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公爵邸2

95 公爵邸2






 リオーリアから王都へ直線的に飛ぶのは初めてだったので、ギルバートはそれなりに興味深く地上の景色を観察しながら飛んだ。

 

 そうやって飛びながら、ギルバートはつい今しがたの戦闘を思い出す。

 

「リオーリアの公爵邸の警備兵は、戦意も練度これまでで最低レベルだったな」

 

『まあ、確かにな。だがギルよ、そうやってすぐ気を抜くのは悪い癖だぞ』


「あー……。確かにそうかも」 

 

 ケルに気の緩みを指摘され、ギルバートは一瞬、ムッとしたが、戦いはまだ始まったばかりだと言うのに、既に終わった感を出していた自分に気づく。

 

 散々、覚悟して乗り込んだら、敵が全然相手にならなかったので、気が散じてしまったのだ。

 

 あれなら、人数はともかく、シルバートゥースのグレイヴァル支部に居た連中のほうが、遥かに手ごたえがあった。

 

 

 ……っと、いかんいかん。王都のほうには精鋭がいるかもしれん

 

 

 ギルバートは反省すると、気を引き締めた。

 

 

 昼前頃、ギルバート達は王都上空に到達した。

 

 リオーリアの公爵邸の家令の情報に従って、王都の公爵邸を探すと、特徴が合致する邸宅が見つかった。

 

 大きい事は大きいが、本邸ではないせいか、意外にもそこまで大きくなく、周りの貴族家の邸宅と大して違わなかった。

 

 

 ……これは一応、リオーリアの公爵邸の家令に感謝だな。情報無しでは分からなかったぞ

 

 

 ギルバートはそのまま公爵邸の周囲をぐるっと飛んで、見て回った。

 

 外観しか分からないが、特別な造りでは無さそうだった。

 

 評判通りならアドリアーノ公は執務などしないだろうから、リオーリアの公爵邸で見たような、遊戯部屋的な部屋に居ると思われる。

 

 その際、人質に成り得る女や子供もいるかもしれないが、ケルと事前に話し、そこはあえて無視すると申し合わせてある。

 

 人質を慮って、ギルバートが虜囚となったところでその人質が助かる保証など無いのだ。それに悪いが、ギルバートにとっての優先度がまるで違う。

 

 

 リオーリアの公爵邸を参考にすれば、公爵の私室の位置も大体分かる。突入経路も確認し、いよいよ突入の時が来た。

 

 

「よし、じゃあ、いくぞ!」


『おう!』



 ケルがギルバートの気合に合わせて、威勢のいい返事をくれる。

 

 ギルバートはニヤリと笑うと、一気に下降し、二階の窓をぶち破って公爵邸に突入した。

 

 

「きゃあああああああぁっ!?」


「曲者っ!?」


「隊長に報告!残りは賊を取り押さえろ!」


 

 

 王都の公爵邸は、リオーリアの公爵邸より使用人や警備兵の密度が高かった。

 

 豪華な装飾があちこちに施された廊下にはメイドや警備兵が歩いており、ギルバートは突入した瞬間、発見されてしまった。

 

 小隊長と思しき男が取り押さえろと叫んだにも拘らず、警備兵達は剣を抜いて思いっきり振り下ろして来る。

 

 ギルバートは瞬時に「結界」の魔法で、半球形の魔法の盾を、反射属性で成型する。

 

 斬りかかってきた警備兵が二人、剣を振り下ろした瞬間、反射され剣ごと後方に一回転した。

 

 魔法の盾を即座に解除すると、ギルバートは廊下を一気に飛行し、小隊長と思しき男に接近する。

 

 小隊長と思しき男は、抜き討ちの構えで待ち受けていたが、彼の抜き討ちの射程距離より「念動」の魔法の腕の有効範囲のほうが遥かに広い。

 

 元々、平均的成人男性の五歩~六歩分だったのが、最近、練度が上がったらしく、七歩~八歩まで届くようになってきた。

 

 当然、小隊長と思しき男が剣を抜くより速く、ギルバートが彼を魔法の腕で握り、屋敷の窓から放り投げた。

 

 彼は、「ああーーーーーーーっ!?」と叫びながら公爵邸の豪奢な庭に落ちていった。

 

 一瞬、動きを止められたギルバート達は、再度飛び始め、途中にいた警備兵を「念動」の魔法の腕で掴んで壁に叩きつけながらそれらしい部屋を探した。

 

 そしてそれはすぐに見つかった。明らかに他の部屋と違う、虚飾に満ち溢れた無駄に豪華な扉があったからだ。

 

 扉の前の警備兵ごと、扉をぶち抜くと、中は広々としており、リオーリアの公爵邸の豪華部屋のように寝所の機能や応接、遊戯の機能を備えたアドリアーノ公らしい部屋だった。

 

 部屋の中央には贅を尽くしたテーブルセットがあり、その豪奢なソファーには、恰幅の良い男が据わっていた。

 

 そしてその傍らには執事あるいは側近らしき男、少し離れた壁際には公爵の部下らしい痩せた男が立っていた。

 

 

「……何事だ?」



 意外にもアドリアーノ公らしき男は慌てるそぶりも見せなかった。

 

 執事あるいは側近らしき男が、アドリアーノ公らしき男を庇うように、恰幅の良い男の前に移動した。

 

 

「アドリアーノ公か?」


「……そうだとしたら、なんだと言うのだ、下郎」   


「話を……」



 ギルバートが「話をつけに来た」と言おうとした瞬間だった。

 

 

『結界!』


 脳内に鋭く、ケルの声が響いた。瞬間、ギルバートは考えることなく「結界」の魔法の盾を発動していた。

 

 次の瞬間、半球形の魔法の盾の外側に強烈な圧力が加わった。魔法の盾を維持するため、とんでもない量の魔力が一気に消耗する。

 

 

『これはっ!?まさか、魔法攻撃!?』

 

 

 

 そう、ギルバートが咄嗟に成型した「結界」の魔法の盾に加えられているのは、明らかに魔法攻撃による圧力だったのであった。



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本日、2話目。3話更新予定です。

楽しんでもらえると嬉しいです。


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次回予定「魔法使い」

読んでくれて、ありがとうございました♪

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