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実験

62 実験






 エリザベスとしては、何だか二人だけで仲良くしているギルとケルに、ちょっと文句を言ってみただけのつもりだったのだが、ギルがまるで本当に浮気をしている人みたいに、アタフタと慌てだしたので可笑しくなってしまった。

 

 なので、ちょっとだけいじめっ子の気分になって、怒ったふりをしながら、ギルの慌てる様子を見て楽しんでしまった。

 

 ……だって、どう考えても冗談って分かるわよね?

 

 ……人間ですらない、オスの鳥型魔獣との間で、いったい何があるっていうのかしら……?

 

 そう考えると、ギルの慌てぶりが本当に可笑しくなってしまったのだ。

 

 ……半分はギルのせいだわ♪

 

 そんな風に思ったエリザベスは、あっという間に機嫌を直した。もともと、ほんのちょっと拗ねていただけだったのだ。

 

 ところが、慌てふためくギルが突然、とても魅力的な事を言い出した。

 

 なんと、エリザベスも魔法が使えるかどうか、試してみないか、というのだ!

 

 これにはエリザベスのちょっと拗ねて下がっていたテンションも、一瞬で爆上がりした。

 

 ギルと結婚して、常に生活と行動を共にするようになり、ギルの魔法を毎日間近で見るようになってからというもの、常々、カッコいいと思っていた。

 

 そしてそれだけに、魔法の話題になると何となく所在なく感じる事が、寂しくもあったのだった。

 

 

 ……わたしも魔法が使えたら、きっと魔法使いが二人になって凄い事になるわ♪

 

 ……あ、ケルもいるから三人ね♪

 

 浮かれたハイテンションで、きゃあきゃあ言いながら屋敷に戻ってきたエリザベスとギルは早速、寝室に入った。

 

 ギルが早速、身に着けていた帯状の装身具を外し、ベッドの上に魔法石を取り出して行く。

 

 そしてエリザベスの目の前に、合計六個の魔法石が並べられた。

 

 赤や黄色っぽい魔法石が多いが、紫っぽいのや黒いのもあった。

 

「……どれから試すのがいいかしら?」


 エリザベスはワクワクしながら聞いてみた。 

 

「エリー、一応言っとくけど、使える可能性はかなり低いから、ダメでもあまりガッカリしないように……」 


「分かってるわ。ホントに使えるなんて思ってないもの♪」


 ギルが心配そうな顔をしてそんな事を言うので、さっさと遮った。

 

 

 やっぱりギルは固い。結婚しても固い。

 

 別にエリザベスは、本当に魔法使いに成れるなんて思っていない。ただ、成れるかも?っていう一瞬のドキドキで十分楽しいし、夢も想像も膨らむのだ。

 

 でも、ギルのそういう固いところ、真面目な性格は良いところでもある。というか概ね良い性質なのだ。

 

 変に矯正して、本当に軽薄な浮気男にでもなったら、それこそ目も当てられない。

 

 以前なら、エリザベスはそんな風には思わなかった。「固い」事は「面白みがない」事につながっていた。

 

 だが、自分の夫となると、話は違って来るのだから不思議だ。

 

 ……固くて結構。真面目、大いに結構、だわ♪

 

 心の中でエリザベスは、まるで平民の肝っ玉母さんのように独り言ちた。

 

 

 

 

 ……夫……ふふふっ、わたしもギルの妻として成長してるんじゃないかしらっ♪

 

 

 

 ☆




 ギルバートは魔法石を並べながら、ドキドキ、というよりハラハラしていた。

 

 せっかくエリーの機嫌が直ったというのに、このお楽しみの結果は、やる前から大体分かっているのだ。きっとまたガッカリさせてしまうだろう。


「エリー、一応言っとくけど、使える可能性はかなり低いから、ダメでもあまりガッカリしないように……」 


「分かってるわ。ホントに使えるなんて思ってないもの♪」


 予防線を張ろうとしてみたが、エリーに先回りされてしまった。

 

 こうなればもう、一つずつ、試していくより他にない。

 

 

「……それじゃあ、まず魔力制御の感覚から確かめるからね」


 ギルバートはそう言って、エリーの手を取り、少しずつ魔力を流し込む。 

 

 

「……どう?魔力の流れと言うか、動きを感じる?」


「……うーん。良く、分からないわ?」


「そうか、どうしようか」

 

 ギルバートはちょっと考えて、次の案思いついた。面積をもっと増やしてみたらどうだろうか。

 

「……じゃあ、これならどう?」


 そういうと、ギルバートはエリーを抱き寄せ、少し多めに魔力を流し、「身体強化」の要領で全身を魔力で覆っていく。

 

「あっ!?くすぐったいわ♪ギルと触れてるとこがジワジワ来る♪温かい波がくるみたい……♪」


「じゃあ、エリーもその波を動かしてみて。出来ればオレのほうに向けて」


「こうかな?」


「んっ!」


「んむっ!?」


「んんぅ!?」


 最初はなかなか動かなかったエリーの魔力だったが、次第に少しずつ動きが出始め、ついには微弱だが明確な動きになってきた。


 やがてエリーから、弱いながらも魔力の波が送られてくる。どうやらエリーの魔力制御は大丈夫そうだ。

 

 むしろ、大丈夫じゃないのはギルバートのほうだった。

 

 抱きしめた身体から熱と魔力の波動を、耳元にエリーの声と吐息を感じ、ナチュラルにイチャついている事を自覚したギルバートは、急激に恥ずかしくなってすぐにエリーと身体を離した。

 

 ギルバートは耳まで赤くなったが、それに気づかず魔法石の準備に入った。

 

 エリーもそんなギルバートを見て、ちょっと赤面したが、悪戯っぽく笑っていた。

 

 

「そ、それじゃあ、「火」と「飛行」以外はそこまで危なくないから、まずこの二つを試してみよう」


 ギルバートは一度、両手で軽く自分の頬を叩いて集中すると、「飛行」の反魔法として使える「重力視」の魔法を握ってスタンバイし、エリーに「飛行」の魔法石を手渡した。 

 

 エリーもゴクリと喉を鳴らし、魔法石を受け取る。

 

「……じゃあ、魔力を流し込むイメージで」


「わかった……んっ!」


 エリーがギュッと目を瞑って、魔力を流し込もうとしていた。だが上手くいかないようだ。

 

「……えーと、ケル、これは……?」


『魔力が入って行かないのであれば、残念ながら、適正が不足しているようだな』


 今まで、ベッドの柱に留まって黙っていたケルに聞くと、そう判定してくれた。

 

 エリーはやはり残念そうな顔をすると、申し訳なさそうな顔をしているギルバートに「飛行」の魔法石を手渡す。

 

 

「ギル、そんなに気にしないで。次、お願い♪」 

 

「う、うん。じゃあ次は……」


 エリーの明るい声に促されて、ギルバートは次々と魔法石を渡していった。

 

 だが、当然というか、魔法石は全く反応しなかった。

 

 そして、まだ試していない魔法石は、あっという間に残り一つになった

 

「これが最後か」


 エリーはギルバートから魔法石を受け取ると、殆どあきらめ顔で魔力の注入を試みる。

 


「あっ!?」 


「えっ!?」


『おっ』


 

 突如、エリーの表情が驚きに変わった。

 

 

「……なんか、これ魔力が入る感覚が……」


 ギルバートは、まさか!?と思いながら、エリーの差し出した手元を見た。

 

 

 

 エリーが手を開くと、そこには不透明で黒っぽい色の魔法石があり、僅かに光を宿していたのだった。



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本日、1話目。3話更新予定です。

楽しんでもらえると嬉しいです。


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次回予定「古戦場跡デート?」

読んでくれて、ありがとうございました♪

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