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ダンジョン4

60 ダンジョン4






「……はぁ~、これがダンジョンなのね」


「なんというか、普通の洞窟だな」


『このダンジョンは生れてから然程、月日が経っておらんと言う話だしな』



 冒険者ギルド会館でギルバートが最初に声をかけた、髭モジャ短躯で筋肉質なダンジョンシーカーから情報を買い、ギルバートとエリーとケルは、初めてのダンジョンに潜っていた。

 

 無論、ケルにとっては初ダンジョンではなかったが。

 

 

「……これ、進んで大丈夫かな?崩れない?」 


 

 足元は岩肌でカッチリしていたが、壁や天井が土の層で、ギルバートは今にも崩れてきそうだと感じ、思わず弱音を吐いた。

 

『大丈夫だ。昔からダンジョンで崩落が起こった話は聞いた事がない。ダンジョンが生きていると言われる所以だ。ダンジョンが崩落するのは、死んだ時、つまりダンジョン核を失った時だけだ』 

 

 ケルはそう言ってハッキリと否定したが、だとすれば、今、自分たちはダンジョンの腹の中を進んでいる事になるのでは?と、やはり不気味に思うギルバートだった。

 

 その不気味さを助長するかのように、目の前の少し上の空間で松明が一本浮かび、ギルバート達の歩くスピードに合わせてふわふわと空中を進む。

 

 ケルが「念動」の魔法の腕で松明を掲げてくれているのだ。おかげでギルバートは両手を空けておくことが出来る。

 

 相変わらず、ケル様様だった。

 

 出来たばかりのダンジョンだと言う話だったが、中は意外に広かった。

 

 一本道だが、ギルバート達は一応、マッピングしながら進んで行く。

 

 マッピングは「やりたい」と言うので、今回はエリーが担当していた。

 

 一本道をまっすぐ歩きながら周りの壁や天井を見ていると、所々、ポツンポツンと小さな穴が開いていた。

 


「アレかな?」


『おそらくは。試してみると良い』


 ギルバートはエリーが指した穴に近づき、短剣の先を近づけてみる。

 

 すると中から「ぼぉおおおおっ!」と、小さい火柱が噴き出した。

 

「居た!」


「火蜥蜴だね」


『穴のサイズや火柱から見て、まだ幼体だろう。火蜥蜴は成体になる前から火を噴くからな。とは言え、このサイズではまだ不完全な魔法石しか持っていないだろう』

 

 姿は見えないが、穴の奥に火蜥蜴の幼体がいるようだ。早速、魔法石を、と思った瞬間、ケルが即座に制止した。

 

 どうやら魔法石の成長度合は、ある程度、本体である魔獣の成長度合いと比例しているようだ。

 

 火蜥蜴は、ギルバート達が穴から離れても、穴から這い出して来たり、襲って来たりはしなかった。

 

 彼らも、自分達が襲う獲物のサイズを選別するのだろう。

 

 

「……このダンジョン、何にも生き物がいないけど、火蜥蜴は何を食べてるんだろうね?」

 

 エリーが火柱を見ながら首を傾げる。

 

 言われてみれば確かに、辺りには餌になりそうな生き物は見当たらない。穴の中なら虫か何かいるんだろうか?

 

『エリーよ。ダンジョンにいる魔獣は、基本、魔力だけでも生きられるのだ。濃い魔力が満ちているのでな。捕食する機会があるとすれば、迷い込んだ生き物を食べたり、共食いしたり、と言ったところだろう』 

 

 ケルの解説を聞いて、エリーが「うげー」という表情になった。

 

 ギルバートも同じ心境だ。要するに、餌は魔力か冒険者か、自分達と同種の火蜥蜴と言う事だ。

 

『二人とも、そんな顔をするな。それが魔獣と言うものだ』 


 なるほど、そういうものか、とギルバートは一応受け入れた。

 

 ギルバートは「共食い」と言う言葉に一瞬、拒否感を覚えてしまった。


 だが、ギルバートだって生活のために魔獣をたくさん狩っているし、食べている。共食いだけが悪いわけじゃない。考えてみれば今更の話だった。


 

 そこからギルバート達は、いちいち火蜥蜴の穴を突いたりせず、ダンジョンの奥を目指して進んだ。

 

 暫くすると、大きな空間に出た。

 

 結局ここまで完全に一本道だったので、エリーのマッピングはただの一本線になっていたが、ようやく直線以外の形が記入された。

 

 予備の松明に火を移し、ギルバートとエリーも一本ずつ持ち、ケルはもう一本増やして二本持って周囲を照らす。

 

 空間の広さはそこまでではなかったが、今までは小さな穴ばかりが開いていた壁の、やや天井寄りの位置に、一つだけ大きい穴が開いているのが見えた。

 

 穴の大きさは、人間の大人でも四つん這いで入れるほどもあった。

 

 こんなに大きな穴を空けるなら、力もかなり強そうだ。ギルバートはグッと気持ちを引き締める。

 

『……あのサイズの穴であればそこそこ大物だ。あれなら十分なサイズの魔法石を持っているだろう』

 

 ギルバートは頷き、「結界」の魔法石に魔力を込める。

 

 すると穴を完全に覆うサイズの半球状の魔法の盾が現れ、件の穴を塞いだ。イメージは「反射」。

 

 それから、ゆっくりと壁に歩いて近づき、ギルバートが少し浮き上がって天井寄りの位置にある大きい穴に、刀身の半ばまで短剣を刺し入れる。

 

 すると穴の中から凄い勢いで火柱が噴き出したが、魔法の盾で反射され、噴き戻された炎が穴の中に充満していった。

 

 

 やがて火柱が消え、炎が薄れていくと件の穴の中が見えるようになってきた。壁も天井も地面も真っ黒に焦げつき、煙が立ち込めている。

 

 そしてその穴の一番奥に黒い塊が見えた。

 

 ギルバートがケルを呼ぶと、ケルがギルバートの肩にとまって件の穴を覗き込んだ。

 

 そして、「念動」の魔法を発動すると、黒い塊を引き寄せる。

 

 穴から引き出したその塊は、先ほど見た小さな火蜥蜴よりもかなりサイズが大きい。一見したところでは人間の平均的成人男性が寝転がったのと同程度以上はありそうだった。

 

 とは言え、サイズ以外は入口付近でみたのと同じ火蜥蜴の、焼け焦げた死体だ。

 

 

「……火蜥蜴なのに、火で焼けるんだ」



 エリーがボソッと、ギルバートが考えていたのと同じことを呟いた。 

 

 そう。ギルバートもまさか火の魔法を使う火蜥蜴が、火でダメージを受けるとは思わなかったのだ。

 

『火で焼けないのは「火そのもの」だけだ。そして、魔法で生み出す炎は霊系統の魔物に痛手を与える事も可能だ』 

 

 そして、ケルの言葉でハッとした。

 

 

 

 そう言えば、その為に来たんだった、と。

 


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本日、5話目です。念のため


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次回予定「ダンジョン5」

読んでくれて、ありがとうございました♪

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