けて見えたのである。
「ふむ? しかし案ずる立場でもなし。平穏が続けば兵の練度は下がるのが道理である。過ぎたるは及ばざるが如しと申してな。要衝でもなき区域に精鋭を配するは将の過ちとさえいえる。相応に果実が収穫できておれば、それでよかろうて。……街に帰るとしよう。こうして遠巻きに眺める分には障りとはなるまい」
「それがキミの望みなら。物見遊山して帰ろうか。いい景色じゃないか」
平野部を開拓した果樹園が広がっている。緑の葉の合間に紅や黄の果実が遠く点景として彩り散らばり、空の蒼と溶け合って、香るように鮮やかな風景を織りなしていた。視界の端には街を囲う城壁と、山に続く鬱蒼とした森林もみえる。「旅立ち前にはここで一服ね。例の大福も用意して。約束」とユーリンは提案した。
来た道を辿ってぶらぶらと街に帰る。なだらかな起伏の多い道のりであった。人の背丈ほどの小さな丘陵を幾度か乗り越えたところで、関羽が目をすがめた。
「……遠くに見えるあれは、昨日の童子ではないか」
「ん。たしかにエリアンくんだね。……こんなとこで何してんだろ。果物の仕入れとかかな」
いまだ街は遠くに見える。子供の脚力では相応に時間のかかる距離であった。
エリアンは、果樹園を囲う防護柵の終わり際、一目でそれとわかる野生の木々が生い茂る森の際に立っていた。関羽とユーリンには背を向けて、辺りをうかがうように首を左右にしている。ふとエリアンの視線が大きく旋回した。
咄嗟に関羽はユーリンを巻き込んで地に伏した。敵斥候による索敵から身を隠す、戦国武人特有の反射行動である。いきなり地に組みふされたユーリンが、関羽の首に手で抱き寄せて、不必要な艶やかさでたしなめた。
「ウンチョー、ボクを押し倒すなら、せめてベッドの上で。髪を油で梳いて口に香料を含めとは言わないけどさ、とりあえず雨風はさけてもらえるとうれしいかな」
「す、すまぬ。つい身体が動いてしまった」
「つい、か。たぎる情欲を抑えきれなくなったんだね。いいよ、続きは今夜、宿でね。……んで、エリアンくんは?」
ユーリンは、姿勢を低くしたまま目を遠くに向ける関羽の頭をなでながら、話題を戻した。
「姿が見えぬ。森に足を踏み入れおった」
「あらま。てっきり仕入れのためにきたかと思いきや、意外な進路選択だね……て、ウンチョー、どしたの?」
「いかん、追うぞ」
「は?」
関羽の意外な一言に、ユーリンは素っ頓狂な声をもらした。
関羽はユーリンをおいて、足早に歩を進める。
ユーリンは駆け足で関羽を追う。そしてとうとう森の木々を間近で捉える距離まできたとき、疑問を口にした。
「あんな年端もいかないチビッコ相手に、性的ストーキング? ……ずいぶんいい趣味だね。え、ナニコレ、ボクはキミを見守る流れ? それとも宿で夕飯つくって待ってよか? ……まさか、浮気? ……やっぱ若い子のほうがいいてコト!? ボクもだいぶまだプリプリしてるつもりなんだけど」
「そなた、なにを」
「浮気だったら刺すよ。女相手にフラフラするのはいつも許してるけどさ……本気で容赦しない、キミを刺す、身体に穴を増やしてボク専用にしてやる。……ウンチョー、エリアンくんのこと、どう思ってるの? 」
「善き商いにはげむ健気な童である。応援したくなる気持ちはあるな」
「そっか。……エリアンくん、ボクを怒らせたね。いいよ、勝負だ。ボクと競おう、とことんまで、やろう。どっちがウンチョーの意固地な心をほだせるか、勝負だ」
「……ユーリンよ、この森はつまるところ、果樹園の柵の外側である。むろん街の外側でもあるな。そして森というのは人目の乏しい区画である。年端もゆかぬ童が軽々と踏み入るべきではない。当地を悩ます種々の災厄とやらは、あの森の向こうの山から訪れるのであろう?」
「……地元の子だし、心配ないと思いたいけど……追おうか。杞憂なら笑ってごまかそう」
関羽とユーリンはエリアンを追いかけて森の中に進んだ。




