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 エリザベスは、出来る限り平静を装っていたが、心には期するものがあった。



 ……どれでもいいから、みんなの役に立つ魔法が欲しい!

 

 

 それは、エリザベスが今、一番欲しい物と言っても過言ではなかった。

 

「集塵」の魔法が使えた時、内心、世界が変わったと思えるほどの衝撃を受けた。喜びが溢れて止まらなかったほどだ。


 だが、「集塵」の魔法は便利で最高だが、冒険者として役に立つ魔法と言う感じではない。

 

 もちろん、野営をするなら、非常に役に立つだろうが、何処へ行くにもギルが飛んで連れて行ってくれるので、自分達に野営は必要ない。

 

 弓は多分、ギルより自分の方が上手いと思うが、魔法が強すぎてあまり出番はない。かと言って、接近戦や肉弾戦などエリザベスには不可能だ。


 結果、冒険中のエリザベスは、言ってしまえばただのお荷物だった。それは自分でも嫌と言う程感じていた。

 

 もちろん、ギルもケルもそんな風な態度は微塵も見せないし、きっとそんなことを考えてもいないと思う。

 

 だけど、それとこれとは違う、という話だ。



 ……どうか、お願いしますっ!

 

 

 エリザベスは神様に祈りながら、一つ一つ、魔法石に触れていく。

 

 そして、前回と同じように、どれ一つとして反応がなく、六つ触った時点で適正があった魔法石はゼロだった。

 

 

 ……あっという間にあと一つ

 

 

 エリザベスはゴクリと唾をのみ込み、残り一つの魔法石へと手を伸ばす。

 

 ギルも、心なしか冷静沈着なケルさえも固唾をのんでいるように感じる。

 

 そして、結果まで前回と同じだった。

 

 

「……これ、魔力、入ってるかも」

 

 

「おぉおおおおおおおおぉっ!?」


『っ!?』


 

 ギルは言うに及ばず、ケルも鳥型魔獣の口を大きく開き、目も見開いて、明らかに驚愕している表情をしていた。


 

 その、奇跡的に魔力が入った、つまり適正があった魔法石は、「水」の魔法石。

 

 

 ……お、落ち着いて

 

 ……まだ、適正だけだわ

 

 ……相性を確かめないと

 

 

 エリザベスは「集塵」の魔法で覚えた魔力制御で「水」の魔法石に魔力を注いでいく。

 

 すると、手のひらに魔力が集まるのを感じ、自然に手を掲げると手のひらの少し先から水が溢れ出し、水柱となった。

 

 慌てて魔法を止めたが、床が水浸しになってしまった。

 

「あーっ!?ご、ごめんなさいっ!」


 エリーは慌てて謝った。もちろん宿の人に謝らなければ意味はないのだが。

 

「あ、それは大丈夫」


 だが、ギルがそう言うと、水浸しの床に手をかざしてスッと手を移動させる。

 

 それは「集塵」の魔法を使う動きだった。そしてびしょびしょになっていた床から何かが剥がされ、ギルの手のひらの上で丸まっていた。

 

 床をみれば今まで濡れていたのがウソみたいに乾燥しており、以前より遥かに綺麗になっていた。

 

 ……ギルってば、ますますお掃除魔法が上達してるわ

 

 二人で顔を見合わせて、何となく笑いあっていると、ケルが復活した。

 

『……信じられん。本当に二人はどうなっておるのだ?』 


「確かに不思議だよな」


『ギルよ、不思議などと言う言葉では全く足りておらぬ。これが奇跡でなくて何だと言うのか……』


「いや、まあでも所詮、神ならぬ身だし、奇跡なんて、考えても結論なんか出ないよ、ケル。エリーも魔法が使えて良かったね、って事で良いんじゃないか?」


 ケルはまだまだ衝撃から抜けきれないようだったが、ギルはそんなケルに、らしくないほど非常に軽く言い放った。


 

『……成る程、その通りだな。ギルよ』


 

 ……意外にギルも達観してるわ

 

 

 

 時々、妙に達観しているギルにエリザベスは驚いたし、ケルもまた違う驚きの表情を浮かべているように見えたのだった。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「それじゃ、どれを誰が持つかだけど……」 

 

 皆が気を取り直したのを確認して、ギルバートが配分会議を続行していく。

 

 その時、意外にもエリーがビシッと手を挙げた。

 

「はいっ!わたしも持ちたいわ!」

 

 今まで魔法に関しては、一歩引いている印象だったエリーが、今日は強く意思表示してきた。

 

「そう?ならエリーは自動的に『集塵』と『水』だね」

 

「えっ?いいの?」

 

 自分で強く望んでいたエリーが、キョトンとして問い返してくる。

 

 

 ……うーん?どうしたんだろう?

 

 

 ギルバートはいつもと様子の違うエリーをまじまじ見たが、良く分からないのでとりあえず保留した。

 


「いや、いいでしょ?ダメな理由がないし」

 

「……でも、二人も使えるでしょ?」


 

 ……これは、遠慮してるのか?なんで?

 

 

 ギルバートは、エリーが何に遠慮しているのか、さっぱり分からなかった。

 

「使えるけど、エリーが使いたいならそれでいいと思うよ。みんなで獲ったんだし」


『うむ。某もそれでよい』


「……そう?ありがと」


 エリーは拍子抜けした顔でお礼を言った。

 

 

 ……まさか、オレ達が魔法石を惜しんで渡したがらないと思ってたのかな?それは、ちょっと寂しいぞ。オレってそんなにケチっぽいのか?

 

 ギルバートはちょっとエリーの反応が気にはなったが、藪蛇になるとマズいので、突っ込まないことにした。

 

「それじゃ、残りだけど」


『うむ』


「……ねえ。二人は全部使えるっぽいし、あと一つずつ同じの獲ったら良いんじゃない?」 

 

 

 

 残りの配分を決めようとした時、エリーが思い出したように、そんなことを言ったのであった。



************************************************

本日、2話目です。念のため


************************************************

次回予定「配分2」

読んでくれて、ありがとうございました♪

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