ある通勤の風景 ~福岡市・城南学園通り~
明治通り、国体通りと共に福岡市を東西に貫く202号線を六本松方面から別府方面へと車を走らせると、中村学園大学前交差点から西油山方面へと北から南に延びる総延長3.2kmの「城南学園通り」に行き当たる。
この道の正式名称は「市道地行鳥飼七隈線」だが、平成21年の市制120周年を記念して、中村学園と福岡大学をつなぐ道であることからつけられた愛称で、全線にわたり片側2車線の4車線であり、さしたる工事で掘り返した後もなく、走るには本当に快適な道路だ。
ところで、この道路。走りやすさとは別に特筆すべき点があることを皆さんご存知だろうか。
学園を右手に見ながら区中北部、中西部の市街地を南下すると、別府6丁目交差点で筑肥新道に直通する道路に接続している。その後、茶山を過ぎるまでは左右は住宅地で、若干の高低差がある以外、これといった特徴はないのだが、菊池橋から金山団地入口交差点に差し掛かると景色は一変。
道路の真正面に忽然とそびえ立つ油山の姿。
霞もなく空気が冴えわたるような好日は、生い茂った木々がくっきりと浮かび上がり、まるで緑のビロードを敷いたよう。樹木の一本々々まで克明に観察できるほどだ。
油山は、城南・早良・南の三区にまたがる標高597㍍の山で、およそ800の宝満山や1,000の脊振山などに比べれば小ぶりと言える。しかし、金山団地交差点付近から臨む油山の姿は、福岡市の守り神と呼ぶにふさわしい威厳に満ちている。
しかし、この道の風景の醍醐味は、ここで終わらない。
金山交差点からものの5分も走らせると、学園通りの終点である福岡大学病院東口の交差点、晴明病院前へと行き着く。
すると、あら不思議、さきほどまでの人を圧する威容を男性的と呼ぶならば、今度はたおやかな女性という表現がぴったりの姿に山容は一瞬で変化する。
その変化の落差にはいつも新鮮な驚きがあり、見飽きることがない。
私は毎日、晴れの日も雨の日も、春夏秋冬、この光景を見て職場に出勤している。
季節や時間によって刻々と変化していく油山の姿を見ながら車を走らせることが、自分の中のスイッチの切り替えにもなっているのかもしれない。
なだらかな山裾の風景を横目に見つつ、福岡大学病院を行き過ぎれば、油山はもう目前だ。
茶山、七隈方面にお越しの際は、ぜひこの見事な山の表情の変化をご覧になっていただきたい。
もちろん、運転にはくれぐれもご注意を。