大魔法使いからの回答
8 大魔法使いからの回答
『もちろんだ、主殿』
思い切って呼び掛けると、魔法石から応えがあった。
今朝はまだケルの声を聴いていなかったが、やはり起きていたらしい。というか、魔法石は寝るのだろうか?
『もちろん、睡眠など不要だ、主殿よ。ちなみに某は魔法石ではない。魔法石に宿る魂……もっと言えば、魂そのものではなく魂の情報といったところか』
ケルからダイレクトに返答がくる。やはり完全に筒抜けのようだ。少しやりづらいが仕方がない。便利と言えば便利なのだ。少々の事には目を瞑ろう。
『うむ、魔法回路を繋いでしまったゆえに、このような仕儀となり面目ない。主殿の魂はまだ柔らかく、閉じる事を知らぬようだ』
「……ケル、恥ずかしいからいちいち指摘しないでくれ」
『失敬。某としたことがつい』
「いいから……で、相談なんだけど」
『左様、主殿に魔法適正が有るか否か?適正が有るとして婚姻を希望する相手の家のご当主に気に入られる事が可能か否か?さらに言えば意中のお嬢さんの心を捉えることが可能か否か?……つまりは恋のお悩みということだな』
……そうだけど……そうだけど!一言も二言も多いんだよ!アンタ!!
『おっと、重ね重ね、失敬をば』
……こいつ、結構、硬い感じだったくせに……はぁ……で、どうかな?
ギルバートはケルが明らかに自分を揶揄っているのを感じて、少々、気分を害したが、今は藁をもつかむ心境だったので先を促した。
『ふむ。主殿、では魔法適性が有ったとしよう。すると主殿は魔法使いと呼ばれることになる。さすればこの国では上級貴族扱いとなるので引く手あまたとなろう。当然、婚姻を希望する相手の家のご当主にも強力に存在感を示す事ができると、容易に請け合える。意中のお嬢さんに対しては……』
……ゴクリッ
変な所でケルが「溜める」ので、ギルバートは思わず喉を鳴らしてしまう。
『……思い切って、気持ちを伝えるしかないだろう』
ギルバートはがっくりとつんのめる。
思わず、固唾をのんで答えを待ってしまったが、帰ってきたのはごく当たり前の答えだった。
だが、そこはケルの言う通りだ。思い切って言うしかない。
もちろん、魔法が強力アピールになる娘もいるだろうが。
ちなみにエリーはどうだろう?「凄いね!」と言ってくれる気もするが……。
……いや、それは今考える事じゃない
ギルバートは乱れる思考をいったん止めた。
「ケル、その適正とか相性はどうすれば分かる?」
『左様、通常の魔法石であれば、接触して魔力を流してみれば瞬時にわかる。適正がなくば魔力は入らぬ。魔力が入っても相性が悪ければ魔法が形にならぬ』
「おぉ、そんな簡単に分かるのか!……ん?通常のってことは、じゃあ、この魔法石は通常じゃないのか?」
『いや、魔法石としては特異な点はない。かなり育っておって価値が高く、希少な上にもなお希少な魔法石ではあるがな。特異なのは某が憑いておることだ。通常あり得ないことだが、魔法石と主殿を某が魔力回路で媒介しておるのでこの魔法石に関して、適正というなら満点。相性は大いに良し、というところだな』
「なっ!?……つ、つまり、それって……!?」
『無論、この魔法石が蓄えた魔法であれば、主殿も使える』
……な、な、な、なんだってぇ~~~!!?
もちろん、全く期待しなかったとは言えない。ほんの僅かだが期待してはいた。だが本当に自分が魔法を使えるとは。
ギルバートにとって、その結果はまさに青天の霹靂と言っても過言ではなかった。
という事はギルバートは今、既に上級貴族相当なのだろうか。そんな簡単に?なんの努力もなく?
絶望しかなかった世界にいきなり希望の光が差し込んだかのようだった。
だが……。
『水を差すようで申し訳ないのだが、主殿、当然、問題もあるのだ』
「……えっ?」
やはり、何事もそう甘くはないのだった。
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本日、3話目。念のため。
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