ギルバートの決意
9 ギルバートの決意
『主殿、確かにこの国では、魔法使いは上級貴族相当の待遇を受けることが出来る。それは間違いない』
「おぉ、そ、それじゃあ……!」
『だが、魔法使いとして公に認められる為には当然、国による証明と登録が要るのだ』
「そ、それは……」
それは、嫌かもしれない。とても希少で特別な力を持っている、なんてことは誰にも知られないほうが良いに決まっている。
知られてしまえば、様々なトラブルが次々と寄ってくるだろう。それは想像に難くない。
『登録するという事は、誰でもその情報に触れられるという事だ。まあ、誰でもは言い過ぎとしても、公になるということはそうしたことだな。当然、様々な横槍は入るだろうし、招かれざる客も来るだろう。例を挙げるなら、断りづらい、より上位の上級貴族からの縁談であるとか、だな』
何という事だ。絶望から希望ときて、また絶望に叩き落されてしまった。
……結局、オレはどうやってもエリーとは結婚できないと言う事か
『主殿よ、さすがに絶望するのが早すぎるぞ』
「え、だって……?」
『主殿は、今、あまり頭が働いておらぬ様子。簡単なことだ。登録する前、公に知られる前に対策すればよいだけのこと』
「対策」
『そう。対策だ。そして対策よりも大事なのは心構えだ。主殿よ。主殿がエリザベス嬢との婚姻の為にどこまでやれるか、それこそが重要なのだ。例えば、より上位の権力に対して退くか退かぬか。退かぬのであればどこまでも、相手が退くまで戦うことになろう。しかも、主殿の家とエリザベス殿の家をも巻き込むことになる』
「戦い……」
ギルバートは貴族の嫡子として、騎士を目指す者として、戦争が起これば当然、出征する覚悟はあるし、そのために子供のころから鍛えてはいる。
だが、ケルの言う「戦い」はギルバートが想像もしなかった類の「戦い」だった。
より上位の権力との戦いとは、どういうものか。コネや金を使って根回ししたり策謀を巡らせたり、そういう戦いだと、ギルバートは完全に手も足も出ない気がする。
ギルバートはやはり絶望に飲み込まれそうになった。
……でも、もしかしたらこれは神様がくれた最後のチャンスかもしれない
金はないが、コネと言うなら大魔法使いとのコネは誰も持っていない貴重なコネクションだし、もしギルバートが魔法を使えるようになるなら、それは現状、誰も使えない唯一無二の力だ。
もしかしたら今の自分の立場を、逆転させる事だって出来るかもしれない。
ギルバートの中で、希望の火が灯った瞬間、大魔法使いの声がした。
『……その覚悟があるなら、主殿が勝利をつかむため、某が共に戦おう』
ケルのその声は、不思議と、ギルバートの胸にまっすぐに届き、その言葉は力強く心に響いたのだった。
「……分かった。オレはエリーと結婚するために、どこまででも戦う。誰が相手であっても退かない」
決意は、一瞬で固まった。
「ケル、オレに魔法を教えてくれ」
『もちろんだ、主殿よ』
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本日、4話目、ラストです。明日からは毎日1~2話更新予定です。
楽しんでもらえると嬉しいです。ありがとうございました。
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次回予定「初めての魔法」
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